2010年8月13日(金)午後 3:57~4:53

戦争と仏教 ~寺報が記した戦時の教え~

語り

豊田康雄 (関西テレビアナウンサー)、寺下定信(関西芸術座)

番組内容

今年の夏で終戦から65年を迎える。戦争を直接体験した世代は年々少なくなり、戦争を二度と起こしてはならないという切実な思いが日常の中で語られる風景も消えつつある。一方、冷戦の終結やアメリカでの同時多発テロなどによって世界の情勢は大きく変わり、日本も安全保障について多くの点で見直しを迫られつつある。改憲を含めての議論もしばしば繰り広げられるが、そうした議論の前提として、かつて人々を戦争へと駆り立てたものが何だったのか、再確認することも必要ではないだろうか。

過去に日本の仏教教団が国の戦争に積極的に協力した事実は、戦争がいかに多くのものを巻き込んで推進されるものなのかということを物語っている。今では多くの仏教教団が、平和の大切さを強調しているが、数十年前にはそうした教団が日本の戦争の正当性を説き、アジア・太平洋に押し広げられていく戦いを「聖戦」と賛美していたことはあまり知られていない。平和を尊ぶ仏教が国民を戦争に駆り立てる役割を担っていたことは、今からすれば意外だ。しかし例えば浄土真宗本願寺派には、「戦時教学」といわれる理論を打ち立てて、明らかに戦争推進に協力していた歴史がある。

普遍的であるはずの宗教が、歴史的な状況によってその教えを変質させ、国家が戦争に向かえば、戦争推進のための宣伝部隊のような役割まで担ってしまう歴史が現実にあったことは、忘れ去られてよいものではない。人間の愚かさを指摘し平和や平等を尊ぶ仏教が、なぜ国の戦争に協力することになったのか。こうした歴史を繰り返さないためにどのような取り組みが必要なのか。番組は、こうした問題意識をもって過去の資料や関係者の証言、現在行われている平和への取り組みなどを広く取材し、平和の大切さについてあらためて考えることを目指す。

スタッフ

撮影:永田耕一
編集:井住卓治
ディレクター:豊島学恵
プロデューサー:土井聡夫
制作著作:関西テレビ放送