【現地取材】遮断機・警報機ない踏切で事故 電動車いす男性死亡 遮断機ない踏切は全国3067カ所…6年で死者48人 課題は1カ所1000万の“設置費用” 2023年04月11日
京都府舞鶴市にある遮断機も警報機もない踏切で死亡事故があり、国の運輸安全委員会が調査に乗り出しました。
現地で取材を進めると、「危険な踏切」が無くならない理由が見えてきました。
【記者リポート】
「踏切の手前にいまして、今警笛が聞こえたんですけども…突然視覚から飛び出してきたような印象を受けます」
4月10日午前9時ごろ、京都府舞鶴市にある京都丹後鉄道の踏切で、86歳の林正夫さんが列車にはねられ、死亡しました。
列車の乗客・乗務員にけがはありませんでした。
事故が起きた現場は、警報機と遮断機が設置されていない「第4種」と呼ばれる踏切。
地元の人にとっては慣れ親しんだ踏切ですが…
【地元の人】
「昔から電車が止まったり人身事故あったりして“危険な踏切”と認識している」
■ 遮断機・警報機がないこと以外にも問題が
事故当時、林さんは、「シニアカー」と呼ばれるハンドル付きの電動車いすに乗っていましたが・・・
【記者リポート】
「立った状態ですとかろうじて見えますが、シニアカーに座って目線が下がると、ほとんど何も見えなくなってしまう状態です」
踏切のそばに土が盛られていて、見通しが悪くなっているのです。
【記者リポート】
「今、列車が来たんですが、今回は警笛も鳴りませんでした。これは気づくのが難しいかもしれません」
警察は盛り土のせいで林さんが列車に気づかなかったおそれがあるとみています。
シニアカーを利用する高齢者に話を聞くと…
【シニアカーを使う人】
「なるだけ、通らないように」
「遠いけど回っていく。怖いね…」
11日、国の運輸安全委員会の調査官が現地に入りました。今後、事故の詳しい原因を調べる方針です。
■ 全国に遮断機のない踏切は3000カ所以上
国土交通省によると、警報機も遮断機もない「第4種」と呼ばれる踏切は、全国に2455カ所。
警報機こそはあるものの遮断機がない「第3種」と呼ばれる踏切は、612カ所あり、あわせると、全ての踏切のおよそ1割を占めます。
さらにこれらの踏切での事故も発生していて、2021年度までの6年間で、48人が死亡しています。
国は全国の鉄道事業者に警報機と遮断機を設置するか、踏切自体を廃止するよう求めています。
■ 課題となるのは…「お金」
一方で今回事故が起きた踏切を管理する北近畿タンゴ鉄道は「去年から警報機や遮断機を設置しようと本格的な検討を開始したばかり。しかし、費用面が高額になることが課題になっていた」と話していました。一般的に、遮断機と警報機の両方を設置すると、1カ所につき1000万円単位の費用がかかるとされます。
また、「踏切の封鎖」については…
【地元の人】
「不便ですね。どっちか大回りせんとあきませんし」
「向こう通って回るのにはずいぶん時間がかかるんでね」
実際に、踏切の向いの道路に行こうとしても、一番近くにある遮断機のある踏切を使って迂回した場合、およそ5倍の距離を歩くことになります。
■ 大阪にも警報機や遮断機のない踏切が…
警報機なし・遮断機なしの踏切は、大阪の住宅街にもありました。
堺市西区にある「阪堺電車 石津2号踏切」は大阪府内で唯一の遮断機や警報機がない踏切です。
【坂元龍斗フィールドキャスター】
「踏切は住宅街にあり、 『左右確認』『危ない』などの看板が設置されています。阪堺電車の石津駅が近く、左右には遮断機や警報機が設置された踏切があり、この踏切の音が鳴ると電車が来ると気づくことができます」
「住民に話を聞くと、『昔から当たり前にあるもので安全とは思わないけど、当たり前の風景としてなじんでいる』と話していました。風向きによっては音が聞こえにくい場合もあるようです」
「昔子どもが列車に接触した事故があり、その時に遮断機をつけようという動きもあったものの、実現はしなかったということです。直接関係があるかはわかりませんが、阪堺電車によると遮断機や警報機の設置には1000万円ほどの費用がかかり、維持費も高くハードルが高いということです。またJRに取材すると『踏切は音も大きく、反対する住民も多い』という話がありました」
「この道をなくすのも手段の1つですが、踏切から石津駅まで行こうとすると、大回りする必要があり、車通りが多い道を通らなければならないため、道をふさいでほしくないという住民の声もあります」
■ 遮断機なしの踏切 解決策は?
交通政策に詳しい桜美林大学の戸崎肇教授は『自治体も積極的に関わってほしい』と指摘しています。
設置の責任者は鉄道会社になりますが、踏切の設置には道路も関わってくるケースも多く、間に立つ自治体の役割が重要だということです。
戸崎教授は必要なものをどこに残していくか交通政策として考えていく必要があるとコメントしています。
(2023年4月11日 関西テレビ「newsランナー」放送)