堺市の認定こども園で、パワハラなどを理由に保育士が一斉に退職する意向を示している問題。こども園の存続が危ぶまれる中、園に通う子どもや親が路頭に迷う事態となっています。
■会長のパワハラが原因 保育士が一斉退職する事態に
【保護者】「もう、どうしよどうしよ。急すぎる。ほんまにここに預けてて大丈夫やったんかなって思った」
問題があったのは堺市西区にある認定こども園「あいあい浜寺中央こども園」。この園では12人の保育士が勤務していますが、そのうち10人が今月末までに退職の意向を示していて、それは今週に入り、突然保護者らに伝えられたといいます。
【保護者】「全然知らなかったので、(保育士は)笑顔で対応してくれていたので、びっくりしました」
退職の原因の一つは「会長によるパワーハラスメント」だといいます。 こども園を運営する社会福祉法人の会長の女性は、保育士を「コマ」と呼ぶなどのパワハラを繰り返していて、13日に行われた保護者説明会で、保育士らが実情を訴えていました。
【保育士(音声データ)】「われわれのことを『コマ』とおっしゃるんです。『コマがないから仕方ない』。われわれはコマじゃありません」
また人手不足の問題もあり、保育士らが職員を増やすよう会長に要望しても、体制が変わることはありませんでした。
【保育士(音声データ)】「このままでは大切な命を預かっているのに、いつ危険なことが起こるかもしれない。ずっとお願いしてきました。しかしながら『やってる』『募集をかけても、けえへんねんからしゃあないやろ』『お前は黙っとけ、ぐずぐず言うな』『金を出してるのは自分や』。このような発言が続いて、私は申し訳ないですけど、これ以上命を預かることもできないし、先生たちを守ることもできないなと、退職を決意して申し上げさせてもらいました」
■困惑する保護者たち
園のずさんな運営や会長の暴言に耐え切れず退職を決めた保育士たち。しかし、パワハラ行為をしたとされる会長は説明会には姿をあらわさず、保護者からは怒りの声もあがっていました。
【保護者(音声データ)】「納得ができません。必ずや本人(会長)からの声を…その場を設けるか、設けないか?」
【理事長(音声データ)】「現在のところではとても人前に出られる状況ではない。私としては(会長を)解任ということで、園の運営からは退くことに」
4月以降の新年度には少なくとも130人の園児が通う予定でしたが、園は保育士の確保に努めているものの、現状では運営を続けるのは難しいとみられています。 3月20日までに転園の希望を受け付けるとしていて、特に人手が必要な0歳から2歳児に対しては転園を促しているといいます。
■4月入園予定の子を持つ親「路頭に迷っている状態ですね」
4月から1歳の子どもが入園予定だった親は…
【子どもが入園予定だった保護者】「1歳児の入園は一切お断りという状況になっているので、近くで入れるところを探している。堺市も動いてくれると言っていますけど、私が行かそうとしているところはほとんど空きがゼロとなっているので、ここからどうしてくれるんやろうって…」
この保護者は4月から仕事に復帰する予定でしたが、他に預けられる園があるのか分からないため、先が見えないと言います。
【子どもが入園予定だった保護者】「もし育休延長したとしても、手当がもらえないなら、手当なしで家庭保育できるほどの経済力を持っていないので。路頭に迷っている状態ですね」
突然、保護者に迫られた選択。堺市によると転園を希望する子どもには転園先を確保できる見通しだということですが、それぞれの希望にどこまでそえるのかは分からないということです。
この状況に保護者会の会長にも不安な声が多く寄せられていると言います。
【保護者会会長】「兄弟がいるのですが、同じ園に通えるか分からない。そうなったら今までの生活がそもそもできなくなる。不安ですよね」
園側はこれまで関西テレビの取材に答えていません。今後、園の運営はどうなるのか。堺市は「緊急事態なので周りの園に受け入れをお願いしていて、最善を尽くす」としています。
■堺市は園にアドバイスしているというが…
園を運営する法人の会長のパワハラが背景にあるということです。 影響を受けるのは子どもたち、そして保護者です。4月に入園予定で制服も買っていたという保護者もいます。保護者の方自身も4月から仕事復帰を会社に伝えていたのですが、転園先が見つからない現状に困惑の声をあげています。
こども園の監査などを行う堺市は、園に対して「転園先が見つからない保護者の給料補償や一時預かりの費用補償など準備を考えておいて」とアドバイスをしたということです。これが可能かどうかはまだ分かっていません。堺市全体で調整して、どこかの園には転園の希望がある場合は入れるようにしたいということです。
「newsランナー」コメンテータでジャーナリストの浜田敬子さんは、「パワハラで先生が一斉に辞める事態は聞いたことがない」と話しました。
【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「皆さん途方に暮れていらっしゃると思います。これまでもよくあったケースとして、民営化している園の経営が厳しくなって突然閉鎖して、行き場所を失うこと結構あったんですけども、パワハラで先生が辞めるというのは聞いたことがないです。子どもが預けられないと仕事に復帰できない方は本当に多いと思いますので、やっぱり子どもの預け先をどうするのか、育休延長した場合の休業補償をどうするのか、非常に大事な問題だと思います。
ただ堺市の地図を見ても近くの園があまりないですよね。本当は市が立ち入り検査など行う責任があったと思いますので、とにかくひとりひとりの親御さんの希望を聞いて、家の近所じゃなくても、通勤途中などで、なるべく通勤経路を変えずに預けられるようにきめ細かい対応しないとならないでしょう。そうでないと生活を変えざるを得ない、厳しい状況になると思います」
子どもたちと保護者に、素早く、そして細やかで手厚いサポートが求められると思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月15日放送)