21億円の横領事件をめぐり無罪が確定した不動産会社の元社長が国を訴えた裁判で、大阪地検に対し取り調べの録音・録画の記録の一部分を提出するよう命じた大阪高裁の決定に対し、元社長側が特別抗告しました。
■検察の捜査は「強引で威圧的」
大手不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんは、土地取引をめぐり部下と共謀し21億円を横領したとして大阪地検特捜部に逮捕・起訴されました。
山岸さんは、一貫して無罪を主張していました。
特捜部は山岸さんが事件に関与しているという部下らの供述を有罪立証の柱にしたものの、強引で威圧的な取り調べが裁判で明らかになり、裁判所は、部下ら供述は「信用できない」と判断。山岸さんは無罪となりました。
■地裁は18時間の記録提出を国に命令
山岸さんは無罪確定後、国を相手取り「違法な捜査で冤罪を作り上げた」と損害賠償を求め提訴。
その裁判で、大阪地裁は去年9月、部下の取り調べを録音・録画した5日間およそ18時間分の記録の提出を国に命令する決定を出しました。
しかし、国側は即時抗告し、大阪高裁は録画・録音の提出範囲をおよそ1時間に狭める決定をしました。
■重要な部分が「削られている」
提出範囲から取り下げられた部分には「冤罪」を生み出す核心にかかわる重要な部分も含まれているといいます。
【山岸さんの代理人・西愛礼弁護士】「今回の決定から、検察官が机をたたいて一方的に怒鳴り続けたシーンが削られてしまっています」
大阪高裁は理由について「山岸さん側が報道機関などを通じて録画録音を公開した場合元部下のプライバシーを侵害する恐れがある」と説明しています。
【山岸さんの代理人・中村和洋弁護士】「裁判所と検察庁は仲良しで、身内を守っているのじゃないかと思われても仕方ないと思う」
山岸さんは、「違法な取調べは全面的に明らかにされるべき」などコメントしていました。
そして1月26日、山岸さん側は最高裁に特別抗告を申し立てました。
(関西テレビ 2024年1月26日)