2011年11月5日(土)深夜 1:45~2:40

いのちの居場所~車いすから問う大震災~

語り

とりばみはる

企画意図・内容

東日本大震災で、岩手・宮城・福島の3県にある37市町村で被災した障がい者は、およそ9000人。そのうち2.5%にあたる230人ほどが死亡または行方不明となっており、健常者の割合と比べると障がい者の被害が2倍に上っていることが、内閣府の「障がい者制度改革推進会議」で公表された。さらに支援が必要と思われる障がい者は1800人以上もいるとも報告されている。(今年5月時点)
しかし、地震発生から半年を過ぎた今でも一体どれだけの障がい者がどのように被災したのか、国や自治体も詳しい実態を把握できていない。
本企画では、これまであまり伝えられることがなかった障がい者の被災状況を現地取材。
そこから見えてきたのは、過去の教訓が活かされず、様々なハンディをもつが故に過酷な状況を強いられている被災障がい者たちの姿だった。
その一方で、阪神淡路大震災を経験した関西の障がい者団体の多くが、被災地の障がい者支援を積極的に行っていた。その一つ、かつて事務所が全壊し、メンバーの1人が壊れた自宅の下敷きになるなどの被災体験をもつ「メインストリーム協会」(兵庫・西宮市)は、いち早く障がい者スタッフを被災地へ送り込む活動を開始。同時に、福島での放射能被爆を避けて関西へ移住を決心した障がい者も受け入れている。番組ではこのメインストリーム協会の支援活動を通して「障がい者の視点」から東日本大震災の被災障がい者の現状を捉え、天災だけでなく様々な人災によって翻弄され、自らの“いのちを守る居場所”すら定まらない人々の声を伝えていく。

主な登場人物

[1]藤原勝也さん 兵庫県在住 <車いすの障がい者>

藤原さんは、2004年からメインストリーム協会のスタッフとして活動。筋ジストロフィーという難病を持つが、24時間人工呼吸器を使用しながら自立生活を送っている。
そんな重度障がい者が被災地を訪問することで被災障がい者の励みになればということで、藤原さんはメインストリーム協会から岩手の被災地に派遣される。そこで仮設住宅に住む被災障がい者たちと出会うが、障がい者に対する配慮に欠けた環境をがまんしながら、先の見えない不安な日々を送っている姿を目の当たりにする。

[2]後藤明子さん 福島市出身 <車いすの障がい者>

後藤さんは福島市内にある障がい者の自立をサポートする「ILセンター福島」に7年間勤めていたが、震災で両親と暮らす自宅が半壊、さらに原発の放射能汚染の恐怖もあって関西へ避難することを決意。
メインストリーム協会が受け入れ先となって7月に引っ越してきた。しかし、福島に残した両親への複雑な思いと慣れない異郷の地での不安を抱えながら、後藤さんにとって人生で初めてのひとり暮らしを始めている。

後藤さんは福島市内にある障がい者の自立をサポートする「ILセンター福島」に7年間勤めていたが、震災で両親と暮らす自宅が半壊、さらに原発の放射能汚染の恐怖もあって関西へ避難することを決意。 メインストリーム協会が受け入れ先となって7月に引っ越してきた。しかし、福島に残した両親への複雑な思いと慣れない異郷の地での不安を抱えながら、後藤さんにとって人生で初めてのひとり暮らしを始めている。

菅野さんは、2年前から慢性肺炎を患い、日常生活では絶えず酸素吸入が不可欠。そのため放射能の恐怖は人一倍強く、原発事故以来ほとんど自宅にこもっている。
そんな菅野さんも遂に福島脱出を決意。9月末に関西へ下見にやって来た。

スタッフ

プロデューサー:土井聡夫

ディレクター:松本彬良 野崎朋未
撮影:長嶋利雄 桑田茂樹
編集:古賀喜和
MA・選曲:吉田一郎

企画・制作協力:インディーネットワーク