フランスで導入が進んでいる「付き添い犬」。被害を証言する時に寄り添ってくれる存在です。
【レアさん】「(付き添い犬のオルコがいなければ)もっとストレスを感じて、あまり話せなかったかもしれないです。でも、オルコがいたからしっかり話せました」
愛らしい姿で緊張を和らげてくれる犬たちの活躍を追いました。
■被害者と捜査員 双方の助けになる付き添い犬
【捜査員】「カメラとマイクで、会話は収録しています。あなたのことを知りたいから、好きなことを教えて」
【レアさん】「動物が好き。前は犬を飼っていたんだけど、両親が離婚して、今はいないの」
病院で捜査員と話しているのは、14歳のレアさん(仮名)。以前、性的暴行の被害を受けました。
隣の部屋では心理学者や医師たちが見守っているものの、取調室では、捜査員と2人きり。
極度の緊張の中、つらかった当時の状況を思い出しながら話をしなければいけません。
そんなレアさんの傍らで、ぴったりと寄り添っているのは、5歳のゴールデンレトリーバー、オルコです。
フランスでは2019年以降、司法の場において、付き添い犬の同伴が認められています。被害者の不安な気持ちを和らげる役割を担っているのです。
【レアさん】「(オルコがいなければ)もっとストレスを感じて、あまり話せなかったかもしれないです。でも、オルコがいたからしっかり話せました」
取り調べが終わってからも、レアさんはオルコのそばから離れませんでした。
オルコはこの日、性的暴行や強盗などで被害にあった3人の子どもたちに付き添いました。
【サラさん】「聞き取り中に、オルコがおならしたの!」
【サラさんの母】「本当?」
【サラさん】「緊張がほぐれたから心の支えになるわ」
捜査員のレティシア・グロさんは、オルコについて次のように話しました。
【レティシア・グロ捜査員】「誰かに面と向かって話すのは彼女たちにとって、とても難しいことでした。もしオルコがいなければもっと大変だったと思います」
被害にあった当時のことを話すのは、追体験につながり、心の負担にもなります。
【レティシア・グロ捜査員】「被害者は捜査員よりも犬に視線を送ることが多いです。質問すると、こちらを見ずに犬に話しかけるのです」
被害者とのコミュニケーションを生み出すきっかけ。付き添い犬は、捜査員にとっても、証言を引き出す「大きな助け」となっています。
■毎年250頭が協会に 付き添い犬になれるのはわずか
付き添い犬になるには、2年にわたる特別な訓練が施されます。
訪ねたのは、「アンディ・シアン」。障害のある人を手助けする介助犬やセラピー犬、そして、オルコのような司法の付き添い犬などを育て、貸し出す協会です。
この日は、4頭の付き添い犬が訓練をしていました。
【アンディ・シアン 講師】「5歳の子どもが横に座っている時にタンデム(犬)が立ち上がると、犬の頭はこのように子どもの上になり、驚かせてしまうかもしれません。そのため、犬がすぐに(ソファから)降りることが大切です」
付き添い犬は、50を超える指令を身に着けていて、数時間もの間、じっと動かずにとどまることもできます。
こちらの協会では、毎年250頭ほどの子犬が加わりますが、2023年、「司法の付き添い犬」としてデビューしたのはわずか7頭でした。
【アンディ・シアン フロリアン・オフレさん】「(司法の付き添い犬は)特に共感力に優れた犬です。感受性が高く、人、特に子どもに寄り添う性格を持っています。人が感情的な時に、寄り添ってくれる自然の力を兼ね備えています」
導入から2023年までの5年間で、13頭の付き添い犬が活躍。大人も含め、1000人を超える被害者に寄り添ってきました。
フランスの法務省は、聞き取りの場だけでなく、国内の全ての裁判所にも付き添い犬を導入することを目指していて、毎年20頭ずつ、新たに加える予定です。
【ファニ・フルニエ検察官】「被告人も含めた関係者は、裁判所における被害者支援の取り組みを尊重していると思います」
被害者の気持ちに寄り添い、不安を和らげてくれる付き添い犬。
今後のさらなる活躍に、期待が高まります。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月25日放送)