【複合災害】大地震で損害の住宅に降る雨 専門家に聞く “雨漏り”一人で対処するには? 一番ダメなことは屋根に上ること 高齢者や女性でも簡単にできる応急処置 2023年01月26日
大きな災害では、複数の要因によって、思わぬ大きな被害をもたらす現象が現れることがあります。これを「複合災害」と呼びます。
その一つ、「雨漏り被害」について考えます。
■2022年3月の福島県沖地震 雨漏り被害 当事者の声
2022年3月の夜、最大震度6強を観測する地震が福島県と宮城県を襲いました。地震翌日、宮城県内で被災した住人を取材すると…家の中は、大きな棚が倒れ、壁が崩れ落ちるなど見るも無残な状況となっていました。
そして、住人が一番頭を悩ませていたことは…。
【住人男性(72歳)】
「雨漏り全部です。隅っこまで。残っている分が降り落ちるわけです。ここでこう寝ていたんです。布団がびしゃびしゃになって寝られなくなったんです」
地震直後に降った雨の影響で、至る所で雨漏りが発生したのです。寝室は水浸しになり、バケツにたまった水を庭に捨てる作業が夜通し続きました。
【住人男性(72歳)】
「私は一人もんですからね。何もできないのが不甲斐ないんです」
2018年6月に大阪北部を襲った地震では、屋根を修理する間もなく雨が降り続きました。修理せず雨漏りを放っておくと、大変なことになる恐れもあります。
もし、大地震の後、家が雨漏りしたら一体どうすればいいのか。その秘訣を被災地でボランティア活動を行う雨漏り対策のプロ、NPO法人災害救援レスキューアシストの川島浩義さんに薄田キャスターが話を聞きました。
■雨漏りどう対処する? 屋根に上るのはゼッタイダメ!
雨漏りを防ぐ時にまず使いそうなブルーシート、自分ならどうするのか考えてみました。
【薄田ジュリアキャスター】
「被災地では屋根にブルーシートが掛かっている様子をよく見るので上ってかけますかね。業者も足りないとその時期聞きますし」
【川島浩義さん】
「上りたくなると思うんですけど、それはやめていただきたい、ダメなんです。危ないです。バランスを失いやすいので」
大阪北部地震の後、台風で大雨が降った時期までに、屋根などの修理中に転落する事故が相次ぎました。消防などによると、近畿では少なくとも50件以上発生していて、大阪府内では3人が死亡しています。
足場を支えてもらい、屋根の手前まで行ってみると…
【薄田キャスター】
「下で見ていたより高さありますね…これは怖い、怖い。これは滑りますよ」
瓦は思っていた以上に滑りやすいのです。
ここで、気になるものを見つけました。
【薄田キャスター】
「瓦の中から砂が出てきているんですけど。どういうことですか?」
【川島さん】
「瓦の中に入っている砂というか土ですね、土が入っています」
瓦には動かないよう固定するための土が入っている場合があります。ところが、雨が降ると、この土が転落の危険を生むというのです。
【川島さん】
「災害が起きると瓦がずれたり、崩れ落ちますから、泥が瓦の表面に出てしまってそれを踏むとかなり滑りやすくなる」
【薄田キャスター】
「(屋根に)上らないとなると、どうすればいいですか?」
【川島さん】
「上らないで雨漏りをしのぐには、家の中にシートをかける方法があります」
■家の中にブルーシート 和室の場合
まずは和室の場合。ここで必要なものは…衣装ケースにブルーシート、フックにヒモなどです。
【川島さん】
「まず、最初にブルーシートにたまった雨水をどっちに流すかを考えます。家具の配置を考えても、入り口側が(水を)集めやすいですよね」
和室は天井が板張りになっていることが多く、隙間から水が落ちてくるため、全体をブルーシートで覆う必要があります。
③シートを広げます。スムーズに流し込めるよう、シートを少したわませて勾配をつけるのがポイントです。
【薄田キャスター】
「これで天井全体を覆えましたね」
【川島さん】
「テントが張れたような状態。雨水はここから下には落ちてこない状態になりました。割と簡単にできます」
【薄田キャスター】
「そうですね。女性一人でもできますね」
④水を流し込む場所に衣装ケースを設置。シートの端にひもをつけて、そのひもを垂らし、ひもの先端に水が入ったペットボトルをくくり付けます。そのペットボトルを衣装ケースの中に置きます。
シートの上から水を流してみると…重りとなったペットボトルのおかげで、水がひもをつたって衣装ケースの方へと流れやすくなるようになっています。
【薄田キャスター】
「本当だ!ひもをつたってこちらが誘導したとおりに水がしたたってきました。衣装ケースのサイズがあれば十分ですね」
【川島さん】
「タオルを敷いたりするとか、水の跳ね返りも止められます」
寝心地が気になるのでベッドに寝てみると…
【薄田キャスター】
「立っていると圧迫感はありましたけど寝ているとそんなに気にならないです。ずっと目を開いているとちょっとチカチカはしてきますよね」
目が疲れてしまう時は…透明な養生シートをテープで固定して使うこともできます。普段過ごすことが多い部屋では、こういったもので代用すれば目の疲れがだいぶ減ります。
■家の中にブルーシート 洋室の場合
続いて洋室です。マンションなど壁紙がはられているクロス天井の場合は、雨水は特定の場所にたまります。
【薄田キャスター】
「ピンポイントで雨漏りがある場合はどうしたらいいですか?」
【川島さん】
「簡単に言えば、受け皿を作れば下まで落とせるのでその受け皿を作ってもらいます」
ここで役に立つのはポリ袋とペットボトル。ペットボトルは飲み口の部分だけを使うそうですが…これをどうするんでしょうか。
①ポリ袋の端をペットボトルの飲み口に通します。
③テープで固定して広げると、傘のような受け皿が完成しました。
これで天井を覆うことで、水を下に流すことが可能になります。
④後は和室と同じく、衣装ケースを置いて重りにヒモをくくりつけると完成です。
【薄田キャスター】
「雨漏り対策って個人でできないと思っていました。こんな簡単にできちゃうんですね。すごく楽ちんにできました」
たまった雨水は断水していた場合、トイレ用として使えます。しかし、大量の水を捨てるとなると大変です。そんな時に活躍する“あるものが”…
【川島さん】
「たまった水を紙おむつで吸ってしまう」
【薄田キャスター】
「すごく膨らんできた。水を吸って膨らんでいる。みるみるうちに。パンパンですよ、限界まできています。ずいぶん(捨てるのが)楽になりますね」
これなら、ゴミ箱に捨てるだけなので、高齢の方でも簡単にできそうです。身近なものを使ってできる雨漏り対策。ただ、あくまでも応急処置で、改めて専門の業者に家の修理を依頼することが大切です。
放っておいてしまうと…
【薄田キャスター】
「屋根がぬれた状態で放置すると心配ですよね?」
【川島さん】
「ぬれたままの状態だと天井板や壁にカビが生えてきますし、壁の中もカビが生えてきちゃいます。人体に対する健康被害、カビの胞子が影響してしまう。長い目で自分たちの生活を守る意味では早めに対処した方が健康な生活が守れると思う」
大きな地震などの後に発生する雨漏りは、早く日常を取り戻したい被災者にとって、深刻な問題です。しかし、対策を焦って屋根に上がると、思わぬ事故につながりかねません。まずは、自分でできる安全な応急処置を行い、専門業者による修理を待つようにしたいものです。
(2023年1月9日放送)