青森県八戸市の人気駅弁店の弁当を食べた全国の人に、食中毒が疑われる症状が相次いでいる問題で、関西でも体調不良を訴える相談があり不安の声が上がっています。
なぜ大規模な食中毒の疑いが起きてしまったのか?各家庭で注意したいことはどんなことなのか?食品の安全に詳しい名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授に聞きました。
まずは、今回の“食中毒の疑い”について見ていきましょう。なぜ全国規模で食中毒の疑いの体調不良が相次いでいるのでしょうか。
静岡県で「海女のうに弁当」を食べた男性は、異変を感じて途中で食べるのをやめたのですが、吐き気がしてきてもどしてしまい、熱を測ると38.4度くらいあったそうです。
「ピリッとした刺激があり、ご飯が納豆みたいに糸を引いていた」と話しています。
宮城県仙台市で「函館わっぱめし海鮮ミックス弁当」を食べた男女6人は、食後2時間後から4時間後に下痢や嘔吐などの症状が出たということです。高齢の女性1人が現在も入院中です。こうしたことが起きた原因はまだ不明とのことですが、こういう証言や症状などから何が原因だと考えられますか?
【名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授】
「ご飯のことを考えると黄色ブドウ球菌・セレウス菌。海鮮ということですと腸炎ビブリオなどが考えられます」
菌の名前が出てきました。菌が関係しているということですが、どうして菌が付着して増殖してしまったのでしょうか?
【名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授】
「弁当作りにはマニュアルがありますが、マニュアル通りに行われていなかったのではないでしょうか。手洗いをしていたのか?手袋をしていたのか? あとは配送や管理の問題です。大量に作って配送して…その過程で”低温管理”がきちんと行われていたのか心配です」
たくさんの人の手を介して、お弁当は作られて運ばれますよね。
【名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授】
「すごい数ですよ。あの大量のお弁当を作るわけですから、相当な人の手を介して、作られていると思います」
だから、全国で体調不良などを訴えた人が298人ということですか(21日午後5時時点)。
これだけの規模の食中毒の疑いということで、業者にはしっかり対応してほしいですが、食べる私たちも気を付けないといけません。
ただ、見た目だけでは判別が難しく、傷んでいる弁当の見分け方・ポイントはどうしたら気づけるのでしょうか。
【名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授】
「今回のように、ご飯が糸を引くとハッキリしますが、通常、細菌性の食中毒ですと見た目も変わりません、ですから厄介です。匂いも変わりません。腐敗だったら(臭いで)わかるんですけれど。いわゆる菌が増殖しただけでは 匂いや味もそんなに変わらないですね」
実は、涼しくなっていくこれからのシーズンこそが食中毒に注意が必要なんだそうです。食中毒の件数を見ますと…
1年を通して食中毒がもっとも発生しているのが10月であることがわかります。
なぜ10月に食中毒が多いのでしょうか?
秋に食中毒が多い理由は「油断と暑さ疲れ」ということですが…
【名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授】
「10月になると、それまでの高温が多少涼しくなります。そうすると、もう大丈夫かなとなりますよね。それが油断なんです。暑さで体力が低下して、やはり子供や高齢者は免疫力が低下すると食中毒になりやすいということになります。(Q.この秋の行楽シーズンや行事も食中毒多発と関連性があるのでしょうか?)もちろんあります。10月になると、運動会とか遠足とかハイキングとか、学校などでも行われますのでそういう機会が増えると、食中毒も増えていきます」
家庭でもできるお弁当の食中毒対策を3つまとめています。家庭で実践したいお弁当の食中毒対策がコチラです。まず「菌を付けない」ことが大切です。手や指の消毒が大事で、汚れた手でお弁当をつくると、このように菌に見立てた染料がお弁当に付着してしまいます。
そして、「菌を増やさない」ことも大切です。冷蔵庫に入れてすぐに冷やしたり、水気を取り除いて菌を増やさないようにして下さい。
さらに「菌をやっつける」ことも大切です。とにかく熱を加えて殺菌するようにしてください。「75度で1分」とありますが、その75度がちょっと難しくどうすればいいのかわかりにくいですね。
75℃で1分加熱するというのはどんな目安でしょうか?
【名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授】
「75度以上ならいいです。 例えば、沸騰する直前に(具材などを)入れて、そうすると温度が下がりますけれど、そこから再び沸騰近くまでいけば、 ほぼ75度で茹でることになります。沸騰ちょっと前のイメージです。(Q.いわゆる“レンジでチン”でもいいのか?)それでも構いません」
視聴者の皆さまから届いた質問をご紹介します。
Q.手に酢をつけておにぎりを握る。おかずは冷まして詰める。これでは不十分ですか?
【名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授】
「手に酢をつけて…も悪くはありません。おにぎりを作る時には“手にラップ”を付けることも大切です、あとは使い捨ての手袋を使うとか。 おかずを冷ましてから詰めることも大切です。早く冷まそうと思うと冷蔵庫に入れるとかですね」
やっぱり改めて、これからの季節こそ増えるということですから、注意が必要ですよね。
【関西テレビ 神崎博デスク】
「お弁当は熱々がいいのかな…と思ってしまって。湯気がある方がいいと素人では考えてしまいがちです。冷ますことの大切さと気を付けるべきは湯気。水滴が結構、大敵なんだなというのが改めて分かりました」
(関西テレビ「newsランナー」2023年9月21日放送)