リゾート人気が高まる淡路島のなかで、集客の減少に悩んでいる伝統芸能の人形浄瑠璃。
そこにコロナの影響が加わりさらに苦境に立たされています。
約500年の伝統を守るために奮闘する、若き太夫らの新たな挑戦を追いました。
室町時代に淡路島に伝えられたとされる淡路人形浄瑠璃。
人形遣い、太夫(たゆう)、三味線で演じられ、衣裳山(いしょうやま)など、淡路独自の派手な演出が特徴で、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
■若い人たちに見てもらうきっかけを作りたい
500年に渡る伝統を守り続けている「淡路人形座」は、パリ公演も行うなど国内外で活動しています。
2021年5月、緊急事態宣言のさなかの兵庫県南あわじ市には、観光客の姿はほとんどありません。
淡路人形座も、緊急事態宣言の発令を受け、4月25日から休館に。
レジャー施設が次々と誕生し観光地として人気が高まる淡路島にあって、淡路人形座の入場者数は年々減り続けています。そこにコロナの大打撃。
15人の座員たちは今、改革を迫られています。
4年目の太夫・竹本友冨士さん、21歳。
中学、高校時代から部活動で太夫をし、人形座に憧れてプロになりました。
【太夫・竹本友冨士さん】
「こんな素晴らしい自分が大好きな人形浄瑠璃を自分たちの代で終わらせたくないっていう気持ちが強くて。一番客層の薄い年齢層に一番歳の近い自分が、若い人に見てもらうきっかけを作っていくっていうのがすごい大事かなと思っています」
この日、集客の“入り口”である公式ホームページのリニューアルについて議論が行われていました。
【太夫・竹本友冨士さん】
「ふらっと来たお客さんがチラシを見たところで、『え?なにこれ?』と思ったら100%来ないと思う。お客さんが淡路に来られる前の計画の段階で、淡路人形座(に来ること)を選択肢には入れておかないと、最低限。やっぱり知る術が“ネット”。極端な話ホームページは文字なくて良いと思う。2ページ目以降で」
ウェブコンサルティングの仕事もしていている友富士さんが、新たなイメージ戦略を必死に伝えますが…。
【人形遣い・吉田徳蔵さん】
「わしらはもう凝り固まっとるさかいに固いことしかでてけえへん」
大先輩に対しても伝えるべきことは伝えます。
淡路人形座は定期的に出前授業を行っています。
自分と同じような、地元の若いファンを増やす大切なチャンスです。
【太夫・竹本友冨士さん】
「小中学校で講演したら子供がすごい興味を持ってくれて、それをきっかけに『また淡路島に行きたいです』と見に来てくれたりとか。ちょっとでも興味を持って見てもらうきっかけを作るのがすごい大事かなと思って」
■コロナで気付いた「舞台がある」ことの幸せ
緊急事態宣言が明け公演が復活しました。
特別講演の第一弾の舞台は市の大きなホールです。
淡路人形浄瑠璃と阿波踊りの2つの伝統芸能が初めてコラボします。
座員は、自分たちで会場運営をします。
演目は「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 道行初音旅(みちゆきはつねのたび)」。
源義経の妾である静御前と、義経の忠臣・佐藤忠信の舞踊劇で、華麗な人形遣いを披露する浄瑠璃の伝統的な演目です。
最後は、阿波踊りの踊り手に人形も混ざり、さらにはステージを飛び出してお客さんの目の前で壮大な阿波踊りを披露しました。
【太夫・竹本友冨士さん】
「舞台があるっていうことの幸せさというか、毎日舞台が出来るってこれほど幸せなことやったんやなっていうことを、この休業期間中につくづく実感した。見てもらえるものでないとそこで途絶えてしまうと思うので、伝統を守りつつも新しい取り組みは続けていかないといけないのかなと感じるところですね」
コロナ禍で気づいた「お客さんがいることは当たり前じゃない」ということ。
500年の伝統を自分たちの手で次の世代に繋げます。
(カンテレ「報道ランナー」2021年7月30日放送)