【薄田ジュリアキャスター】
「吹田市内の商業施設にお邪魔しています。毎週水曜日に賑わうという服屋さんがあるそうなんですが、あちらを見ていただいていいですか。平日の朝にもかかわらず開店前にあれだけのお客さんが店の前にいらっしゃっています」
若者からシニアまで幅広い世代の女性が集まる「カラーズ」というお店。
【薄田キャスター】
「午前10時です。開店すると同時に、店の前で待たれていたお客さんが結構ハイペースにいろんな服を手当たり次第に、バーゲン中の洋服店のようですね」
「オープンして10分も経ってないんですけど、どんどんお客さんが増えてきていますね」
人気の理由は何なのか、店内をよく見ると…。
【薄田キャスター】
「見て下さい、これ『100円』の表示。このラック全部100円なんですかね。すごい、これも100円、これも100円。これはビックリ!定価1万8000円以上のものがなんと100円。これは人が集まりますね」
商品棚には、目を疑うような値札がズラリ。
【薄田キャスター】
「ラベンダーカラーが素敵なシャツと白のスカート。シャツが800円、スカートが300円、合わせてなんと1100円で収まるんですよ」
――Q:この店にはよく来る?
【女性客】
「来ます。値段安くて全然他で買うのと違うんで、お得感が」
【女性客】
「水曜日いつも安くなるって。それで来ていますね水曜日に」
このお店、どうやら毎週水曜日が「値下げの日」。商品の値段はタグの色でランク付けされていて、売れ残ったものは毎週水曜日に1ランクずつ値下がりしていく仕組みのようです。
それにしても、気になるのが…
――Q:これだけ安くできるのは古着だから?【カラーズ吹田店 下前かおる店長】
「すべて新品となっています」
――Q:新品なのになぜ100円などで提供できる?
【下前店長】
「それは弊社が大手メーカーさんの在庫品、廃棄されてしまうと言われている洋服を大量に購入することによって安く提供できます」
【激安のヒミツはブランド品の余りモノ!?】
背景には、アパレル業界が抱える大きな問題がありました。
カラーズを経営するのは、大阪にある在庫処分会社「ショーイチ」。社長の山本昌一さんに倉庫を案内してもらいました。
【薄田キャスター】
「すごい段ボールがたくさんありますね。奥にもまだたくさん段ボールがありますよ」
「いろんなブランドから集められたものですか」
【ショーイチ 山本昌一社長】
「そうですね、ブランドさんから売っていただいた服がうちの倉庫にたくさんあります」
誰もが耳にしたことのある一流ブランドを含め、様々なメーカーから買い取った在庫品が毎日この倉庫に運び込まれます。
その数は、一日、約3万点。
――Q:素敵な女性用ニットですね?
【山本社長】
「生地もいいやつです」
――Q:これが捨てられそうになっていたもの?
「やっぱりタグがついているので、なかなか売れ残ったものをそこらへんに売るのは難しい」
アパレル業界のコンサルタント会社の調査によると、去年、国内市場に出回った衣料品約29億点のうち、なんと半分以上の15億点が売れ残っていて、新品のまま廃棄処分されることも少なくありません。
こうした「衣服ロス」が大きな問題となっているのです。
【薄田キャスター】
「ちょうど今メーカーの方との商談が始まりました」
【山本社長】
「全部で何枚くらい作ったんですか」
【アパレルメーカー】
「だいたい6000枚くらい。定番的に毎年そこそこ売れていたんですけど、量がこなしきれなかったですね」
トレンドの移り変わりが早く、気候にも左右されるため、在庫が残りやすいというアパレル業界。在庫品の買い取り額は、定価のわずか1割ほど。原価を大きく下回る値段ですが、それでもメーカー側の依頼は多いといいます。
――Q:これまでは捨ててしまっていた?
【アパレルメーカーの男性】
「同じ場所にずっとそのまま置いていたり、一部はそうですね、焼却ではないですけど捨てる感じになっていた」
――Q:衣服ロスの問題をどう考えている?
「量を作らないと安くならないんですよ。量を作って原価を下げて、始めに利益を取っておいて最終的に処分するための財源を作る」
――Q:この仕組みは仕方ないこと?
「全国のメーカーさんがたぶん、これは避けては通れないところだと思う」
ブランドイメージを気にするメーカーは多く、ほとんどの商品はタグを取り外すなどして販売。売り上げは年々増えていると言います。
【ショーイチ 山本昌一社長】
「捨てるのがもったいないなというところから始まったので会社の活動を評価してくださる方も増えたのですごく嬉しいし、服を一着作って捨てるということの資源の無駄というのはあるので、それがどんどん減っていけばいいなと思います」
このように、在庫品を正規のルートで買い集め、安く販売する業態は「オフプライスストア」と呼ばれ、いま、広がりを見せています。
10月、大阪・梅田で期間限定の店舗を構えたブランド「リネーム」もその一つ。
買い取った在庫品のタグを付け替えて、定価の3割から7割に値下げして販売しています。
最近では、売れ残った生地の活用も始めました。
【リネームを手掛けるFINE 津田一志取締役】
「製品になる前の生地の在庫は、ほとんどが廃棄処分されてしまうんですけれども服に仕上げた。アパレル業界の課題解決だとか、消費者の方の意識を少しでも変えていけるものにしたい」
一方、衣服ロスを出さないために、販売の方法を見直す企業も出てきています。
ここは、創業130年の老舗繊維メーカーが4年前に立ち上げた自社ブランドのお店。
実は店内の服はすべて売り物ではないんです。
その理由が…
【ビスコテックス・メイクユアブランド 大阪ヒルトンプラザ店 前田眞紀子店長】
「バーチャルフィッティングがこちらになります」
――Q:このモニターを使う?
「このモニターにお顔(の写真)を頂戴して、顔とワンピースを投影することで、いろんなデザイン、色柄をこの中で試着することができます」
【最先端技術で解決!?在庫をなくす秘策とは?】
実際の服に袖を通さずに商品が選べる、バーチャル試着。
【薄田キャスター】
「リアルですね。ほんとに着用して写真撮ったみたい。柄とか種類は何通りくらいですか」
【前田店長】
「店:色・柄、デザインを合わせると『47万通り』の中から選べます」
IT技術を駆使し、モニター上で選んだ柄や色、形などを自社の工場で忠実に作り上げます。注文を受けてから生産するため、当然、作り過ぎることはありません。
【「セーレン」スポーツ・ファッション衣料 土居健人部門長】
「余剰在庫や余ってしまったものを破棄されることがこれから許されない時代になってくると思う。一番大事なのは、一人一人の消費者の意識の中に環境を考えたブランドなのかそうでないのか、ブランドを選ぶときの選考の基準としてどんどん強くなってくるのではないか」
近年、衣料品のリユースやリサイクルに力を入れる企業も増えています。
「洋服の青山」や「ライトオン」などでは、要らなくなった衣料品を無料で回収したうえで、店舗で使える割引券を渡すサービスを始めています。
少しずつ変わり始めたアパレル業界。
衣服ロスを減らすため、消費者にもお得なビジネスは今後さらに広がるかもしれません。