「難易度高い」チェコの万博パビリオン着工 受注側は「熱意を感じ、清水の舞台から飛び降りるつもりで」 建設業者が決まらない国には独自パビリオン「断念」呼びかけも 【大阪・関西万博は「間に合うのか」】 2024年05月18日
■チェコのパビリオンが着工 アートガラスを使った「難しい建築」に挑戦
5月15日、大阪・関西万博の会場となる夢洲で、チェコ共和国のパビリオン着工を前に「地鎮祭」が行われた。
チェコは、「タイプA」と呼ばれる参加国が独自で設計・建設するパビリオンを出展する。
自国の伝統的なアートガラスで覆われた、らせん構造のパビリオンを計画している。政府代表のオンドジェイ・ソシュカ氏は「専門的な技術が必要で、万博のパビリオンの中で最も難しい建築物なのではないか」と話す。
■「タイプA」は英語や現地語での入念な打ち合わせが必要
このように「タイプA」のパビリオンは、各国が個性を表現しようと独創的な外観のものが多い。そのこだわりを形にするには、建設業者との英語もしくは現地語での入念な打ち合わせや緻密なスケジュール調整が必要だ。
建設業者にとっては受注のハードルが高く、これが現在も「タイプA」出展国53か国のうち、14か国の建設業者が決まっていない大きな要因になっている。
■「せっかくなら携わりたい」という思いも
一方で、地元・大阪の建設業者からは「歴史に残る大阪で2度目の万博、せっかくなら携わりたい」という声も少なからず聞かれる。
チェコパビリオンを担当することになった、大末建設もその思いは同じだ。大末建設では、万博の案件を受注しようと3年ほど前に、社内に「万博担当チーム」を立ち上げた。
大末建設は当初、海外パビリオンについては大手ゼネコンとのジョイントベンチャー(JV)で受注できないか機会を探っていたという。
ただ、今回の万博では大手のゼネコンは大屋根や会場建設などを受注しており、海外パビリオンには手が回らない状態になっている。
大手ゼネコンとのJVは断念したものの、自社だけで請け負える国がないか9か国ほどと接触した。その結果、チェコが有力候補に挙がり、去年の11月ごろから交渉をスタート。先月ようやく契約に至った。
■チェコから職人も来る 熱意を感じ「清水の舞台から飛び降りるつもりで」
しかしなぜ、あえて建築物としての難易度の高いチェコパビリオンだったのか。
受注に至った背景について大末建設の村尾和則社長はこう話す。
【大末建設・村尾社長】「今から日本で設計して、資材を発注してパビリオンを作るとなると到底間に合わない。しかし、今回打ち合わせを続ける中で、ガラスや木材などの資材をチェコから運び、職人もチェコから来てもらえるということになった。工期が短く難易度が高い建築物だが、チェコからの熱意を感じたので、清水の舞台から飛び降りるつもりで、何としてでも間に合わせる」
チェコパビリオンのオンドジェイ・ソシュカ政府代表は、「大末建設が請け負ってくれることになり、本当に良かった。開幕までの時間が限られる中で、協力なくしては間に合わせることはできない」と話し、この“共同作業”に期待を寄せている。チェコパビリオンの完成目標の時期は「開幕までに」ということだ。
■独自のパビリオン建設の「断念」を呼び掛け
着工を迎える国がある一方、現在も建設業者が決まっていない国も少なくない。本当に間に合うのか…そんな心配が高まっている。
博覧会協会はそうした国に対し、独自のパビリオン建設を断念して簡易の施設を建設して引き渡す「タイプX」に変更することを呼びかけていて、幹部は「とにかく一刻も早く決断してほしい」と焦りをみせる。
万博開幕まであと11カ月足らず。その日は、刻一刻と近づいている。
(関西テレビ記者 沖田菜緒)