6月28日から大阪で開催のG20サミット。
主要議題の一つとして話し合われるのが “海洋プラスチックゴミ問題”です。
便利で私たちの生活には欠かせない、このプラスチックが今、海の生き物の命を奪い、人体への影響するのではないかと懸念されています。解決方法はあるのでしょうか?
1年間で480万トン…“海洋プラごみ“
(砂浜を清掃活動中の女性たち)
「2、3歩、歩くと小さい発砲スチロールがでてくる。
「でてきますね。多いなあ…」
兵庫県明石市の海岸で行われた清掃イベント。ごみのほとんどは、私たちが日常的に使っているプラスチック製品です。日本のものがほとんどですが、中には海外のものも…。
【清掃活動に参加した人】
「プラスチックのごみがいっぱいあって、びっくりしました」
普段管理が行き届いている海岸でも、30分清掃をするだけでこの通りです。
ゴミに悩むのは日本だけではありません。プラスチックは人が処理しない限り無くならないため、今、世界中の海でごみが増え続けているのです。
こうしたプラスチックを餌と間違って食べたり、体を傷つけたり命を落とす海の生き物も後をたちません。国連環境計画によると、海に流出するプラスチックごみは、1年間で少なく見積もっても480万トン、ジャンボジェット約3万機分にも及びます。
破片になったプラスチックを…魚が食べる
さらに今、問題視されているのが…
【記者レポート】
「海岸に落ちているプラスチックゴミの中にはこのように劣化がすすんだものも多く、手で簡単に小さな破片になってしまいます」
水の表面に浮かぶ小さなプラスチックの破片。マイクロプラスチックと呼ばれています。
紫外線によって、もろくなったプラスチックが波にもまれて目に見えないほど細かい粒子になることがわかってきました。人体への影響は報告されていませんが、これを食べた魚などを介して、気付かないうちに私たちの体にプラスチックが入ることもあります。
【京都大学 地球環境学堂 田中周平 准教授】
「環境中の化学物質を吸着する効果がありまして、それらの中には毒性をもつような化学物質もありますので。(毒を)いっぱい吸着したマイクロプラスチックを魚とかに暴露すると影響が大きくでるというような論文が発表されています。どういう組み合わせでどういうふうに影響しているかは分からないことが多いので今それを調べているような段階です」
6月28日から大阪市内で開催の「G20サミット」。
各国首脳が集まるこの場所でも“海洋プラスチックごみを減らすにはどうしたらよいか”話し合われます。減らす方法はあるのでしょうか?
プラごみ削減へ…消費者の意識も変化
【記者レポート】
「大阪・北摂地域では、プラスチックこの1年間で、大きくプラスチックの使用量を減らすことにと成功しています。その取り組みがスーパーで行われています」
大阪・北摂地域の10市町ではスーパーと提携し、レジ袋の無料配布を去年6月から一斉にやめました。
高槻市ではマイバッグを持って買い物に来る人はおよそ4割でしたが、制度導入から1年経った今では8割の人がマイバックを使っています。
【スーパーを利用する主婦】
「いつも持ってます袋2枚、マイバック!
Q:どうして使おうと?
「(袋代の)5円がいりますもの」
【スーパーを利用する主婦】
「やっぱり環境のこと。みんなが考えないといけないと思うので」
【スーパーを利用する会社員の男性】
「普通にこうやって、たたんでいつも入れていますけど。家でさせられるので、ついでに自分の鞄の中に、仕事のかばんの中にも入れているだけです」
【フレンドマート高槻川添店 富岡浩二店長】
「当初始めたときの袋の販売数量はだいたい1か月で6万5千枚くらいの販売をしていましたが、現状ですと1ヶ月間で1万5千枚まで減少しております。1か月間で5万枚(の削減)ですね。それだけ消費者の方も関心を深められているんだと感じています」
“微生物“が分解する新素材プラスチック
プラスチックを使う量を減らす取り組みに加えて、注目されているのが新素材です。
【三菱ケミカル 新田茂輝 マネージャー】
「機能面は全く普通のプラスチックと変わらずにただけると思います」
スプーンやストロー、レジ袋など一見普通のプラスチック製品にみえますが、 実は石油ではなく、トウモロコシなどの植物からできています。
この素材でできたコップを土の中に入れた実験です。
少しずつなくなっていく様子が分かります。
“生分解性プラスチック”と呼ばれるこの素材は、土や海の中にいる微生物によって分解され数か月後にはすべて、無害な水と二酸化炭素に代わるのです。
新素材の課題は、従来のプラスチックより製造コストが高くなることです。
【三菱ケミカル 新田茂輝 マネージャー】
「1円未満でつくられているものが、我々の商品だと現在3円とか4円、数円レベルで値段は若干高いです。なかなか受け入れてもらえないケースもあったんですけど、そういったところが昨今、世の中の風潮や規制というものがありまして変わってきています」
実際に大阪市のホテルでは、環境に配慮し、この企業のストローを5月から導入しています。
【ホテルの利用者】
「この前に一回プラスチックストローじゃなくて、紙製のストローが出たことあったんですけど、それは正直口あたりがよくなくて、飲みにくいなと思ったんですけど。このストローはほとんどプラスチックと同じで違和感なくて非常にいいですね」
【新大阪ワシントンホテルプラザ 藤本博文 宴会支配人】
「まずそのもの自体をなくそうということで、ストローをなくして提供できないかと考え、実際やってみました。ストロー使わずに提供する。ただやはりお客様の声としては『ストロー下さい』という声が多かったので、ストローなくすというのは難しかった」
【新大阪ワシントンホテルプラザ 藤本博文 宴会支配人】
「コスト的には1.5倍くらいのコストがかかる形ですけれども、そちらは環境への取り組みの一環として認識しております。取り組みについては、お客様からも良いお声を頂いております」
プラスチックの普及で便利になった生活を簡単に手放すことが出来ない中、様々な対策が考えられています。
プラごみ排出量を「いかに減らすか」
【京都大学 地球環境学堂 田中周平 准教授】
「環境中にでてしまったものは取り戻すことは難しいので。どちらかというと今から排出していくのをいかに減らすかが大事になってきますよね」
生活を便利にしてくれるプラスチックが、生物の命を脅かす存在になっています。
プラスチックとどう旨く付き合っていくのか、今転換期を迎えています。