伝説の実況は「アナウンサーの教科書」に
【1994年・大阪国際女子マラソン】

アツい実況でレースに華を添えてきた関西テレビのアナウンサーたち。
心に残る思い出の実況や名シーンをお届けします。
安部か、浅利か、藤村か

前年のリベンジ対決が…三つ巴の争いにまで!

関西テレビ・元アナウンサーの石田一洋です。
私は振り返る大阪国際女子マラソン、思い出の実況は1994年大会の「三つ巴の争い」です。

この94年大会は注目されていたのが浅利純子選手と安部友恵選手なんですね。
安部友恵選手、浅利純子選手
実はこの二人は1993年、1年前の大会でも「1秒差の決着」で浅利選手が優勝するという、非常にドラマティックな大会だったのですが、そのリベンジをかけた大会が翌年の94年大会だったのです。
浅利選手
結果的にはこの二人の対決かと思われていたところに、ダイハツの藤村信子選手も加わって、史上まれにみる大激戦で終えた大会だったんですが、その時の実況、馬場鉄志アナウンサーの実況のリズムを振り返って頂きたいと思います。

3選手の名前を…「並びを変えず」に実況

(馬場鉄志アナウンサー実況)
『優勝は、安部か、浅利か、藤村か、3人に絞られたか 吉田遅れました。』
安部か、浅利か、藤村か
『安部か、浅利か、あるいは藤村か
安部が勝てば、マラソン3回目、初めての優勝になります。』
安部か、浅利か、藤村か
『安部か、浅利か、藤村か
優勝者、まったく予断を許しません。』

『果たして優勝は、安部か、浅利か、藤村か
さぁゴールまであと1キロだ。』
安部か、浅利か、藤村か
(競技場のゴール直前実況)
『安部が出ました!安部が出た!…安部初優勝!』
安部初優勝

「語感」を計算…アナウンサーの教材に

結果は安部選手が前年のリベンジを果たして、見事に優勝を飾るという、そこも含めて非常にドラマティックな大会だったんですがこの94年大会の1号車の実況担当だった馬場鉄志アナウンサーが、素晴らしい実況をしているんです。
安部選手、浅利選手、藤村選手
この三つ巴の争いを、どう表現するかというときに安部選手なのか、浅利選手なのか、藤村選手なのか…みたいな感じであおっていくんですが、そこを馬場アナウンサーは、リズムよく『安倍か、浅利か、藤村か』っていうフレーズを何度か繰り返されるんです。

でも、決してこの順番を入れ替えることはないんですね。

後に、馬場アナウンサーに話を聞くと「絶対この順番やないとアカンねん、語感のリズムが、この並びが一番いいんだよ」っていうのを何回も強調されて教えて下さいました。

確かに…
『藤村か、浅利か、安部か』…なんかこうリズム悪いじゃないですか。
『安倍か、藤村か、浅利か』…これもリズムが悪いんですよ。

『安倍か、浅利か、藤村か』…リズムが良いじゃないですか!

この語感、ここまで計算して馬場アナウンサーはずっとこの3人の争いを描いて実況されていて、今でも「教材」になっている大会でもあるんです。