カンテレTIMES

目が見えず、話すこともできない少女の実話をミュージカル化!『SERI』山口乃々華&奥村佳恵&和田琢磨

2022/08/05

今年2月、「共感とは何か?」をテーマに、日本でもヒットした同名の韓国小説を原作に思春期の苦悩や家族愛を緊密に描いた舞台『アーモンド』を手掛け、先日発表された第30回読売演劇大賞の中間選考で、演出家の板垣恭一、振付・ステージングの山田うんが各賞のベスト5に名を連ねるなど、シンプルながら上質な作品作りで注目を集める舞台公演制作会社のconSept

このconSeptによる新作ミュージカルが、多様性の暗闇に光を当てるをテーマに、10月に東京と大阪で上演する『SERI~ひとつのいのち』。母でありニューヨークで働くキャリアウーマンでもある倉本美香氏本人の視点から、障がいを抱えて生まれ、目が見えず、話すこともできない娘と父母の8年間のエピソードが綴られた『未完の贈り物』(2012年刊)を原作とし、千璃自身が感じたかもしれないことに想像を巡らせ、千璃と母・美香、父・丈晴の親子3人を通して、人と人が共感し共存するということの本質について問いかける意欲作となっています。

千璃役にはE-girlsを経て、俳優として活躍の幅を広げる山口乃々華。千璃の母・美香役には蜷川幸雄氏に見出され最近では『LUNGS』で好評を得た奥村佳恵。そして女性二人を支える父・丈晴役には、2.5次元作品を中心に活躍し、自身初となる父親役に挑む和田琢磨。初共演にして、そろってオリジナルミュージカル初主演となる3人が、728日(木)に行われた取材会に集まった記者の質問に答えながら、『SERI~ひとつのいのち』に込める三者三様の思いを語ってくれました。

●あらすじ
ニューヨークで暮らす美香と丈晴は子供を授かった。千璃と名付けられた女の子。
初めての子供に未来への希望と夢に膨らむ二人だったが生まれた子供には両眼ともに眼球がなく、知的障害も抱えていた。絶望し途方にくれる夫婦。特に母である美香は自身を責め、周りの目を気にし、そして意思疎通がままならない我が娘に困惑し疲弊していく。
ある日、思い詰めた美香はマンションの屋上から千璃とともに身を投げようとするが、そのとき屋上から見下ろしたマンハッタンのある情景を耳にした千璃が笑う。初めて目にした娘の笑顔に触れ、“この子と生きていこう”と強く誓う美香。
しかし、その決心の先には終わりが見えない千璃の手術、夫婦のすれ違い、周囲の非難、法廷闘争…など想像を絶する難題が幾重にも待ち受けていた。



――障がいを抱える娘と家族の実話をもとにした難しい作品ですが、台本を読んだ印象は?
奥村 実在している人物たちで事実であることが信じられないくらい圧倒されましたし、正直これが現実なのかと思いました。でも、私が演じる美香さんは本当に強い人で、苦しみもありながらも前を向きながら闘い続けてる人。決して負けない美香さんの勇敢さを見習いながら、私もこの台本と闘っていきたいなと思いました。

和田 両親の苦悩、親子の距離感、言葉では表しようがないような苦しみを経験されているご家族の話ですが、その反面すごく身近な問題というか、自分たちの身近に潜んでいるようなテーマでもあるような気がしていてそこをヒントに物語を解き進めていきたいです。

山口 みんなで力を合わせて向き合って、障がいを乗り越えていく、障がいと共に生きていく家族。それを支える絶対的な両親の愛を感じました。私もこんな家族となら千璃として一緒に生きて行きたいなと思います。



――「身近に潜んでいるようなテーマ」と感じる具体的なところは?

和田 たとえば、子供に対して母親が持つ価値観と父親が持つ価値観のズレ。私は36歳で未婚なんですが、友人夫婦からもそういう話を本当によく聞くので、お互いの夫婦観、子供に対する願望、接し方が特に身近に感じるところですね。

山口 夫婦の間で本当は言いたいけど言えなかったことが、千離ちゃんと向き合っていく時間の中で増えていく。その一方で、夫婦の絆が千離ちゃんと向き合うことでグッと近づいていくので、子供が生まれることで問題が増えるとともに、お互いの絆は深まるのだなと感じました。

奥村 夫婦二人の空間の中でやりとりしている会話のシーンは、「もうどうしようもないな」みたいな感じ。人間対人間の小さな世界での中で、「あっダメだ、これは!」「うわぁ!あるある!!」っていうザラつきというかリアリティを感じてもらえるといいなと思います。

――実話で、まだ実在されている人物を演じるのは大変だと思いますが、決意や意気込みは?

山口 今回演じる年齢が、誕生から学校に入るまでの幼い頃です。千離ちゃんを演じるにあたって、なるべく嘘のないようにしたいという思いが強いのですが、私は今24歳なので、24年分マイナスして演じるというのはとても難しいですね。ピュアな気持ちで台本をしっかり読んで、自由な気持ちや豊かな感情をめいっぱい表現できたら、千離ちゃんがこの物語の中でイキイキと彩られるようになると信じています。

奥村 正直いつもお芝居するときに比べてドキドキはしています。台本の中にしっかり苦悩や喜びが描かれていて、私の体で私の声でこの台本をこの作品を皆さまにお届けするのが私の役割なので、みんなで稽古をしていく中で一緒に作品のいろんな素敵なところを探して届けられたらいいなと思います。

和田 ご本人とお会いしたわけではないのですが、ひとつ言えることは台本を信じて台本に真摯に向き合うことが役者としての務め。そういった思いが必ず実在される方に届くものだと信じていますし、観に来ていただいた方にも何か与えられるはずだと信じています。

――この作品を通して、自分の「視点」の変化を感じることは?

奥村 「知らない」ということと「知っている」ということの差は本当に大きいと感じています。私自身、千離ちゃんの「両眼性無眼球症」という病気のことをこの作品で初めて知りました。「こういう病気があるのだな」とか、その周りで「こんなにたくさんの人が協力したり闘ったりして生きている世界もあるのだな」ということを知ることで、自分の中で新しい視点が生まれたり、他人事じゃないのだなと感じられるとすごくいいなと思います。

和田 4年前に父が病気になりまして、100万人に1人という脳の病気なのですが、バリバリ働いていた父が急に働けなくなって、車の運転もダメって言われて。今は普通に生活できていますが、父の病気が原因で家族やご近所の方々との距離を感じるようなこともあって、人ってふとしたキッカケで環境がガラッと変わるのだなということを痛感しました。そういった実体験もあって、今まで目を伏せがちだったことに対してきっちり目を向ける機会をいただいたような気がしています。この作品が、今まで家族や周りの人間に対して思っていたり感じていたけれど、言葉にできなかったことを伝える勇気を与えてくれるキッカケになればいいなと思っています。

山口 私の祖父は実は目が見えない人生を送っていました。もう亡くなっていますが、私にとって「目が見えない」のは身近で当たり前すぎて、足音で私が来たことがわかる祖父に「どういう風に感じているの?」と聞いたことがなかったのですよね。祖父がどういう風に目が見えなくなって、祖父の両親にどういう手助けをしてもらって、どういう人生を送ってきたのかしっかり向き合って学べる良い機会でもあると思っています。この作品を通して「知っている」風なことを「より深く知ってもらう」ことに繋がればいいなと思いますし、周りの人の「生きづらさ」や「不自由さ」にも、もっと気づけるようになれるといいなと思っています。

――最後に、ミュージカル「SERI~ひとつのいのち」を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

和田 重い作品に感じられるかもしれませんが、厳しい現実の中から希望や救いを見出せるような作品にしたいと思いますし、今回は歌だけではなく楽器の生演奏も加わる華やかなミュージカル作品なので、東京なり大阪なり劇場に足を運んでいただければ嬉しいです。

奥村 生演奏や歌や身体表現、会話劇のシーンなど、たくさんの要素を楽しんでもらえる作品になると思います。きっと千離ちゃんの頭の中は、私たち以上にもっと自由で豊かかもしれないと想像したりもするので、この作品を通して豊かな彩りをお届けしたいです。たくさん稽古しないといけないですけど、一生懸命頑張りますのでぜひ観に来ていただければと思います。

山口 この作品には「みんな普通に安全に生きていられるのは、周りにいる人が支え、愛してくれているからだよ」というメッセージがあります。「誰もが必要だし、あなたがいないとダメな世界なんだよ」という想いを届けたいですし、感じていただけると嬉しいと思っています。ぜひ劇場に観にきてください。



【公演情報】
公演名:conSept Musical Drama#7「SERI~ひとつのいのち」
東京公演:2022106日(木)~1016日(日) 博品館劇場
大阪公演:20221022日(土)・23日(日) 松下IМPホール 
出演:山口乃々華 奥村佳恵 和田琢磨 
植本純米 小林タカ鹿 樋口麻美 辰巳智秋 内田靖子 長尾純子 小早川俊輔 
原作:倉本美香『未完の贈り物』
脚本・作詞:高橋亜子
作曲・音楽監督:桑原まこ
演奏:桑原まこ(Key.)、成尾憲治(Gt.)、山口宗真(Reed)、平井麻奈美(Vc.

チケット:現在プレイガイド先行受付中
一般発売 827日(土) 
HP
https://www.ktv.jp/event/seri/