日本人の2人に1人がなると言われているがん。
毎年、約5万6000人の親が、子育ての最中にがんと宣告されていると推定されています。
子供とどう向き合うのか悩む人たち…それを支える取り組みが広がっています。小さな子どもを育てながら、がんと闘っている人たちについて取材しました。
親が「がん患者」の子供たちに向けた講習会
【スタッフ】
「この人形に点滴しよう」
【男の子】
「点滴って何?」
【スタッフ】
「点滴ちゃんと入れてあげてください」
人形に点滴を打つ子どもたち。
指導しているのは、実際に病院で働いているスタッフです。
はじめて触る器具に真剣な表情…。実は彼らにはある共通点があります。
それは親が「がん患者」だということです。
【スタッフ】
「お母さんとかお父さんがしんどそうにしているの分かる?」
【男の子】
「みたことある」
【スタッフ】
「お母さんどんな風にしんどそうにしてた?」
【男の子】
「ソファでしんどそうな顔していた」
大阪市の淀川キリスト教病院がそんな子供たちにがんについて正しく知ってもらうためのプログラムを4日間にわたって開きました。
【医師】
「薬のせいで吐き気がする気持ち悪い時がある。太ってしまうことがあったり、やせてしまうこともある。それから脱毛って言って髪の毛が抜けちゃうときもある」
医師が、がんとはどんな病気なのか、治療中にはどんな症状が出るのか、丁寧に教えていきます。
「闘病・育児・仕事」を同時に抱えるがん患者も
【1児の母(40代)】
「親ががんにかかるということで、この子にも不安を与えているでしょうし、親に言えないこともあるし、対処法というか正しい知識をもっていることで、この子の将来の助けになってくれればなと思って」
――Q:病気を聞いてどう思った?
【息子(8)】
「大変だなって思う」
10歳と8歳の2人の子供を育てる41歳の女性。
2年前に胃がんだと告げられました。
【胃がんと闘病する女性(41)】
「信じられない感じでしたね、自分が…という感じ子供のことを考えるとこの先どうしようかなて不安だらけだったんですけど、前向きにやっていこうと。こどもと夫と一緒に日常生活を大事にしたいなって思いました」
――Q:がんって聞いてビックリしなかった?
【女性の長女(10)】
「びっくりするよりガンって何?みたいな 」
国立がん研究センターによると、毎年18歳未満のこどもを持つ親の約5万6000人が、がんと宣告されていると推定され、こどもの平均年齢は「11.2歳」。
そのため、闘病・育児・仕事と同時に抱える人もいます。
【主治医】
「こないだおなか痛くてこられたんですか?どうですかそれからは?」
【胃がんと闘病する女性(41)】
「薬だしてもらってからは落ち着きました」
抗がん剤治療を続ける女性。
痛みがひどく 隠し切れない時もあるため、子供たちにもがんだということを告げました。
【胃がんを患う女性(41)】
「ママはこういう持病というか、こういう感じだからって思ってくれたらいいかなって思っていて。子どもたちは子どもたちの世界を大事にしてほしいので、ママがこんなんだからとか思わずやりたいことをやってほしいと思う」
子供に伝えたうえで、これからどうすべきか考える人がいる一方、子供に告知すべきどうかを悩む人も多くいます。
患者の約3割が「子供に告知せず」…親の思い
この日大阪市中央区で開かれたのは、こどもがいるがん患者たちの交流会。
一般社団法人「キャンサーペアレンツ」が、患者たちの支えになればと全国各地で行っています。
【乳がんを患う4児の母(30代)】
「ママが病気になったら子どもたちも、結構ドラマとかの世界だと感動的な場面とかあるのかなって思うけど、現実は全然そうではなくて、しっちゃかめっちゃか。現実どうしようみたいな、入院中どうしようみたいな」
話に上がるのは、やはり子供のこと。
それぞれの悩みなどを紙に書いていきます。
キャンサーペアレンツなどが調査したところ、子供がいるがん患者の約3割が子供に「がん」だと告知していないということです。
【乳がんを患う4児の母(30代)】
「これだよっていうのはいっていない。旦那がそれは言わないでほしいと。どっちかというと悪いイメージしかないから名前だけがひっかかるって旦那がいうので。長男はがんじゃないかっていうのは思っているけど、なにかとはわかっていないし私もきかれたら違うよって。ただずっとこのままでいいのかとかすごい悩むんですよね」
【原発不明がんを患う2児の母】
「子供は小学1年生だったんですけど、「お母さんはガンで死ぬかもしれないから、だからお母さんが教えたいこと全部叩き込むからって」って言って。ただ元気なのであまり信じていない」
気持ちを打ち明けられる存在が「支え」に
淀川キリスト教病院で開かれたプログラムの最終日。
こどもたちが、今思っていることを手紙に書き記しました。
【胃がんを患う女性の長女(10)】
「大切なお母さんへ、お母さんのがんが治ったらいいなって思います。時々私はおかあさんのガンが心配です。一つ知ってもらいたいことはありがとうです。お母さんのガンが100%治りますように」
【胃がんを患う女性(41)】
「子どもの表情も帰ってきたら生き生きしていたし、すごい次の会を楽しみにしているのも伝わってくるし、なんてない日常や子どものこととかいえるのがすごく自分自身にも良くて本当に楽しい会で、私にとってもこどもにとってもすごく参加させてもらってよかった」
誰が発症してもおかしくない「がん」。
向き合って生きていくために、ふと気持ちを打ち明けられる存在が、支えになっています。