平成が終わり、令和となった2019年。
新たな時代に花を添える話題の商品やサービスが次々と誕生しましたが…今年、関西でも異例のヒット商品があったこと、みなさんはご存知でしょうか?
滋賀のイチゴ農家が生んだヒット商品
のどかな風景が広がる滋賀県で最も小さな町・豊郷町。町の観光案内所でさっそく発見しました。
【薄田ジュリアキャスター】
「観光案内所のカウンターの目の前に並んでいました。これがいちごバター」
今年3月の発売以来、異例の勢いで売れに売れているという、このイチゴバター。
【豊郷町観光協会 勝間知世さん】
「購入するために京都から来られる方とかいらっしゃるし、私が聞いた話だと東京の方が頼まれて買いに来たとか」
「豊郷の特産品で顔みたいな感じです」
地元でも評判のようで…
【地元の女性】
「すごく有名ですよ、おいしいです。やめられないです、ハマってしまいます」
【地元の親子】
「おいしいって聞いて、一回買ってみました」
「パンに塗って食べたな?」
「食べた おいしかった」
というわけでイチゴバターの生みの親のもとへ。町内で市川農場を経営する市川健治さん(44)です。
【薄田キャスター】
「見た目もきれいですね。おいしそう!香りも、バターの濃厚な香りもしっかりあって、すごくなめらか」
「いただきます。あぁぁ~、おいしい!。いちごの甘酸っぱさとバターがすごくクリーミー、贅沢なのがよく分かる」
栽培しているブランドいちご「章姫(あきひめ)」をジャム状にして、北海道産のバターと混ぜ合わせたという、こだわりのイチゴバター。
しかし、その値段はお世辞にも安いとは言えませんが…
【市川農場 市川健治さん】
「うちのはイチゴもバターも同じ配合比率で入っているんですよ5対5で」
「イチゴを作っている農家なのでイチゴたっぷり、それにあわせてバターもたっぷり」
味に自信アリ あえて高値で勝負
味には自信アリの市川さん。原価も高い分、あえて高値で勝負に挑みました。
【市川さん】
「味は絶対いけると思っていたので、それだけバターを使っているものは他にない」
「ストレートにおいしいものをお客様に投げかけようと思ったので
原価を落とすことは全然考えなかったですね」
とはいえ、「不安はあった」と話す市川さん。
販売当初は1カ月で400個が目標でしたが、「高くても贅沢さを味わってほしい」という戦略が受けて、予想を超える2000個が売れたそうです。
いまも道の駅や近隣のスーパーなどで販売していますがすぐに売り切れてしまうそうです。
――Q売り上げは?
【市川さん】
「3400万円くらいはなんとか。一番結果が出なかった時に比べれば倍くらい」
市川さんは8年前に脱サラして農家に転身。イチゴ栽培は一年を通して安定した収入を得にくいため、加工品の開発が必要だったそうです。
――Qなんでまたいちごバターを?
【市川さん】
「2年前に(家族で)イチゴのバイキングに行ったんですが、その時たまたま娘がトーストにバターとイチゴジャムを塗っていたのを見て、これって商品にしたらおもしろいんじゃないかと思ったのがきっかけ」
そして、今年10月からはアメリカ・ニューヨークでも販売を開始。発売から半年あまりで海外進出まで果たしました。
さらに、1月からは豊郷町のふるさと納税の返礼品に仲間入りするそうです。
【豊郷町 伊藤定勉町長】
「やっぱり田舎の味、生産したとこのいいものを返礼品として喜んでもらえるというのは一番、これがふるさと納税だと思いますし、豊郷の魅力が発信できるのと、一石二鳥で豊郷が潤いますし、さらに豊郷がよくなると思いますね」
――Q今後どのようにしたい?
【市川さん】
「人を雇用して面積を拡大して、滋賀県で一番小さい町、豊郷町が全国にアピールできるきっかけになるので雇用が発生すれば。そういうふうに経営者として今後励んでいきたい」
和歌山“幻の果実”のバブルに沸く村
関西生まれのことしの大ヒット商品はまだまだあります。
やってきたのは、人口約450人、高い山々と清流に囲まれた和歌山県北山村です。
【薄田キャスター】
「じゃばらにまつわる商品がたくさんありますね。北山村はこのじゃばらを使った商品が大ヒットしているんです!」
北山村の特産品は11月から12月にかけて収穫の時期を迎える、かんきつ類「じゃばら」。この北山村でしか獲れない“幻の果実”なんです。
――Qじゃばらでの売り上げは?
【北山村役場 地域事業課 池上輝幸課長補佐】
「平成30年度で3憶4千万円程度。今年度は令和元年度は4億円の見込みになっています。ここまで商品が足りないというのは過去にはない」
村直営の事業として、じゃばらを使った商品が現在28種類開発され、村のお店やネットなどで販売されています。
売り上げは、ここ数年の間に急上昇していて、今年度、ついに過去最高の4億円となる見込みです。
村内の加工場はまさに最盛期!
搾りたてのじゃばらの味は…
【薄田キャスター】
「あ~、レモンとゆず・すだち・色々混ぜたような。飲み切るのはつらいかも…」
あまりの酸っぱさに「邪気を払う」との言い伝えから「じゃばら」と名づけられたそう。
実は約30年前から村の特産品として売られていましたが、長年、数百万円の赤字続きで「お荷物産業」と呼ばれた不遇の時代があったんです。
そんなじゃばらが大ヒットするきっかけとなったのが…
【北山村役場 地域事業課 池上輝之課長補佐】
「じゃばらの特徴としては「ナリルチン」という成分があるんですけど、これがアレルギーとか花粉にいいのではないかと言われているものなんですが、ナリルチンはじゃばらが突出して多いですね」
他のかんきつ類と比べて群を抜いて「ナリルチン」が多く含まれるじゃばら。
岐阜大学の臨床実験で、くしゃみや鼻づまりなどの改善に一定の効果があることが分かり、「花粉症に効果があるのでは」と期待する人たちが、このじゃばらの商品を買い求めるようになったんです。
さらに、北山村が全国の人を対象にじゃばらと花粉症の関係をモニター調査したことで注目度がアップ。じゃばら事業は大成功しました。
【北山村役場 総務課 中田英博副主査】
「税収が7000万円。じゃばらの利益が5000万円。じゃばらがなかったと思ったらかなりぞっとします」
“じゃばらバブル”で村に恩恵
【薄田キャスター】
「じゃばらがヒットしたことで村にもいろんな還元がされていて、こちらの保育園では英会話の教室が開かれています」
ここは北山村、唯一の保育園。運営にはじゃばらの売り上げの一部が使われています。子育て支援も充実していて「子どもの医療費」、学校の「給食費」や「教材費」など、様々な費用が無料に!
制度に魅力を感じて、村に移住する人も増え、活気も生まれ始めています。
【岐阜県から移住した女性】
「住宅補助とかに惹かれて移住しました。2階建てで庭付き。家賃2万円で収まっています。ありがたいです」
【奈良県から移住した女性】
「子供も多いのでうちにしたら助かるなと思って、4人目がおなかにいるんですよ」
「給食無料やし、保育料もいらないし、うちにとってはありがたいばっかり」
来年からは、村100%出資の民営会社も設立されるということで、じゃばらにかかる期待はさらに高まっています。