開催内容
日本における影絵作家の第一人者・藤城清治。1924年4月17日、東京都に生まれ、慶応義塾大学在学中に児童文化研究会で人形劇に出逢います。19歳で学徒動員に駆り出され、海軍予備学生として沿岸防備に当たっていた際にも、隙間の時間に少年兵と人形劇を上演していました。終戦後、復学した藤城は影絵人形の存在を知り、影絵なら物のない中でも、焼け残った廃材でも幅広い表現ができると気づきます。そうして生まれたのが藤城の影絵でした。
戦争で傷ついた人々が再び立ち上がっていくには、夢や希望が必要でした。地球に暮らすあらゆる生き物のいのちを真ん中に、藤城清治のメルヘンの世界が花開きます。雑誌『暮しの手帖』への連載を契機に、カラー作品という新境地を開拓し、光と影の世界に鮮やかな彩りが加わりました。
さらに日本各地を巡る中で、その土地に暮らす人びとの息遣いが聞こえるような後年の代表作品群が生まれます。広島の原爆ドームや鹿児島の知覧特攻平和会館、東日本大震災の被災地にも出かけ、社会的なテーマにも果敢に取り組んできました。戦争体験に基づく平和への希求は、藤城が扱うあらゆるテーマに通底しています。
2025年4月に101歳を迎えた現在もなお、藤城は精力的に創作に取り組んでいます。1日に約100枚消費するというカミソリで、次々と輪郭線が切り出されていきます。藤城は言います。「鉛筆でもない、筆でもない、切る線の勢い。そのとき、その瞬間、浮かんだ思いでもって、切る線に命を懸ける。それが面白い」と。
2017年大阪・天保山で開催して以来、8年ぶりの大阪開催となる本展では、「日本一大阪人パノラマ」(2014年制作)など大迫力の大型作品をはじめ、本展のために書き下ろした「ミラクルアビーとミラクルボーイ」(2025年制作)など101歳を超えて制作した新作も展示いたします。藤城清治の「生きた線」と対面いただく絶好の機会となるでしょう。


藤城清治 プロフィール
1924年東京生まれ。学生時代から絵画、影絵、人形劇を始める。1948年『暮しの手帖』に影絵を連載し影絵作家として注目を集める。1952年人形と影絵の劇団・木馬座を結成、TV番組『木馬座アワー』では自ら演出、自身が産み出したオリジナルキャラクター・ケロヨンが爆発的人気を呼ぶ。木馬座解散後も影絵作家、影絵劇演出家として活動し世界各国で影絵展、影絵劇の上演を行う。2024年100歳を超えてからも新作を発表するなど、意欲的な創作活動を続けている。
作品紹介
終戦直後、東京は一面焼け野原でした。復学した藤城清治ですが、材料が手に入らず絵や人形劇を作ることができません。そんな折に小澤愛圀氏の書籍でジャワの影絵劇に出会います。影絵の幻想的な美しさにひかれた藤城は、影絵の世界へのめりこんでいきます。「がれきのなかから拾った木切れと汚れた布でも、太陽か月か蝋燭の光をあてれば影ができて、人々に喜んでもらえる」。そう思ったことから影絵をつくり始めたのです。

油絵、人形劇、影絵劇、影絵と様々なことに取り組んでいくなかで一貫していたのは、メルヘンで楽しい世界観でした。ですが、80歳の時に転機が訪れます。いままで戦争に関する場所を避けていた藤城ですが、はじめて原爆ドームを目の当たりにしたのです。「悲惨な出来事が未来を生きる力につながる、そんな作品をつくらなくてはならない」。メルヘンの世界で楽しませてきたことと現実を描くことのギャップに葛藤しながら、戦争や震災の作品に取り組み始めます。

そうして101歳を迎えた現在、「未来を生きる力を絵として届けたい」、その思いで、日々作品を作り続けています。
見どころ
日本一大阪人パノラマ
8年ぶりとなる大阪での展覧会の入り口で最初に出迎えるのは、横6m×縦3mの大作「日本一大阪人パノラマ」です。大阪の名所が魅力的に描かれ、観客を楽しませます。

メルヘンの世界
藤城作品のなかでは、こびとや動物、ケロヨンといった様々なキャラクターが同居して、ひとつの世界を作り上げています。
今回の会場では「風の中の白いピアノ」を展示します。水槽と鏡を用いた展示方法をとっており、果てしなく続くメルヘンの世界を堪能することができます。


物語の世界
藤城清治は20代から様々な物語の挿絵を手がけてきました。やさしさとユーモアに溢れるキャラクター、そして美しい風景は、おはなしの世界に奥行きをもたらします。
20代から連載が始まった「暮しの手帖」作品をはじめ、30代の「西遊記」、宮沢賢治童話や80代の「マボロシの鳥」(原作 太田光)の挿絵など、一連の影絵作品を展示します。

いまを生きるよろこび
藤城清治の創作意欲はとどまることを知りません。101歳の誕生日に公開された「藤城清治101 アビーと共に生きる」には、混沌とした現代から明るい未来へと向かっていく希望が描かれています。そのほかに100歳以降に制作した展覧会初公開の最新作を複数展示します。

戦争と震災 平和への祈り
藤城清治は80歳以降、戦争や震災にまつわる作品を制作するようになります。
戦争の苦しみや悲しみが忘れられようとしているいま、戦争体験者として自分が描かなければいけないと感じたのです。原爆ドームとの出会いを契機に、自らがアメリカの本土上陸作戦の防衛最前線にいた時の記憶を描いた「九十九里浜旧香取海軍航空基地掩体壕のおもいで」、特攻隊で亡くなった親友を想って描いた「平和の世界へ」など、次々と作品を生み出します。
東日本大震災が起きた2011年には、防護服を着て被災地の姿をデッサンして回りました。「福島 原発ススキの里」は、原発そばの川で産卵のために遡上している鮭に、災害を乗り越えて新しい未来をつくっていく自然と人の姿を重ね合わせています。
現地での丹念な観察をもとに表現された精緻な描写は、見る者の心に深く訴えかけます。


各地の風景と神話の世界
若き日はメルヘンの世界を描くことが多かった藤城清治ですが、年齢を重ねるとともに自然や時を超えて残る建造物、物語の美しさにひかれるようになります。
万物すべてを兄弟姉妹として愛した「アッシジの聖フランシスコ」を描いた連作は、構想から21年の時を経て92歳の時に絵本として出版されました。
93歳での連載となった「家庭画報」のシリーズは、1か月ごとの日本の四季の移り変わりを描いた作品です。12か月全ての作品が揃うのは、大阪で行う展覧会としては初となります。

開催スケジュール
日程
2025年10月22日(水)~2026年1月4日(日)
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:12月31日(水)、2026年1月1日(木・祝)
会場
グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
チケット発売日
8月1日(金)10:00~
料金
一般 | 高大生 | 小中生 | |
---|---|---|---|
前売 | 1,800円 | 1,300円 | 500円 |
当日 | 2,000円 | 1,500円 | 700円 |
※団体は20名以上
※未就学児入場無料
※障がい者手帳などをお持ちの方(介助者1名を含む)は当日料金の半額(要証明)
※前売券は8月1日(金)~10月21日(火)まで販売
プレイガイド
近鉄駅営業所
チケットポートなんば店
- 主催
- 関西テレビ放送
- 協力
- ナレッジキャピタル
お問い合わせ
06-4862-5877
(受付時間:平日10:00~17:00 ※開催期間中は開催時間に準ずる)
※8月1日(金)10:00開通