2010年10月11日(月)
望郷の島から—ハンセン病と家族の絆
語り
山下 リオ
企画意図
「ハンセン病」の問題について、どれくらいの人が関心を持っているだろうか。
去年、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(通称、ハンセン病問題基本法)が施行されたことも、どの程度、知られているのだろうか。国の責任が認め、すでに解決した問題と受け止めている人も少なくないはずだ。しかし、国の隔離政策で被害を受けた当事者には、少しも終わっていない。理不尽な政策のために、深く傷ついて生きてきた人達が、今なお訴えたいことは何か?そして彼らがどのような苦しみを抱えているのか?番組を通じて知ってもらうとともに、一人一人がこの問題にどう関われるのか、一緒に考えて欲しい。
去年、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(通称、ハンセン病問題基本法)が施行されたことも、どの程度、知られているのだろうか。国の責任が認め、すでに解決した問題と受け止めている人も少なくないはずだ。しかし、国の隔離政策で被害を受けた当事者には、少しも終わっていない。理不尽な政策のために、深く傷ついて生きてきた人達が、今なお訴えたいことは何か?そして彼らがどのような苦しみを抱えているのか?番組を通じて知ってもらうとともに、一人一人がこの問題にどう関われるのか、一緒に考えて欲しい。
内容
平成22年度 文化庁芸術祭テレビドキュメンタリー部門参加作品
岡山県瀬戸内市の小さな島の中に国立のハンセン病療養所「邑久光明園」がある。
前身の療養所は大阪市内にあり、関西の出身者が多い。
国はおよそ90年に及ぶハンセン病の隔離政策の過ちを認め、去年には基本法も施行されたが、被害の回復は道半ばだ。社会におけるハンセン病への差別や偏見は根深い。深刻なのは、隔離された人と家族が断絶され、関係修復が今でも出来ていないことだ。
83歳の津田勇二さん(仮名)は、自分のせいで兄夫婦が離婚に追い込まれた経験を持つ。「迷惑をかけたくない」という思いから、あえて今はどの親戚とも繋がっていない。存在するはずの甥や姪の連絡先も知らないまま、「天涯孤独」だと話す。
85歳の金地慶四郎さんは、入所してから69年間、兄と一度も会っていない。10年前かけた電話には、「お前の存在は、家族の誰にも言っていない」と切られたと言う。
唯一、電話をくれる妹も、夫や子供に兄の存在を隠しているため、待つだけの関係だ。「命に関わる事態は、どうするのか…」この問いに金地さんは毅然と答える。「電話はしない。たとえ私がどうなろうとも」。
一方、社会復帰した人たちの多くは、ハンセン病だった過去を秘密にして生きている。
子供や配偶者にも言っていない人が多い。ハンセン病だった過去を、なぜ本人も家族も語れないのか?取材すると、現在も続く被害が見えてくる。法律も変わり、国の責任が明らかになった今もなぜ「差別」や「偏見」だけが残ってしまうのか。番組を通じて、「差別」がどれほど人を苦しめるのか知ってほしい。
退所者の娘さんが、父の苦悩を思い、番組の中で語っている言葉は重い。
「誰が病気になってもおかしくはない。たまたまお父さんだっただけ。インフルエンザにかかったからって、避けられたら皆さんはどうするのですか?」
一方、社会復帰した人たちの多くは、ハンセン病だった過去を秘密にして生きている。
子供や配偶者にも言っていない人が多い。ハンセン病だった過去を、なぜ本人も家族も語れないのか?取材すると、現在も続く被害が見えてくる。法律も変わり、国の責任が明らかになった今もなぜ「差別」や「偏見」だけが残ってしまうのか。番組を通じて、「差別」がどれほど人を苦しめるのか知ってほしい。
退所者の娘さんが、父の苦悩を思い、番組の中で語っている言葉は重い。
「誰が病気になってもおかしくはない。たまたまお父さんだっただけ。インフルエンザにかかったからって、避けられたら皆さんはどうするのですか?」
スタッフ
- 撮影
- :関根剛史
- 助手
- :乾由布子
- 編集
- :樋口真喜
- MA
- :山岡正明
- 効果
- :萩原隆之
- ディレクター
- :柴谷真理子
- プロデューサー
- :土井聡夫