福岡市内で行われた、ある合同就職セミナー。
学生たちに会社の魅力をアピールするこの女性。採用担当者と思いきや・・・
岡田菜々子さん「あ、私本人になります」
そう、彼女こそが業界でも珍しい貨物船の女性船員、岡田菜々子さん19歳です。
去年、高校を卒業後、兵庫県の船舶管理会社に入社。年間200日以上を海の上で過ごしています。
現在、岡田さんが担当するのが、全長73メートルの貨物船。
国内の航路をまわり、建築資材となる鉄鋼製品などを運搬しています。
貨物船に乗り始めてまだ半年の岡田さん。船内の片づけなど補助作業が中心です。
鉄鋼製品の緩衝材となる木材を船長以外の乗組員4人で片付けます。
1本およそ7キロ、岡田さんにとってはなかなかの重労働です。
片付けが終わったらすぐに出港の準備。新たな積み荷を乗せるため、次の港へ船を移動させなければいけません。
岡田さん「このレバーを前に倒すと、ロープが出るんです。こっちに巻くと、ロープは巻かれるんで」
先輩船員の指示に従いレバーを操作して、係船用のロープを巻き取ります。
操作を誤るとロープが切れることもあり、慎重さが求められます。
岡田さん「もうちょっとスムーズにできたかな?もっと鍛錬を積まないといけないですね」
鳥取県米子市出身の岡田さん。子供の頃から海が好きで「船員になりたい」と、
航海技術などを学べる鳥取県内の高校に進学。そこで知ったのが貨物船の存在でした。
岡田さん「船ってなに?って聞かれた時に、フェリーとか漁船とか自衛隊の船とか思い浮かぶと思うんですけど、
高校入学していろんな船を勉強するじゃないですか?あ、こういう船がいるんだ、っていうのに気づいて、
私たちが着ている衣服も食べてる食事も全て船が運んでくれるから、私たちの普通の生活が成り立ってると思うと、
貨物船てロマンがあるなぁと思って、貨物船に乗りたいなぁって次第に思うようになりました」
ディレクター「これなんですか?」
岡田さん「レットって言って、これにロープの先に係船ロープを繋げてるんですけど」
船員「結構難しいですよ」
係船ロープにつなげたレットを、岸壁にいる係員に投げ渡し、船を係留してもらうという、とても大事な作業です。
岡田さん「めちゃくちゃ怖いです、車にぶつけないか心配です。あと人にもぶつけないか?心配ですけど」
この岸壁は有名な釣りスポット。係員の周りには車と人の姿が…
岡田さん「怖いな車」「いけました、よかったです」
ディレクター「こちらにいらっしゃる方は?」
岡田さん「今年入社してくれた女性船員の方です。後輩になります」
就職セミナーで岡田さんに声をかけられて入社した二人目の女性船員・横田怜那(れな)さん18歳。
横田さん「女の子一人ってなると、やっぱり男性ばかりなんで話せないことってやっぱりあるじゃないですか?そんな時に心強いです、やっぱり。いてくれると」
7月に運航をはじめたばかりの新しい船には、これまでなかった女性用の個室や専用のシャワールーム、
洗面台などが新たに完備されています。岡田さんの存在が働く環境にも大きな変化をもたらしているようです。
この日、岡田さんの姿は兵庫県の姫路にありました。
新たな積荷を受け取るため、岡山県の倉敷まで7時間かけて瀬戸内を航海します。
岡田さん「カレーを作ろうかなと」
料理は船員が交代で担当し、作った人には1回300円が支給されるというシステム。
岡田さんは得意のカレーライスを作りました。
船員「あ、うまい、本当にうまい」
船長の勝瀬さんは今回、岡田さんに一つのミッションを与えることにしました。
岡田さん「めちゃめちゃ島があるじゃないですか。これ今日実際私がやるんですけど、舵をめちゃめちゃ切らないといけないと思うんで、(ルートが)カクカクしてるからそこもあれですね、初めてなんで怖いのもあるんですけど。まぁ楽しみです」
貨物船を操縦できる免許をまだ持っていない岡田さん。
しかし、航海士である船長の付き添いがあれば操縦できるため、今回はじめて、舵取りを任されたのです。
無数の小島が点在する瀬戸内海は航路が狭く、難所ともいわれています。
早く一人前の航海士になりたい岡田さんにとっては貴重な機会です。
船長「もういけるわ。(舵を)切っていけ」
舵を右に大きく切り、船はカーブ。船長のアドバイスもあり、なんとか通り抜けられましたが
今度はすぐに左へ曲がらなければなりません。
船長「行けるか?」「(左に)切れ切れ切れ」
前方の島と、船の動きを見ながら、微妙な舵さばきが要求されます。
操縦することおよそ30分、無事、難所を通り過ぎました。
船長「舵の切り方が切ったり戻したり、切ったり戻したりやな。ああいうところが慣れてない証拠やな」
岡田「ありがとうございます、ちょっと緊張した」
出港からおよそ7時間、予定通り倉敷に到着しました。
岡田さん「船の魅力といったら、私でも見た目がちょっとひ弱い感じがしますけど、やる気があれば誰でもできる職業だと思うんで
将来は船長目指して、地道にコツコツと頑張っていきたいと思います」
夢の女性船長へ。岡田さんの航海は、始まったばかりです。