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15分で売り切れ…「抹茶ブーム」の余波で京都の茶畑に異変!生産減った「煎茶」も値上がり05月30日 09:29

京都の名産品の「お茶」に今、ある異変が起きています。

その目的は抹茶。日本食ブームや健康志向の高まりで「抹茶」が今、海外から注目を集めています。

茶農家を取材すると、ある「異変」が。

景色が変わってしまったという茶畑。京都のお茶に一体何が―。

■茶の老舗にはオープン前から長蛇の列が


【記者リポート】「こちらのお店、まだオープン前なのですが、多くの方が並んでいます」

京都・宇治市の街中にできた長蛇の列。その多くが、海外からの観光客です。

【客】「ここの抹茶が美味しいと聞きました。早く飲んでみたい。お土産にもできるかな」
【客】「ここで日本で一番美味しい抹茶が飲めると聞いて」

こちらは、170年以上続く茶の老舗・中村藤吉本店。抹茶を次々とかごに入れていきます。まさに、抹茶の「爆買い」。

【客】「日本に来るたび、スーツケースは抹茶でいっぱいになります。昨日も来ましたが、売り切れていたので今日は早く来ました」

並べられた商品は飛ぶように売れ、開店からわずか15分ほどですが、抹茶はすべて売り切れました。いま、抹茶はまさに「争奪戦」となっています。

【中村藤吉本店株式会社・中村省悟代表取締役】「当店でもずっと売り切れが続いている状態です。お客さまの需要をとてもではないですけど、満たすだけの供給はいまできていない」

■抹茶の葉の価格は5年間で3割程値上がり


売り上げの9割以上が海外への販売だという業者は。

【株式会社茶匠六兵衛・井上祐社長】「アメリカとかフランス、あと最近は中東ですとかドバイが増えてきています。高くてもいいから“ある分だけ欲しい”というニーズもあってですね。新規のご注文なんかはお断りしてるところも結構ありますね」

人気にあわせて、価格も上昇。5年間で3割程値上がりしています。

■生産現場にはある異変が起きていた


突然、到来した「抹茶ブーム」。そんな中で、生産現場にある異変が起きていると聞き、取材班が向かったのは京都府・和束町。

宇治茶の産地として知られ、一面、緑色の茶葉が広がる、幻想的な景色は、“茶源郷”とも呼ばれています。

【上香園代表 岡田文利さん】「黒とかシルバーとか、色が変わってますよね。これ全部、抹茶のもと『てん茶』というもの」

山肌を覆うのは、緑の葉ではなく、黒いシートです。これは、抹茶の元になる「てん茶」という茶葉を生産するために欠かせないシート。

【上香園代表 岡田文利さん】「子供の時の景色はこんなにネットなかったし、一色ずっとグリーンでしたね」

■国が抹茶の生産を増やす方針を示し、生産量が増えている


実はいま、海外からの需要に答えるため、国が抹茶の生産を増やす方針を示していて、こちらの畑でも、ことしは、高く売れる抹茶の生産を去年より15パーセントほど増やしたと言います。

【上香園代表 岡田文利さん】「(和束町の茶畑は)東京ドーム600個分の面積を持っているんですね。全員、てん茶に移行しているというのは十分にある」

■「煎茶」も「抹茶ブーム」の余波を受け値上がり


一方で、抹茶の勢いに押されているのが、「緑茶」として普段から親しまれている「煎茶」。

京都府内で生産される茶の内訳は、抹茶が増えている一方で煎茶は減り続けています。

その結果、私たちにとって「うれしくない」影響が出ています。

この日、およそ60の業者が集まり、行われたのは、「茶葉の入札」。その価格は?

【入札に参加した茶商】「煎茶は去年相場よりも上がっている」
【入札に参加した茶商】「煎茶も上がってますね」

煎茶の価格は、前の年に比べておよそ20パーセントアップ。

「抹茶ブーム」の陰で、「煎茶」の値上がりが起きています。

【入札に参加した茶商】「煎茶とか玉露作っていた人が、てん茶(抹茶)に行ってるんで。てん茶の方が高いのでそちらに(生産が)逃げて行っている分、煎茶の希少性が上がって値段も上がっている」

■煎茶の販売店は値上げを検討せざるを得ない状況に


長年煎茶を販売してきた店は、夏にも値上げを検討せざるをえない状況に。

【多田製茶専務取締役 多田雅典さん】「(夏か秋に)今年の新商品に切り替わっていくと思いますので、そのタイミングで値上がりはあり得るんじゃないかなと」

「茶」をめぐる大きな環境の変化の中で、新たな形を模索するよう迫られています。

【多田製茶専務取締役 多田雅典さん】「抹茶にシフトしていくことは、まず生産者の皆さんの生活を考えていく上では必須かなと思っております。一方で、我々が生活で飲むその煎茶は、一お茶屋としてはきちんと残しておきたいと思っておりまして。嗜好品としてどの程度お客様に価格として妥協してもらえるかっていうところが1つのキーかなと思っております」

「抹茶ブーム」が広がる中で変わりつつある京都の「お茶」事情。

お茶が高級品になってしまう日も近いのかもしれません。

■ペットボトルのお茶にも影響


ペットボトルのお茶を販売するメーカーは、原料価格の高騰で、以下のいずれかを検討しているということです。

・商品の価格を上げる
・中国や東南アジアなどの安い茶葉に変更する
・商品数を絞るため終売する

流通経済大学の児玉徹教授によると「お茶の高級化が進むと茶離れが加速し、日本の『茶文化』そのものに影響を与える可能性もある」ということです。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年5月29日放送)

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