その瞬間、競技場に大歓声が…
【2016年・大阪国際女子マラソン】

アツい実況でレースに華を添えてきた関西テレビのアナウンサーたち。
心に残る思い出の実況や名シーンをお届けします。

“福士加代子”が教えてくれた「実況の極意」

関西テレビ・元アナウンサーの山田恭弘です。
私が振り返る大阪国際女子マラソン、想いでの実況は2016年の福士加代子選手です。
このレースは2016年、リオオリンピックの選考レースでした。
福士加代子選手
福士選手と言えば、2008年初めて大阪を走ったとき。
最後はご自身が「バンビのようになった」と話していたように、転びながら転びながら、それでも最後までゴールを目指した、あのシーンが一番皆さんの印象に残っていると思います。
福士加代子選手
そんなシーンを乗り越え、大阪に何度も挑戦して、そしてついに迎えた2016年のリオオリンピック、この代表選考レースの中で、福士さんがついにぶっちぎりのトップで競技場にやってくるんです。

その瞬間のスタジアムの雰囲気というのが今でも忘れられません。

その瞬間、競技場を包んだ「大歓声」

(実況)
『これまでになかったような大歓声がこの福士を包んでいます。
三度目の選考レース、ついに福士がトップでこのスタジアムに戻ってきました。』
福士加代子選手
『努力が報われたと涙を流したモスクワの銅メダル、もう一度、リオで金メダルを取るために、福士はマラソンを続けました。』

『集大成、今日は元気に笑顔でフィニッシュしたい、そう話していた福士、さぁお父さんももう涙です。願えば叶うとウインドブレーカー、その応援団もこの日が来るのを待ちかねていました。』
福士加代子選手
『さぁ福士、あとは、あとうはもうタイムとの闘い、22分30秒を切るのは、もう間違いありません。』

『あと100m、待ち受ける…あぁここで!16年越しの想い、永山監督が声をかけます!
永山監督が並走!共に、共にこの16年間、福士と歩んできたこの永山監督の想いです。』
福士加代子選手
『さぁ真の優勝へ
これがリオに向けたフィニッシュテープ!』

『ガッツポーズの福士、そして永山監督、やったという言葉です。』
福士加代子選手
『派遣タイムを上回る2時間22分16秒!
これが真の一等賞です!』
福士加代子選手

あえてマイクをオフに…「黙る実況」

私はその時ですね、競技場の実況を担当していたんですけども、レースがスタートしたら、しばらくずーっとそのレースを競技場で見つめているわけです。

そんな中、とうとう福士選手がペースメーカーが抜けてからもぶっちぎりのペースで、この長居に向かって来る。
福士加代子選手
この高まる思いというのがずーっとあって、それで、さぁついに福士選手がやってくる、いま、マイクのスイッチを上げよう…そうなった瞬間に、福士選手に対して今まで自分が聞いたことがないような大歓声が長居のスタジアムから巻き起こったんです。

その瞬間に自分はマイクのスイッチをいったん戻しました。
そしてそれからゆっくり上げてその大歓声を皆さんに聞かせようと思ったんです。
福士加代子選手
今でもその時の歓声を思い出すと、ちょっと鳥肌が立つような感じがします。
実況というのは「あえて黙ること」も必要なんだなぁというのを知った大会だったと思います。