【薄田キャスター】
「スピーディーに届きました。こちらが11月リニューアルされてさらにおいしくなった熟成まぐろです」
回転すしチェーン「くら寿司」で年間7000万皿売れる、人気ナンバー1の「熟成まぐろ」。新鮮なマグロをあえて寝かせることで旨味を引き出したメニューです。
今回のリニューアルでさらにおいしくなったわけとは…
【くら寿司 広報部 小山祐一郎さん】
「熟成加工は非常に繊細な作業を伴いますので、どの熟成時間がベストなのかっていうのは試行錯誤しながら36時間という時間を見出したわけですけど、科学的視点を初めて取り入れて、48時間が最適だということが判明した」
なんと、東京大学大学院と共同で、最もおいしくなる熟成時間を研究。鮮魚と比べ見た目はそれほど変わりませんが、うま味成分が4割アップしているといいます!
客「一番うまかった」
客「味が濃かったですね」
客「前よりも数段美味くなったと思います。(家族)全部含めたらマグロだけでも10皿くらい食べているね」
実は今、こうした「熟成魚」に注目が集まっていて、インターネットでの検索数はここ数年で急増、熟成魚を扱う外食店は、2年前に比べて「2.6倍」に!ブームの兆しを見せています!(※ホットペッパーグルメ調べ)
【薄田キャスター】
「いまじわじわと広がっている熟成魚。そもそもどういうものなんでしょうか?」
訪ねたのは、神戸にある「寿志 城助」。ミシュランガイドで8年連続、星を獲得している名店です。
――Q:なんの魚?
【寿志 城助 中山城助さん】
「ヒラメです。きょうで6日目です。」
こちらが食通もうならせる、熟成して6日目のヒラメのにぎり。さっそくいただきます!!
【薄田キャスター】
「これはたまらん!おいしい!! ネタの味がしっかりしている。最後シャリにうま味が溶け込んで収まっていく感じ」
【寿志 城助 中山城助さん】
「それが寿司です」
魚のネタ以上にシャリを大切にしているという城助さん。米の食感を邪魔しないネタを追求した結果、たどりついたのが熟成魚だったといいます。
――Q:熟成魚とは?
【寿志 城助 中山城助さん】
「鮮度がいいものに、塩をしたり、お酢につけたり、こぶに巻いたりして、それでうま味を出していく、魚にとって一番いい状態に持っていくこと」
熟成は、すし店では昔から使われていた技法。うろこや内臓など丁寧に取り除き、塩やお酢などで絞めて寝かせることで魚のうま味が凝縮し、身も柔らかくなるんです。
【寿志 城助 中山城助さん】
「これブリですけど、2週間ぐらい前のやつ。食べてもらう時は全部取って真ん中だけ」
――Q:(食べごろは)どうやって見分けるんですか?
「この12年間やってきた勘でやってますね」
「これすっごい前のマグロです。3週間くらい」
魚の種類や、大きさ、季節によって下処理や熟成期間も変え、食べ頃を見極めるのは、まさに職人の技です。
【薄田キャスター】
「おーーーー!うま味が口の熱でジュワっと溶けていきます。魚の臭みがない。アートです。」
これまでは、一流の店でしか味わえなかった熟成魚。それを、手ごろな値段で提供しようという店が出てきました。
大阪や神戸で3つの店舗を構える居酒屋「鯛之鯛」。店内は連日満席です。
【鯛之鯛 梅田店 店員】
「こちらの三種類熟成魚のお造りになってまして、ヒラメとサワラとクエです」
一番人気のメニューは3種類の熟成魚と鮮魚を食べ比べできる「お造りの盛り合わせ」1人前580円。店内のボードには、「原価割れ」の文字が!
【薄田キャスター】
「熟成されたカンパチいただきます。おー!しっとりねっとり。カンパチのうま味が濃い!」
――Q:(580円の)これはたくさん頼んでいいんですか?
【鯛之鯛 梅田店 湯浅太樹店長】
「やめてほしいです。ははは。こればっかり頼まれたら店つぶれちゃう。手間とかも考えたら、(値段は)1.5倍ぐらいで取りたいなというのはあるんですけど」
熟成魚は手間がかかるにもかかわらず、鮮魚と値段の差はありません。職人技の熟成魚をどうやって安くしているんでしょうか?
厨房にお邪魔すると…
【鯛之鯛 梅田店 湯浅太樹店長】
「熟成させて7日目のカンパチです」
――Q:保存方法は??
「保存方法は…言えないですね。はははは。ごめんなさい」
すし店などの技法を取り入れた店独自の熟成方法で経験豊富な職人が作っているということですが、安さの秘密は別にありました。
【鯛之鯛 梅田店 湯浅太樹店長】
「さっきさばいたカンパチのアラなんですけど、こういうとこって普段捨てちゃう部分。こういうところも炊いてしまって、全部ロスなく使ってます」
無駄をなくす商品開発で、熟成魚は赤字覚悟でもメニュー全体で売り上げを確保しているそうです。
客「好みでいったら熟成ですね」
客「熟成魚のほうが好きでした」
客「熟成って聞いただけで肉もそうですけど、おいしいと感じちゃう。熟成流行りじゃないですか」
お手頃価格を実現したことで、熟成魚を食べてみたいという人が続出。なぜこれほど消費者のニーズが高まっているのか。外食の専門家は…
【ホットペッパーグルメ外食総研 有木真理上席研究員】
「熟成魚は外食で楽しむもの。家で作るものと差別化をしていかないと外食って勝てなくなってきている。熟成肉が流行ったこともあって、魚業界も負けじとブームを作ってやろうみたいな、動きが業界としてあるかなと思います」
近年、家庭で食べる総菜や冷凍食品などが充実したことで外食に本格を求める人が増えていることも、要因のひとつになっているそうです。
こうした中、「熟成魚」の可能性をさらに広げる動きが…
世界初の技術で、家庭でも熟成魚が楽しめるようになるんです
【食縁 有路昌彦社長】
「本格的な熟成魚ですけど、取り扱いが簡単で、一般のご家庭でも解凍して使っていただいて食べて頂けます」
11月、魚の養殖で有名な近畿大学などが発表した熟成魚「鮮熟真鯛」。世界初の商品だということですが、その秘密はどこにあるのでしょうか?!
鮮熟真鯛を加工している近畿大学の関連会社「食縁」を訪ねると…
熟成するのは、毎朝、会社の目の前で水揚げした新鮮な養殖マダイ。工場では、検査機器で魚の温度を調べる人の姿が…
マダイのうまみはイノシン酸とグルタミン酸の濃度で決まるといいます。
1年間、繰り返し実験を行って2つの成分が最大になる熟成時間を特定。これまで職人の経験と勘に頼っていた熟成作業を科学の力で再現したのです。
うまみが最大になったところで瞬間冷凍。水道水で1時間解凍するだけで食べられるようにしました。
【食縁 有路昌彦社長】
「一般人が、本格的な熟成知らんでしょっていう人が、これを食べたときに本格的な熟成おれ知っているでっていう状態をどう作るか。それを科学的根拠で作っていますって言いきれる」
ホームページから購入可能で価格は2500円。今後、スーパーでも販売する予定だということです。
魚の美味しい食べ方として、いま注目を集めている熟成魚展開は今後もますます広がりそうです!