喉をハサミで切られ愛犬死ぬ トリミング中の「過失」を裁判所が認定 元トリマーに約40万円支払い命じる 判決で「犬の購入時の金額を大幅に超える額は肯定できない」 飼い主は「ペットはモノじゃなくて家族なんです」と悔しさをにじませ 2023年09月13日
トリミングサロンに預けた飼い犬が死んだのは、施術中のけがが原因だとして飼い主らが起こした裁判で、9月12日、元トリマーに約40万円の支払いを命じる判決が出ました。犬たちをケアするはずの場所でおこった事故。家族同然の存在を失った飼い主は、判決への不満を口にしました。
■ 血だらけなのに…サロンは「ちょっとけがをさせた」と報告
ティファニーは8歳のトイプードルで、飼い主の家族は毎週のようにティファニーを連れて出かけたり、年に数回は旅行をしたりしました。
【飼い主】
「ティファニーはブロッコリーがめちゃくちゃ大好きで。いつもご飯食べる時に、そのテーブルの下でずっと待っていて。そこにブロッコリーあげるっていうのが8年間ずっと毎日のようにやっていて。子どもがいるんですけれども、子どもと全く同じような感じでしたね。可愛い子でした」
ティファニーは2カ月に1回のペースで兵庫県宝塚市のトリミングサロンに通っていました。
しかし3年前の事故があった日、担当トリマーから首にけがをしたと突然電話が来たのです。
【飼い主】
「『ちょっとけがをさせたので、隣の病院に連れて行って治療させてもいいですか』っていう電話連絡で。ちょっと切ったんだなぐらいのつもりで『じゃあお願いします』といった回答でした」
トリミングサロンの隣にあった動物病院にも、トリマーから「少しけがをさせた」という連絡がありました。
【治療を担当した獣医師】
「だいぶ混み合っていたので、大した傷じゃないと思ったんで、ちょっと後回しにしてくれるかという話をして、そこでいったん終わったんですけど。うちの看護師さんがちょっと様子を見に行ったら、血だらけのワンちゃんをティッシュで押さえながら、まだカットしていたという状況ですね。看護師さんがびっくりして、急いでワンちゃん抱えて病院に飛び込んできたという感じです」
すぐさま、出血を止めるための緊急手術が行われました。ティファニーの喉の傷は縦方向に約3センチ。食道を貫通するほどのものでした。
【治療を担当した獣医師】
「見たことがないような傷だった。首の骨まで到達している深い傷というのが、最終的に手術を進めていくうちに分かったという感じですね」
断裂した食道を縫い合わせる手術は3度行われました。しかし、けがから10日後、ティファニーは息を引き取りました。
元トリマーは飼い主らに対し、「顔の部分を上向きにカットしていたところ、ティファニーが急に伏せの姿勢を取り、首が傷ついた」という内容の説明をしていました。
裁判でもけがをさせたことは認めているものの、死んだのは獣医師の対応が悪かったからだと争う姿勢を見せてきました。
■ 喉にハサミは刺さるのか 別のトリマーに聞く
トリミング中に犬の喉にハサミが刺さることはあるのでしょうか。トリマー歴20年以上の田中さんは、ハサミを正しく使うことで、そのリスクを回避できると指摘します。
【ASLAN 田中充香さん】
「お顔を切る時は絶対アゴを持ちます。ワンちゃんを感じるというか、動く時もわかるし、動く前もわかるんですよね。左手でしっかり固定しながら、カットさせていただいています」
不可解なけがをしたあとに死んでしまったティファニー。飼い主の男性は元トリマーの施術に加えて、その後の対応にも不信感を抱いたと言います。
【飼い主】
「謝罪らしい謝罪はなくて。ラインで『すみません』ぐらいは(連絡が)飛んできましたけれど、こっちから連絡したら何か返ってきて、その時にすみませんなんですよね。二重に三重に、本当に苦しめられたなと」
■ 地裁の判決は過失を認めるも…
そして迎えた12日の判決。大阪地裁は、「獣医の治療に過失はなく、トリミング中の過失によるけがで死亡した」と認定。「飼い主たちは犬を飼育することで癒され、死による精神的苦痛は大きい」と指摘しました。
一方で、「事故の発生を予見することはやや困難とも言える」などと指摘。慰謝料については「犬の購入時の金額を大幅に超える額は肯定できず、原告1人当たり10万円が相当」などとして、被告の元トリマーに39万6000円の損害賠償の支払いを命じました。
原告の飼い主家族3人が求めていた350万円の賠償額には及びませんでした。
判決後、飼い主の男性が会見を開きました。判決に対する不満を表しました。
【飼い主】
「ペットはものじゃなくて家族なんですよね。そこについての記述が示されていないというのが大変不満に思っています」
【原告代理人・細川敦史弁護士】
「『先例に捉われないような判決をお願いします』ということをかなり書面で強調して書いたのですが、(判決は)かなり配慮したところがあるのかもしれませんが、まだ足りない」
家族同然のペットを思わぬかたちで失ってしまった飼い主。その怒りと悲しみはお金にかえられるものではありません。
(2023年9月12日 関西テレビ「newsランナー」放送)