ひとりの学生が立ち上がり、部員ゼロからの復活を遂げた神戸大学応援団。
今季、快進撃を続けるアメフト部が日本一を目指し挑む相手は強豪、関西学院大学。
初めての大舞台で応援団が奮闘します!
復活した神戸大学応援団 大舞台へ
11月24日 午前8時半
『ちわ!』
きびきびした短いあいさつで、下回生が団長を迎えます。
まだ観客も選手もいないスタジアム、そこに応援団の姿はありました。
誰もいない客席に、一枚づつ赤い紙を置いていきます。
【宮脇健也団長】
「これを真ん中から中心にやっていく。観客はアメフトやから上のほうから座りたいと思うけど、とにかく前から左右に」
【下回生】「押忍!」
宮脇団長、試合を盛り上げようと、ある秘策を準備していました。
【宮脇健也団長】
「『赤の壁』を作ろうと、チームカラーが赤で、観客全員に掲げるんですけど、それを座席に早めに来てぺたぺた張っている。神戸大学は全日本選手権初めてなので、特に気合入れていこうと初めての試みです」
5000枚がスタンドを真っ赤に染めました。
【宮脇健也団長】
「座席に赤い紙がございます。それを頭上にかかげて応援して頂きますよう、よろしくお願いします」
宮脇健也 第59代団長。
部員がゼロとなり、消滅していた神戸大学応援団を去年、たったひとりで復活させた男です。
アメフトの応援には『特別な思い』があります。
【宮脇健也団長】
「入学前にアメリカンフットボールの試合を見に行きまして、そこに何か違和感を覚えまして。向こうからエールがきているのにこっちは返せない。エールがない神戸大学は寂しいなって思いました。じゃあ自分がやるかっていうので応援団に入った」
甲子園ボウル出場へ向けた「大一番」
【宮脇健也団長】「フレ~」
スタジアムには両校のエールが響き渡りました
相手は関西学院大学。学生日本一を決める「甲子園ボウル」で29回優勝した強豪です。
今季、神戸大学「レイバンズ」は快進撃をみせ、トーナメント戦をあと2勝すれば「甲子園ボウル」に出場できます。国立大学としては異例のことです。
【宮脇健也団長】
「みなさん、いまからウェーブやります。ウェーブやって巻き返しましょう!」
観客に呼びかける宮脇団長。早朝から準備した5000枚の秘策、いよいよ登場です。
【宮脇健也団長】
「観客席が赤い壁ダ~ってやることで俺たちがついているんだって選手たちにも見せたい。関学に対しても少しばかりの威圧感も与えられたらと思っています」
【一回生】
「みなさん手拍子お願いします」
しかし、相手は格上の関西学院大学。
次々にタッチダウンを決められ、大量リードを許します。
客席に重い空気が流れはじめ、
観客たちの表情も重くなり始めたその時…
宮脇団長が、メガホンを手に、客席に呼びかけ始めました。
【宮脇健也団長】
「いよいよ今日は準決勝である!」
(観客:そうだ~)
【宮脇団長】
「関学といえばこの三日月のマークである!」
(観客:そうだ~)
【宮脇団長】
「ちなみにきょう、11月24日のお月様の形、知っているか?」
(観客:なんだ~)
【宮脇団長】
「こんな形である」
団長の手には、この日の上弦の月のように「ひっくり返された」関学のマークが…。
【宮脇団長】
「つまり今日は関学がひっくり返される日である!きょうは絶対に勝利つかみとろうではないか~!」
(観客:そうだ~)
宮脇団長からの呼びかけで、観客の皆さんにも、笑顔と応援のパワーが戻ったようです。
そして、迎えた最後の第四クォーター。応援の力は選手に届くのでしょうか?
(試合実況)
『26点差を追う神戸大学、第4クォーターに入っています。一矢報いることができるか、神戸大学レイバンズ。
さぁレシーバー4人が散って…一回左に出た、さぁターゲットを絞った、QBからロングパス~!
さぁどうだ!…通りました!タッチダウンか!…わずかにラインぎりぎり!』
【観客】
「いいぞいいぞ神戸!いいぞ神戸いいぞ神戸!」
土壇場のロングパスで一気にゴールライン手前まで進めたレイバンズ
(試合実況)
『さぁ最後は飛び込んで!タッチダウン!』
湧き上がる、真っ赤に染まった神戸大学の応援スタンド。
この試合での、初の得点に観客から大きな歓声が上がります.
しかし…力及ばず、試合終了。
それでも最後の第4クォーターに見せた反撃は、観客に感動を与えていました。
団長が次代につなげる思い
【アメフト部】
「たくさんのご声援ありがとうございました」
声援を感謝する選手たちに、客席から大きな拍手が送られていました。
【宮脇健也団長】
「ありがとうございました。メガホン回収させていただきます」
応援のメガホンを改修する宮脇団長。
そこへ次々に観客から、ねぎらいの言葉が寄せられます。
【観客】
「ありがとうございました」
「復活させてくれてありがとう」
応援団の存在の心強さ、観客の皆さんも感じていたようです。
応援団にとっても大一番だったこの日、団長の胸にはある思いが混み上がっていました。
【宮脇健也団長】
「ひとつの集大成だった、きょうの試合。応援歌振っていて、観客席みんなが振っているのをみて、今まで俺は見たことない景色やった。感動はした」
【宮脇健也団長】
「でもやっぱり俺ら応援団やねんから、勝たせないと意味ないわけやし。どうやったらできるかは全員真剣に考えていってほしい」
【一年生】「押忍」
たった一人で応援団を復活させた、神戸大学応援団・宮脇団長。
この一つの試合を機に、今、想いは次代へと託されようとしていました。