2012年10月14日(日) 深夜0:40~1:35
平成24年度文化庁芸術祭参加 夢の途上 文楽・人間国宝の弟子たち—

夢の途上 文楽・人間国宝の弟子たち-

受賞

ワールド・メディア・フェスティバル銀賞
ニューヨークフェスティバル芸術部門銅賞

企画意図

大阪が誇る伝統芸能、文楽。橋下市長による改革で、その存在が注目を集めている。しかし、文楽はこれまで、テレビなどのメディアに登場する機会が少なく、その内情を文楽ファン以外の人が知る機会は無かったに等しい。「文楽」は一体どのような世界なのか?「芸を繋ぐ」ということは、どういうことなのか。人間国宝3人とその弟子達に密着して、文楽の現状や課題を見つめたいと思う。

番組内容

日本が世界に誇る無形文化遺産の文楽。文楽は、「太夫」「三味線」「人形遣い」の三業が織りなす総合芸術である。
ただ、文楽は古典で語られるため、他の演劇などとは違い理解するのが難しい。「お年寄りの娯楽」と敬遠されるのもそういう所に起因する。
文楽を引っ張る「太夫(語り)」は、「60歳で一人前」とも言われ、文楽の世界では40歳近くになっても若手と呼ばれる。芸の花が開くまで、何十年という時間のかかる芸能である。そんな厳しい世界に、なぜ娯楽があふれる現代でも入門する若者がいるのか。どこに魅力を感じて人生を「修行」に捧げる覚悟を決めたのか。

番組では、竹本住大夫(太夫)、鶴澤清治(三味線)、吉田簔助(人形遣い)の3人の人間国宝とその弟子を取材している。
ある弟子は、師匠との共演を「ただただ怖い、ライオンを前に立っているようなもの」と表現する。芸に対する畏怖の念は、入門して19年目となる今でも薄れる事はない。
また別の弟子は、思い描くようにステップアップできない自分について悩みを語る。「文楽を好きになるほど焦りが大きくなる」と言いながらも、自分に言い聞かせるように「まだ入門して20年ちょっと、まだ始まってもいないのに…」という。そうした言葉は、修行の長い世界だからこそ出る言葉なのだろう。
しかし、彼らを見ていると、その忍耐の日々にありながらも「夢の途上」にある、そう感じる。
今、文楽は補助金をめぐる部分がクローズアップされているが、その文楽の世界で芸を磨く人たちの真摯な姿、志を伝えたいと思う。

番組は、こうした姿を知ってもらい、より多くの人たちに「逆境にある文楽」を身近に感じ応援してもらいたい、という願いを込めて作った。

【ナレーション】 豊田康雄(関西テレビアナウンサー)

【スタッフ】
ディレクター:柴谷真理子
プロデューサー:加藤康治