2010年1月16日(土)午後 4:15~5:10

語り

豊島由香

番組内容

震災直後の火災で一面焼け野原となった神戸市長田区御蔵通。震災復興事業として区画整理が実施された。路地にそって長屋と町工場が並ぶ下町だった御蔵は、幅6メートルの道路にそって一戸建ての住宅が並ぶニュータウンのような町並みへと変わった。一見すると整った景観となったが、まちからは多くの住民が去り、いまだに空き地が目立つ。そこに住む人たちは「以前のような活気がなくなった」と話す。路地で交わされた世間話、町工場の音、長屋の窓から聞こえてくる内職のミシンの響き…御蔵のまちからなくなったものは、震災復興がふるい落としてきた数々のものを表している。多くの住民が「これが震災復興だったのか?」と答えの出ない問いを胸に持ちながら日々を過ごしている。

そんな御蔵に、以前ここで震災後のまちづくりを支援するボランティアとして活動していた男性が戻ってきた。震災直後の焼け野原に向き合い、住民たちと一緒にまちの再生のために動き回った日々が、今も懐かしく思い出される。しかし、震災15年後の被災地は、当時の思いとは違う表情を見せている。御蔵のまちに立った男性の表情は、懐かしさの中に悔しさがにじむ複雑なものだった。この男性もまた、自分が関わった被災地のまちづくりとはいったい何だったのか、震災から15年を経てもなお答えを出せないことにもがいていた。そして今、震災復興への思いをまとまった書き物にしようと決意し、自分なりの総括を始めている。
震災15年、今では昔話のように語られる場合もある震災だが、注意深く目を凝らせば被災地は今も復興の途上にある。震災から15年のその日は、実は震災から16年目の始まりに過ぎないのかも知れない。当番組では御蔵に暮らす人々、そして元ボランティアの胸につかえる問いを見つめ、震災復興とは何なのかを考えたい。

スタッフ

撮影:孝岡則夫
助手:大迫一幸
編集:北山晃
MA:萩原隆之
効果:川口香
ディレクター:豊島学恵
プロデューサー:土井聡夫