【滋賀県東近江市・小椋正清市長】
「(フリースクールは)教育になってない。言い方悪いけど、遊んでいるみたいな…(発言の)撤回は…これはできません」
24日、関西テレビの取材に対し、こう答えたのは、滋賀県東近江市の小椋正清市長。自らがした発言が日本中から批判を受けています。
■フリースクールめぐる東近江市長の発言に“批判集中”
問題となったのは10月17日。滋賀県の知事や市長らが「小中学生の不登校」について話し合う会議でのことでした。
【滋賀県東近江市・小椋正清市長】
「フリースクールといって良かれと思ってやることが、国家の根幹を崩してしまうことになりかねないくらいの危機感を持っている」
国が、2023年3月に掲げたフリースクールなどを支援する取り組みを「国家の根幹を崩しかねない」と非難。さらに、この会議後には、「不登校になる大半の責任は親にある」と話しました。
フリースクールとは、「不登校になった子どもたちの学びの場所のひとつ」として、主に民間団体が運営する施設のことです。
24日の市議会でも市長の発言について、質問が集中しました。
【廣田耕康議員】
「頑張っている人に大きな打撃を与えた。真摯に謝ってもらいたい」
【東近江市・小椋正清市長】
「どれだけ私の至らぬ発言で傷つけることになったのか、しっかりと謝罪を申し上げたいという気持ちはしっかり持っております」
その一方で…
【東近江市・小椋正清市長】
「フリースクールがしっかりと義務教育を補完する機能を持って、義務教育の一環として役割を果たしているなと思ったら、私は喜んで支援しますよ。だから今のような形で制度設計がなされていない中で、それを支援するのはいささか問題がある」
■市長の発言…当事者たちの受け止めは
この一連の発言を当事者たちはどう受け止めたのでしょうか?
大阪・吹田市にある「フリースクールここ」には、学校に行けない小学生から高校生まで25人ほどが通っています。
学習の時間に、今回の問題について話し合いました。
【「フリースクールここ」スタッフ】
「当事者であるみんなが、これを聞いてどう思うのか?」
【子どもたち】
「親のことを否定してほしくない。すごい迷惑かけちゃったから、これ見て親が傷ついてたいらどうしようって感じ」
「俺らが見ているのも一部かもしれへんねんけど、『大半の責任は親』はまずい。それは本当に嫌や」
「フリースクールここ」に2人の子どもを預ける保護者は…
【保護者】
「もちろん憤りもありましたけど、何で?どうしてそういう考え方に今更なるんだろうっていうのは感じましたね」
15年にわたり、大阪でフリースクールを運営してきた三科さん。近年、その重要性が増してきていると感じています。
【「フリースクールここ」三科元明理事長】
「これだけ多くの子どもたちが、公教育に対して、学校に対して、何らかの違和感とか、どれだけ頑張っても行けないっていう状況があるにもかかわらず、学校だけでいいですっていう理由はないと思う」
10月に発表された、2022年度の不登校の小学生・中学生の数は29万9000人。10年連続で過去最多を更新し続けています。そして、学校にとってもフリースクールはなくてはならない存在になりつつあると話す現役の校長もいます。
【大阪市立加美南中学校・阪井千明校長】
「学校に来られてない子が、その子の成長のためには、必ず人とコミュニケーションをとる機会を設けなければいけないんで。学校の先生と学校と疎遠になっている子がどこに行くねんって言ったら、学校に来られない子にとって、フリースクールは救いの場所であってね」
■各自治体のフリースクール支援 考え方にばらつき
東近江市長の発言に端を発した今回の議論。根底には各自治体のフリースクールに対する支援や考え方のばらつきがあります。
問題発言があった会議の音声を改めて聞いてみると、フリースクールをどう扱うのか、それぞれの首長の迷いが見えてきました。
【守山市・森中高史市長】
「守山市としては、行政として、“見ないフリ”をしてきたというか。“(子どもは)学校に来るべきもの”なんだと。フリースクールに通っている方を正式に“位置づけ”してこなかった」
【彦根市・和田裕行市長】
「フリースクールに関しては、保護者に対して月額(上限)3万円。一方で、今すごく不登校が増えてきて…。極論になるかもしれないが、安易に不登校を招くような環境をつくってはいけない」
【米原市・平尾道雄市長】
「1人当たり4万円を上限にして、フリースクールの授業料補助をしている。従来は、私も『学校行って当たり前』の話だと正直と思っていました。しかし、それは変えていかなあかんなと言う局面に立っている」
フリースクールを自治体としてどういう位置づけにするのか、通わせる家庭に補助金を出すのか、出さないのか、考え方が分かれています。
■お金を払える人しか行けない現実
小学3年と中学1年の兄弟をフリースクールに通わせる松下泰子さん(49)。住んでいる東近江市から補助はありません。
【松下さんの息子(中1)】
「自分でよく時間割決めたり、フリースクールの方が自由にできるし楽しい」
【松下泰子さん】
「“(学校は)行かないといけない所だ”って、私は言った事ないけど、本人に後で聞いたらそう思っていたみたいで。なので『母ちゃん(学校に)付いてきて』って(頑張っていた)」
2015年時点の文部科学省の調査によると、フリースクールの授業料は、8年前でも全国平均・月額3万3000円と、公立学校に比べ決して安くはない費用となっています。
松下さんの周りには経済的な理由からフリースクールにも行けなくなり、結果、引きこもってしまう子どももいるそうです。
【松下泰子さん】
「お金を払える人しか行けないんです。それはもう子どもに何も関係ないですよね。学校に行けなくても他の場に行ける(はずが)、行きたいのに行けない、それは大人の社会の責任やと思いますね。(市長は)ごく少ない人数の『はみ出たもの』って言われたかもしれないですけど、1人であろうと子どもを取りこぼしたらだめだと思いますね」
■東近江市長 取材に応じる「言い方悪いけれど遊んでいる」
当事者を含め、様々な方面から批判を集めた今回の東近江市長の発言。24日の市議会後、共産党市会議員団が市長室を訪れ、抗議文を提出。そこではこんなやりとりが…
【滋賀県東近江市・小椋正清市長】
「えらい迷惑をかけて申し訳ない。ホンマそれはね…」
【共産党市議団】
「保護者やら子どもらがごっつ怒っている」
【滋賀県東近江市・小椋正清市長】
「そこへの視点ではなくて、制度のことばっかり思って言ってたんでね、これは指摘されてもしょうがないなと」
市長の発言の真意はどこにあったのか?市長が関西テレビの取材に応じました。
–Q:市長は学校とフリースクールの違いについて?
【滋賀県東近江市・小椋正清市長】
「実態といえば、あまり言葉が良くないんですけど、(フリースクールは)教育になってないんですよね。ただ単に行きたくない子どもたちの受け皿になって、言い方悪いけど遊んでいるみたいな要素が強い。そういう実態がある以上、果たして今の義務教育の枠組みで苦しんでいる子どもたちをしっかりと義務教育の一環として、補完する機能があるかといったら、ちょっと疑問を感じていて」
■「撤回は…できません」
小椋市長は、「フリースクールに対する国の制度設計がないまま、自治体が支援しろというのは間違っている。自分の発言で国に対し、一石を投じたかった」と釈明。
一方で「不登校になる大半の責任は親にある」という発言については…
【滋賀県東近江市・小椋正清市長】
「私の言葉足らずの発言によって、傷つけた部分があれば私は謝罪したい。思いは国の制度設計をもうちょっとちゃんとしてくださいねという意味で申し上げたわけで、発言したわけで、そのことを撤回は…これはできません」
発言の撤回を否定。
さらに…
【滋賀県東近江市・小椋正清市長】
「義務教育というのは親に普通教育を受けさせる義務があるわけですから、親・保護者しか子どもを学校に行かせるアクションを起こす立場に…親しかないわけです。そういう意味ではしっかりと義務教育を受けさせてくださいよ、ということの意味の裏返しとして、大半の責任は親にあると申し上げた」
東近江市長は、批判を浴びた発言の真意についてこう持論を語りました。
(関西テレビ「newsランナー」2023年10月24日)