東京を拠点に活動し、独演会をすれば即日完売。
「チケットの取れない講談師」の異名をとる、講談界の風雲児です。
【神田松之丞さん】
「私もけっこう目立つ立場にいるんですけど、本当に後ろにすばらしい先生方がいるので、来ていただくような…、
呼び屋って我々言ってるんですけど、”入口”になれればいいかなと」
1人で30分間しゃべり続ける長丁場。
「張り扇」で生み出される独特なリズムが、観客の心をひきつけます。
落語のように登場人物の会話劇で進むのではなく、
ストーリーの解説もはさむことで、情景が目に浮かびやすくなっています。
■満席の会場を…たった一人のしゃべりで引き込む、講談の魅力
講談は落語とともに、庶民に親しまれてきましたが、やや難解なストーリーが敬遠されがちでした。
しかし、松之丞さんの登場で、「明治以来100年ぶりの講談ブーム」が到来したのです。
【観客】
「活き活きとしゃべる姿とか、最初は集中できないかなと思うのに、
ぐっと引き込まれるところ、引き込ませてくれるところが本当に好きです」
【観客】
「間の取り方とか、緊迫したシーンでは、会場全体が静まり返るみたいな、
そういうのがすごいうまいなというか、ずっと最後まで聞きいっちゃったなと思いました」
【神田松之丞さん】
「昔の日本人は当たり前のように、清水次郎長とか、国定忠治とか、一心太助とか知っていたと思う、
それがどっかで今、知らないっていう、共通認識がなくなってしまったので、それをもう一度、
当たり前のように昔の物語を知ってるという状況がいいかなって思ってるし、そ
れは我々の仕事の役割で頑張らないといけない」
■関西でも「講談ブーム」を!女流講談師の奮闘
関西でも、約20人の講談師が活躍していますが、落語や漫才の陰に隠れ、人気はいまひとつ…。
そんな現状を変えようと奮闘する講談師が大阪にいます。
1月3日、大阪市此花区の一角に、講談の拠点となる劇場がオープンしました。
その名も「此花千鳥亭」
仕掛けたのは、五代目・旭堂小南陵さん(43)。
芸歴18年の上方女流講談師です。
【旭堂小南陵さん】
「パッと聞いただけでは、お経みたいで、何じゃこれと思ったんですよね、すごい舌まわるなと。
一言一句覚えるのも独特で面白いと思いまして」
もともとOLだった小南陵さんは、25歳の時、旭堂南陵さんに入門し、
40歳の時に五代目を襲名しました。
落語家の桂文枝さんに襲名あいさつに行くと、
「講談専用の小屋を作らなあかん」とアドバイスを受けました。
小南陵さんは、寄付を募って資金を集め、
慣れない工具を手に、空き店舗だったスペースを劇場に改装したのです。
【旭堂小南陵さん】
「名前継いだ段階で、何か役割あるなって。みなさん思いもありますし、立場もありますし、
いろんなことがある中で、私ができることってなんやろって、役割やなって思っちゃったんですよね」
【観客】
「こういうところができたっていうのは嬉しいなと思って、東京からはせ参じた次第です」
【観客】
「気軽にふらりと立ち寄れるっていうのが、うん、いいですね」
【講談師・旭堂南龍さん】
「一番講談の良さが出る空間じゃないですかね。距離感といい、この時間にあまり縛られない、
講談師の今一番自信のある講談が聞ける場所じゃないですかね」
千鳥亭では、1月はほぼ毎日公演が行われましたが、来月以降はまだまだ調整中。
幅広い人に出てもらえるよう、出演交渉するのも小南陵さんの仕事です。
【旭堂小南陵さん】
「松之丞さんってパンと世の中の方々に、そういえばそういう人見たよね、チケット取れないらしいよねっていう出方、
演出をしてくれてるっていうのは、ものすごいありがたいきっかけ」
「何かちょっとでもそれできっかけとなって見に来て下さった方であったり、講談やってみたいって思って下さった方であったりが、定着して、講談好き、講談面白いって思っていただける環境をちゃんと整えていなないといけない」
かつては話芸の元祖として落語と並び称されていた講談。
「此花千鳥亭」の完成をきっかけに、再び多くの人に愛され続けるものになることを願って、
小南陵さんはきょうも高座に上がり続けます。
※カンテレ「報道ランナー」 2019年1月30日放送より