1月の「特命報道ツイセキ」でもお伝えした、京都市の「救護施設」建設を巡る問題。
救護施設とは、生活保護を受給している人たちなどが社会復帰を目指して生活する施設なのですが、京都市が向日市との境界の部分に計画していることで向日市の住民が反発しているのです。
その溝を埋めようと、おととい改めて説明会が開かれたのですが、住民側がまた新たな不信感が生じる事態に。一体何が起きているのでしょうか。
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1月13日に行われた、説明会…その席で向日市の住民は訴えました。
【向日市住民】
「もう一回教えてほしいんですけどね、なぜあの場所なんでしょうか。適切ですか」
「非常に大きな不満と強く抗議をしたい」
いくら話し合いを重ねても埋まらなかった京都府向日市の住民と京都市や施設側との溝。問題となっているのは障害者や生活に困窮する人が社会復帰を目指して日常生活を送る京都市の「救護施設」建設計画です。
新幹線の線路のすぐ近くにある救護施設の建設予定地。地図で見ると住所は京都市伏見区ですが、向日市に突き出た形になっています。
周囲には向日市の住宅や学校があり、入居者の生活圏は向日市になるとみられますが…。
【社会福祉法人みなと寮 笹井信次事務局長】
「あえてそういう境界を認識して選んだわけじゃないんです」
着工が間際に迫った去年11月の終わりになって初めて説明会が開かれたことから住民側が不信感を抱きました。そこに追い打ちをかけたのが…。
=(去年11月23日の説明会の音声データより)=
【施設側の音声】
「例えば万引きとか、そんなことはたまにはあったんですけども…」
(紛糾する住民らの声)
【施設側の音声】
「人に危害を加えるとか、子供さんにいたずらをするとか、そういうことはないんです」
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救護施設の入所者には刑務所を出所しても身寄りがない人やホームレスも含まれます。具体的なトラブル防止策を求める住民側に対し、京都市と施設側があいまいな説明に終始したためほぼ決裂状態に。
このまま工事を進められるのではないかと危機感を抱いた住民グループがさらなる説明を求め、2月16日、改めて説明会が開かれたのですが…。「新たな事実」が発覚したことで、住民側が不信感を強めたのです。
=(今年2月16日の説明会の音声データより)=
【住民側の音声】
「入所者があの界隈を歩いて動くということに不安を持っている」
説明会の冒頭、住民側はまず、安全対策についての説明を求めました。
【施設側の音声】
「我々の言ったことをご理解いただけない方は入所の対象になりません。ただ一時的に精神科の病気の症状が悪化するとか、我々の言っていることが行動に反映できなくなる方がいるのも事実です。ご本人の権利を相対的に守るために外出の制限をすることはあります。反対側から見ると地域の方に対するリスクも少なくなる」
施設側がこれまでに比べて具体的な安全対策を示し、住民側も一定の理解を示します。
しかしその後、京都市の説明に、これまでと食い違う内容があったことで新たな不信感が…
京都市はこれまで施設側がこの土地を持っていると知ったのは去年3月、施設側が事業者の公募に応募した時だと説明していました。
しかし…
【京都市担当者の音声】
「平成27年10月にみなと寮から救護施設を整備できないかという提案がありました」
2月16日の説明会では一転、2015年に救護施設建設の提案を受けたと説明。土地についても翌年9月に施設側が購入した時点で把握していたというのです。
【住民側の音声】
「この話は今回初めて。なぜ今まで出て来ていなかった」
【住民側の音声】
「あなた方は平成28年9月に、みなと寮が今回の土地を取得しているのを知った上で救護施設建設の計画を立てた。その事実に間違いはないですね」
【京都市担当者の音声】
「その事実に間違いはございません」
【住民側の音声】
「その事実に間違いない中で出来レースではないとどうやって証明しますか」
【京都市担当者の音声】
「事業者の選定に関しては公募という手法を取っています」
【住民側の音声】
「私はきょうビックリしました。京都市の福祉行政はこんなにいい加減なんだって」
この説明会の直後、京都市担当者に取材をしたところ…
【京都市担当者】
「あくまでも民設民営で土地の候補地を挙げていただいた中で、応募いただくと。その中で我々の方としては土地も含めて法人も含めて選定をしていくということですので」
一方で、住民グループの代表は…
【住民グループ共同代表】
「元々土地の取得の経緯や、時間軸で考えた時に出来レースじゃないかと思っていて、我々が調べていないと説明すらしてくれないんだと思ったので、京都市に対する不信感は増しました」
救護施設は地域の住民とも理解しあって生活することで入所者の社会復帰を促す場所です。住民感情を置き去りにして良い結果が得られるのでしょうか。