カンテレTIMES

歌舞伎俳優・尾上右近の自主公演『研の會』
「大阪に『江戸のデリバリー』に参ります」

2025/06/20

歌舞伎俳優・尾上右近の自主公演、第九回『研の會』が7月11日(金)・12日(土)に大阪・国立文楽劇場で開かれる。右近が2015年からライフワークとして心血を注ぐ自主公演の大阪開催は、昨年に続き、今年で2回目。6月19日(木)に大阪・カンテレ本社で行われた記者会見に登場した右近は、「あえて大阪に『江戸のデリバリー』に参ります」と笑顔でPRした。

43
年ぶりに上演される『盲目の弟』と、四役早変わりに挑戦する『弥生の花浅草祭』の2演目に挑む。

「盲目の弟」は1930年に右近の曽祖父である六代目尾上菊五郎によって初演された作品。「『ザ・兄弟愛』がテーマ。家族それぞれの距離感、絶妙な関係値を描いたリアルな現代ドラマで、歌舞伎というより、舞台を見に来る感覚で見られる作品。ざっくりいうと、『着物を着た現代劇』という感じで、日ごろ歌舞伎を見ないお客様にも受け入れられやすい演目では」と指摘する。

盲目の弟役を演じるのは、右近の同期でもあり、同志でもある中村種之助。右近は六代目菊五郎の写真集で初めて本作の存在を知り、松本幸四郎(現・白鸚)と中村吉右衛門が出演した82年の映像を共に見た種之助と「いつかやろう」と約束を交わしていたという。「お互い30代を迎え、『二人でやってみよう』という気持ちが一致したのが、今だった」と右近は振り返る。


宿屋で働くお琴役には、尾上松也の妹であり、右近とは幼なじみで家族ぐるみの付き合いがあるという劇団新派の春本由香をキャスティング。オファーをした時、出産直前というタイミングだったが、7月公演の出演を快諾してくれたといい、うれしかったという。「まさに『夢の初共演』です。お琴は、湿っぽさとからっとした両面があって引き立つお役。どんな芝居を一緒に作れるのか、いまから楽しみです」と笑顔を見せる。

一方、「弥生の花浅草祭」は、右近と種之助がそれぞれ四つの役を早変わりで魅せる舞踊。「二人で四役をぎゅっと50分に詰め込み、飽きるすき間のない、まるでトライアスロンのような作品になっています」と自信を見せる。「飛んだり跳ねたり、柔らかくも直接的にも踊ったり……。歌舞伎にも運動的な活発な表現が多分にあるということを感じていただけるはず」。

記者会見では、世界的アーティスト・横尾忠則氏が制作した特別ポスターがサプライズで初お披露目され、「うわ~、こう来たかぁ。すご。おしゃれ。かっこよ!」と大絶賛する一幕も。そして、「毎回、出し物がガラリと変わるので、なにが出来るか、いつも戦々恐々です。いつも右近さんのスリリングに、こちらもスリリングになってしまうのです」という横尾氏からのメッセージが代読されると、右近は感激しきり。「前々回(の第七回公演)も(横尾さん)らしさが詰まったポスターを作ってもらい、(第八回公演の)去年は、横尾さんの目から見る僕の変化を表現してもらった。今回は、その3倍ぐらい、僕の中の変化を感じて、形にしてくださった。やはり出会いやご縁は宝物だな」と喜びを爆発させた。「横尾さんは、人として礼儀・礼節を大切に生きていて、表現の瞬間ではどこまで飛べるのかを実践している方。ありがたい」と感謝の意を述べた。


昨年、初上陸となった大阪では、台風が接近する中での上演となり、「お客様にもスタッフにもご負担、ご苦労をおかけした。人の時間とお金をちょうだいしてやっている仕事だと改めて気づくきっかけになった」と振り返る。「『2都市で自主公演するなんて、たいしたもんだ。頑張ってるね」と仲間や先輩たちに声を掛けられると、うれしい。自分ができることをやることによって、歌舞伎にいい影響をもたらしたいという気持ちが伝わっているのかな』と手応えを語る。

来年予定している第十回で「研の會」にピリオドを打つと公言する。「満たされない思いを満たす思いでやってきた」という自主公演が、いつしか規模も大きくなり、歌舞伎俳優として、7代目清元栄寿太夫として出演する舞台も増える中、舞台の準備をする時間がなくなってきたという。「これ以上続けたら、パンクしちゃう(笑)。でも惜しまれながら幕を閉じるなんて、幸せなこと」としみじみ。毎年、自主公演を楽しみにしていたファンにとっては、一抹の寂しさを感じてしまうかもしれないが、そこは心配無用。右近から高らかに「何かしらやります!」との宣言が飛び出したので、ご安心を。「もうちょっとコンパクトに、時間ない中でもぐっと詰め込んでできることをやりたい。自分しかできない、清元と歌舞伎俳優ができる何かを掛け合わせて、形にしたものをお届けできたら」と構想を語る。

約1年ぶりとなる大阪での自主公演。「自分の意思で、関西のみなさんの前で歌舞伎を披露できることがうれしい。来年で幕を閉じるので、今がチャンス!(笑)ぜひ見に来ていただきたい。初めて歌舞伎を見る人にとっては、もってこいの話です。今回は、あえて江戸を感じていただける演目で、大阪に『江戸のデリバリー』、江戸をお届けに参ります」と笑顔でアピールした。

【公演概要】

尾上右近自主公演 第九回「研の會」

一、盲目の弟
角蔵:尾上右近
準吉:中村種之助
お琴:春本由香
インバネスを着た客:中村亀鶴

二、弥生の花浅草祭
武内宿禰・悪玉・国侍・獅子の精:尾上右近
神功皇后・善玉・通人・獅子の精:中村種之助

【大阪公演】
場所:国立文楽劇場
7月11日(金)昼の部11:00開演 夜の部16:00開演
7月12日(土)昼の部11:00開演 夜の部16:00開演
主催:尾上右近事務所/関西テレビ放送株式会社 協力:松竹株式会社

公式サイトはこちら:https://www.ktv.jp/event/kennokai/

今、あなたにオススメ

Recommended by