2018年11月24日(土)深夜2:15~3:40
平成30年度文化庁芸術祭参加作品
ファミリー~2人のママがいる~

ファミリー~2人のママがいる~

受賞

日本民間放送連盟賞 テレビ教養番組・優秀賞
ギャラクシー賞奨励賞
ニューヨークフェスティバル TV&フィルムアワード ドキュメンタリー<社会問題部門> 入賞

内容

奈良県に住む樋口ランさん夫婦は、特別養子縁組で2人の子を迎えました。兄のいっちゃん(一絆・4歳)と妹のみぃちゃん(心絆・2歳)です。

不妊に悩み、子供を産みたくても産めなかった辛い日々を経た末に選んだ「特別養子縁組」という道でした。裁判で認められれば、実の親子と同等の関係を結びます。登録した仲介団体は病気や障害の有無を問わず、赤ちゃんを引き受けてほしいと願っています。
妹のみぃちゃんにはダウン症がありました。2年前、NPOから「ダウン症の赤ちゃんを引き渡したい」という連絡があったとき、周囲は戸惑いました。でも妻のランさんの「迎えたい」という決意は揺るぎませんでした。
家族の中でも話し合いを重ね、やっとの思いで迎えたみぃちゃんの成長は、想像以上に遅く、なかなか不安は消えません。それでも夫婦は、みぃちゃんの心と身体の確かな発育に気付いていきます。家族はみぃちゃんの笑顔に笑い、小さな成長を見つけては喜び合うようになりました。
「産みの親」と「育ての親」がいるということ。この事実を子どもに伝えるべきかどうか、特別養子縁組で結ばれたそれぞれの家族が直面する悩みです。
ランさん夫婦の特別養子縁組を支援したNPOでは幼児期からの真実告知を勧めています。

代表の岡田さん自身、縁組で迎えた一人娘の愛未さんに6歳まで養子だと告げられなかったことを後悔していたからです。「私を産んでくれたお母さんに会ってみたい」18歳になり愛未さんは自分のルーツを知りたいと、“もう一人の母親”のことを考えるようになりました。
ランさん夫婦は最初から隠さず、子供たちには真実を伝えると誓っていました。産んだお母さんを大切にすることで、子供たちにも大きな家族を感じてほしいと願っています。産んだお母さんについて何を聞かれても、ランさんは優しい言葉で答えていきます。理解の深まりと共に何かを感じ始めるいっちゃんに、夫婦は何ができるかを考えます。
そんな家族の1年を見つめました。

ナレーション

吉田羊
吉田羊さんコメント
「特別養子縁組」という制度の中の、子どもを手放す側、引き取る側、それぞれの話が丁寧に描かれていています。

いっちゃんには“産みの親”と“育ての親”、2人のお母さんがいるということが彼の人生にネガティブにならないようにポジティブに捉えて、きちんと彼と話をしていく樋口家の姿は、この制度がもっと広く前向きに浸透していくきっかけになると思いました。

「人は一人では家族にはなれない。互いに支え合ってみんなで一緒に家族になる」と番組を見て思いました。家族になって終わりではない。その先に彼らの日々は続き、家族の思い出は増え、これからもっと喧嘩をしたり、ぶつかりあうこともあって、より“家族”になっていくと思います。もし10年後に家族を取材したときにはまた違った空気感を感じられたらいいな。家族の成長を一緒に見届けていただきたいです。

スタッフ

ディレクター:宮田輝美
撮影:粟村文彦
編集:樋口真喜
プロデューサー:萩原守