【泉佐野市「さのちょく」HPを見る薄田キャスター】
「あ~泉佐野市の返礼品、これは魅力的ですね」
「お肉の種類が多い。あーこれはおいしそう。特選ヘレステーキセット1キロ。でもやっぱりこれ原産地が鹿児島・宮崎・兵庫っていろんな地域から集めてますね。これ6月以降の新制度でどうなるんですかね?」
地場産品とはいえない豪華な返礼品に高すぎる返礼率。総務省に「NO」を突き付けられた、泉佐野市などを除外した「ふるさと納税」の新制度が、6月1日からスタートします。
新制度では返礼品が「寄付額の3割以下の地場産品」に限定され、「お得」や「ドカ盛り」といった過度な宣伝もNGにそのため、地場産品に乏しい自治体は、方針転換を余儀なくされます。
泉佐野市のお隣り、貝塚市は…
【大阪・貝塚市 都市政策部政策推進課・仮屋良太郎主査】
Q:泉佐野市に乗っかろうとは思わなかった?
「若干乗ってたところはあります」
Q:集めてる額が全然ちがいますもんね。
「そうですね。近い事業者さん同士わかっていることなので、僕ら以上に泉佐野市さんがモノがどんどん出て・・・」
この貝塚市も去年、過度な返礼品で総務省から名指しで注意され、ことし9月末までに姿勢を正さなければ、新制度から除外される可能性もあるのです。
【大阪・貝塚市 都市政策部政策推進課・仮屋良太郎主査】
「不安はありますけれども、ふるさと納税の趣旨に立ち返った形ですので地道に頑張っていこうと…」
一方、これまで地道に取り組んできた自治体からも…
【奈良・天理市 総務部財政課・吉田憲一主査】
Q:6月以降、不安はあります?
「不安しかないですねー(笑)」
(来月以降は)検討中ということで・・・
Q:結構迫ってません!?
「(笑)」
自治体側から不安の声も上がる中、気になる今後について、ふるさと納税」サイトの運営会社に聞いてみると…
【「ふるさとチョイスを運営」須永珠代社長】
「地元の人と行く、地元の人しか知らないツアーを計画している自治体があったり、そこで寄付をする方と地元の方との交流する体験型のお礼の品が増えてくると思います」
「品だけの競争ではなくて、まさに創意工夫がどういうふうにできるかというのが、今後の自治体側の腕の見せ所になっていくんじゃないか」
◆アイデア満載!生み出せ!地場産品◆
そこで向かったのが、大阪・河内長野市にある大阪最大の「滝畑ダム」です。
実は河内長野市では、地元の蔵元と大阪府と官民一体で、滝畑ダムの底に新酒が入ったビンを約半年間熟成させる取り組みを行っています。
まさにこの日がその引き上げの日でした。
水深約25mから引き上げた日本酒100本が、「ふるさと納税」限定の返礼品として贈られるんです。
【西條合資会社・西條陽三さん(55)】
「この中は7度ぐらいが年間通じて、同じような水温。
Q:お酒を熟成させるのにちょうどいい温度?
「7度はいいですよ」
Q:なぜダム底に?
「ここにダムがあるから。他の市町村はマネできない」
「これが地域資源なんですよ。そこを生かして、その場所を生かして、さらに地元でお酒を作っていく…」
一定の温度で水の流れに随時揺られるため、まろやかで深い味わいが楽しめるそうです。
創意工夫して新たな地場産品を作る自治体がある一方で、地元にもともとある施設を返礼品に生かす自治体も…
【薄田キャスター リポート】
「私はいま、兵庫県のほぼ中央に位置する多可町にきています。この後ろにある建物が多可町を放送エリアとするケーブルテレビ「たかテレビ」です」
「さぁこの奥が撮影スタジオになります。この場所から地域のニュースを発信しているんですねー」
実はこれが多可町の体験型返礼品。
「たかテレビのニュースキャスターになれる券」。しかも1年間です!
「3・2・1・キュー!」
【ニュース番組 原稿読み】
「みなさんこんにちは。多可町たかテレビのスタジオからお送りしています」
「最初の話題です」
「杉原谷小学校の4年生が授業の一環で石脇消防署多可北出張所を訪ねました」
気になるのは寄付の金額。いくらか聞いてみると…
【多可町商工観光課・笹倉敏弘課長補佐】
「はい。100万円の寄付をただければ、ニュースキャスターになれます」
Q:100??、100??って応募はありました?
「応募は今のところありません。ゼロです」
「ゼロ!?」
それなら意味ないのでは!?と思いきや…
【多可町商工観光課・笹倉敏弘課長補佐】
「これをきっかけに他の返礼品が多可町にはたくさんあります。特産品が。それをお選びいただいて…。」
Q:呼び水になったということ?
「そうですね。これがきっかけにということで…」
これまで多可町では、平年270万円ほどの寄付金しか集まりませんでした。
そこで、このニュースキャスターになれる券を5年前に返礼品に加えたところ、その翌年には1億円を突破し、昨年度の寄付金も約9000万円と倍増したんです!
さらに多可町ではこんなユニークな返礼品も!
【多可町商工観光課・笹倉敏弘課長補佐】
「ご当地ヒーロー・タカゴールドになれる券もあります。」
Q:ご当地ヒーローになれる!?
一方で、品物に頼らないふるさと納税もあります。
◆これが本来のふるさと納税の姿だ!◆
和歌山市の「不幸な命をなくす」プロジェクト。
飼い手がなく殺処分されるネコの数が、全国ワースト3位の和歌山県(2017年度)。そこで殺処分ゼロを目指そうと、和歌山市がふるさと納税を活用し、不妊去勢手術の設備費の寄付を去年5月から募ったところ、わずか半年で目標金額(1800万円)を大きく上回る約2800万円の寄付金が全国から集まったのです。
【和歌山市生活保健課動物保健班・廣岡貴之班長】
「集まった金額をみて、今後のほうがめっちゃ大変なことになっていく。寄付していただいた人の思いに応えられる使い道をきちっとしていかんと」
これは返礼品が一切ない、ガバメントクラウドファンディングと呼ばれるもので、自治体が抱える特有の問題に対して寄付を募るものです。
【ふるさとチョイス・須永社長】
「ふるさと納税の本来の趣旨は自治体を応援するという趣旨のものです」
Q:たしかに私たち納税する側もなにに使われるかわかるじゃないですか。
「本来、税金の使い道というのを私たち個人が直接的には選べないと思うんです。ふるさと納税はそれが直接えらべるというのもすごく特徴的だと思います」
6月からの新制度を直前に控え、寄付する側はどう考えているのでしょうか?
大阪市内在住で、ふるさと納税をフル活用するヘビーユーザー、主婦の松村さゆりさん。
(冷蔵庫を開けて)
「おぉ~いきなり出た!高級肉」
「壱岐牛…これは長崎ですね」
「これも宮崎県ですね」
自営業の夫の税金を控除する目的で、1万円から5万円までの寄付を行っている松村さん。食べ物を中心に日常で使うものを基準に、返礼品を選んでいて、中でもこだわっているのが、地場産品です。
Q:どういう思いで?
【松村さゆりさん】
「納税だから。田舎の風景を思い出したときに、台風が来て野菜がとれなかったとか。頑張って乗り越えて出荷してますとか、(寄付によって)その地域の産業が潤っていく、それがもともとやりたかったことなんだろうなと思うから…」
来月からの新制度スタートは、地場産品に知恵を絞る自治体だけでなく、私たち市民にとっても、ふるさと納税本来の趣旨を再認識する機会になりそうです。