■東京大会 “性の多様性”への理解は?
大会理念の1つに「多様性と調和」を掲げた東京オリンピック・パラリンピックが5日、閉幕。
LGBTQ=性的マイノリティであることを公表している選手が過去最多となるなど、“性の多様性”がこれまでになく注目された大会でもありました。
(LGTBQとは、性自認や性的指向について「まだ決まっていない」「分からない、違和感がある」「決めたくない」などの人を指す「クエスチョニング(Questioning)」や性的マイノリティを表す「クィア(Queer)」の英語の頭文字Qを加えて、LGBTだけではない多様な性のあり方を示す言葉として使われています)
車いすバスケットボール女子・イギリス代表のロビン・ラブ選手。
ともに戦ったチームメイトとパートナー関係にあることを公表しています。
そのラブ選手がある施設に寄せたメッセージ。
【メッセージ】
「私は、あなたがあなた自身であること、あなた自身を愛すること、あなたであることを誇りに思うことによって生まれる力を信じています」
メッセージが寄せられたのは、東京・新宿区にある「プライドハウス東京レガシー」。
どのような性のあり方の人でも、安心して、自分らしくいられるために作られた場所です。
館内には、LGBTQであることを公表しているアスリートたちのメッセージのほか、当事者の視点で集められた”性の多様性”に関する1800もの蔵書や相談ブースも置かれています。
プライドハウスはもともと、LGBTQへの差別や偏見もまだまだ強いスポーツ界に向けて何か発信できないかと考えた開催地のNPOが期間限定で立ち上げたホスピタリティ施設です。
2010年のバンクーバーオリンピックから始まり、国際的なスポーツ大会に合わせて各国で設置され、当事者たちが安心できる場所の提供とLGBTQに関する正しい情報の発信を行ってきました。
そして、今回初めて大会組織委員会の公認プログラムになりました。
【プライドハウス東京 松中権代表】
「このオリンピック・パラリンピックをきっかけに「多様性と調和」というテーマのもとで、LGBTQ+に関して世の中の人たちが意識したり、アンテナを張ったり、知ろうという大きなきっかけになると思うのですごくうれしい」
大会理念の1つとして「多様性と調和」が掲げられた東京大会。
アメリカのスポーツ専門サイト「アウトスポーツ」によると、オリンピックに出場した選手のうち少なくとも185人、パラリンピックでは少なくとも36人がLGBTQであることを公表しています。(9月6日時点)
柔道女子52キロ級の決勝で阿部詩選手と戦った、フランスのアマンディーヌ・ブシャール選手。
女子バスケットボールでは、金メダルに輝いたアメリカチームのうち、5人の選手が公表しています。
日本人で公表している選手はいませんでしたが、世界の、多様な性の選手たちが活躍しました。
「プライドハウス東京レガシー」には30を超える海外メディアが取材に訪れ、日本の現状についても関心を寄せたといいます。
【プライドハウス東京 松中権代表】
「グローバルなメディアが驚かれるのが日本の法整備の状況です。現在でいうと、G7の中で同性同士の婚姻関係を法的に認めていないのは日本だけ。イタリアも同性婚はできないけど、同性のパートナーシップは国が認めている。開催国として整ってないことへの驚きもありますね」
OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本は同性婚を認める法律や差別を禁止する法律がなく、戸籍の性別を変更する際に性別適合手術を条件としていることなどから、LGBTQに関する法整備の状況は35か国中、34位となっています。
プライドハウスを取材した海外メディアの1つ、ロイター通信は「他国に比べて社会的変化の遅れが際立つ」と報じました。
【プライドハウス東京 松中権代表】
「いよいよ世界の中では日本はごまかせないというか、日本例外主義は通用しないことを突き付けられたタイミングだと思うので、これからどう変わっていくのではないかなと思っています」
■“多様性”掲げた東京大会 何を残した?
京都市で暮らしている麻智さんとテレサさん。
同性同士でも結婚できるようになることを望んでいます。
2人はパラリンピック閉会式をテレビで見ながら、感想を語りました。
テレサさん
「かっこいいやん、演出」
麻智さん
「色とりどりでいいね」
東京大会で盛んに多様性がアピールされていたことに違和感を抱いた一方で、パラリンピックを見て、気付いたこともあったといいます。
テレサさん
「そこまで多様性できてないんじゃない?という疑問が普段の生活にはある。多様性のテーマで日本やってるよ、というアピールにつながるのは、まだ全然できてないっていうギャップがあったから…」
麻智さん
「聞いていて、むなしさもあったね」
テレサさん
「でもパラリンピックを見たら、本当の多様性がこういう感じなんだなって感じて。ひとりひとり違うけど、個性を生かせる方法を考えて競技に挑んでいる感じがすごくいいなと思って」
麻智さん
「これからでしょうね。これから日本がどう変われるか問われますね」
オリンピック・パラリンピック東京大会が掲げた「多様性」。
理念で終わらせずにこれからどう取り組んでいくのかが問われています。
(関西テレビ記者 竹中美穂 2021年9月7日放送)