郵便局が生き残りかけた“新サービス”となるか 山間部などで始まった“実証実験” 郵便配達の車が取り持つ「買い物と地域コミュニケーションの場」 2023年03月06日
身近な郵便局が、郵便局ならではのメリットを生かして、過疎地の買い物を支援する、新しい取り組みを行っています。
のどかな風景が広がる奈良市の山間部。7つの地区で成り立つこのエリアには、約1万人が暮らしていますが、ある問題が…
【住民たち】
「買い物は自分で運転して。片道30分くらいで往復1時間ですね」
「私、お仕事してるので、週に1回しか買い物にいけないんです」
みなさんが口にするのは“買い物”にかかる苦労。人口減少が進むこの地域にはスーパーが少なく、奈良市の中心部までは車で30分以上。気軽に買い物に行くことができないのです。
そんな悩みを解消しようと動き出したのが、郵便配達の車でした。
■“郵便配達の車”が買い物の悩みを解決?
今回行われたのは、日本郵便、奈良市、そして大型スーパーの「イオン」が手を組んだ実証実験。
利用者がイオンのネットスーパーで食品などを注文すると、郵便配達の車に乗せて、次の日には地域の決まった場所まで届けてくれます。これはもともと決まったルートを走っている配達車の、「余ったスペース」を効率的に活用するという初めての試みなんです。
■住民のみなさん スマホ片手に実験に集まりました
実証実験初日、地域の施設に集まった住民のみなさんがスマートフォンを片手に注文を始めました。
【住民たち】
「さあ注文しようぜ!」
「私お水。(Q.水?)うん、重たいから。こういうところで頼んだら楽かなって」
「あ、それいいんちゃう!私たまごとパンがない」
「あした、ヨーグルトほしいなと思って」
重たい水から、小さなヨーグルトまで、スマートフォン1つで買えちゃいます。注文できる商品は、消費期限が迫っているものでなければ、生鮮食品や総菜も対象です。イオンの商品はまず郵便局へ運ばれ、そのあと郵便局の車で地域に。
さらにこのサービスには買い物支援だけではない、もうひとつの狙いがあります。それは…
注文した商品が各家庭ではなく、地域の拠点に届くことで、住民が顔を合わせて、会話が生まれるのです。
【住民たち】
「食パンとギョーザの皮とニラとミンチを買いました」
「(今夜は)ギョーザですね」
「ちゃんとお肉はお肉で袋に入ってる」「あ、生肉とか?」「そうそうそう」
■「買い物」と「地域コミュニケーション」 “2つの狙い”
このサービスを考案した奈良市の光保さんは、
【奈良市市民部月ヶ瀬行政センター 光保謙治さん】
「地域の方がまず1つの場所に集まる、そういう空間が必要だということ。あと集まるのも楽しいだけの空間ではなくて、自分たちの生活が新たに何ができれば便利なのか、何ができないとこのまま不便になってしまうのかを考えるきっかけ、そういう空間にしてもらいたいなというのが、そもそものきっかけでして」
手応えは?
【奈良市市民部月ヶ瀬行政センター 光保謙治さん】
「働き盛りの世代、子育ての世代が、これからも生活できるようにしていくというのを一番目指していたので。きょう商品を購入いただいた方が、一番使っていただきたい地域のお母さん世代の方だったというのは、ある程度手応えだった」
第一号の商品を受け取った人は。
【利用した人】
「牛乳をいつもストック2本ぐらいしているのに、無くて『やばい』と思ったので、本当にきょう手に入って良かったです。保育園と小学校が(近くに)あるので、送迎帰りにちょうど4時半ぐらいに来られるので、利用していきたい」
(Q.車で片道30分かけて行くよりは?)「いやもう断然助かります」
今までは休日に往復1時間かけて街まで出て、まとめ買いするのが当たり前でしたが、「平日に食料品が手に入る」と大好評です。
【利用した人】
(Q.受け取り拠点まで?)「車で3分ぐらいです。今まで主人に『買ってきて』とか、奈良に出るので頼んでたんですけど、これからは注文ひとつで持ってきてくれるから助かります」
手紙を運ぶだけでなく、住民の“明日の食卓”にも役立つ“赤い配達車”。実験は3月22日まで行われ、結果をもとに実際のサービスとして運営するか、他のエリアに広げるかなどを検討するということです。
■“全国に広がるネットワーク”と“地域に根付く”強みを生かした取り組みで、存続かける「郵便局」
今回行われている実証実験の他にも、郵便局の強みを生かした取り組みが行われています。今、郵便局内の無人販売所が増えているんです。全国で約2万4000局のうち、3000局で無人販売が行われています。関西では150局あるということです。利用料金は、月額1100円から4400円で、生産者の方などに貸し出しているということです。
関西テレビ・神崎報道デスクは、「郵便局は全国津々浦々にあるのがポイントですが、郵便の取り扱いが減少していることなどがあり、約10年で600局近く減少しています。郵便物が減ってきているので、何か代わりのものを運ばないといけない。配達する人はいますし、配達車に空きスペースもある。そこで新しい事業を考えていく中で、食品スーパーと提携して、過疎地に食品を届けるという事業が考えられました。新しいものを届けて、郵便局を存続させたいという狙いもあるんです」と話しました。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月3日放送)