神社仏閣などの伝統建築を手がける大工さん、宮大工。
実は今この数が、減少しているそうなんです。
そんな状況をなんとかしようと、徒弟制度が当たり前の宮大工の世界で、
“養成塾”を始めた方が大阪にいらっしゃいまして、取材してきました。
なんと世界からも注目を集めているそうです。
向かったのは大阪の太子町です。
【新実キャスター】
「ここ?看板がありますね。宮大工養成塾。これですか。塾っていうことは、
めっちゃ怖い師匠みたいな人出てくるんですかね…
棟梁みたいな人出てくるんですかね(笑)
おはようございます、よろしくお願い致します。関西テレビの新実と申します」
【宮大工養成塾 塾頭 金田優さん】
「こんにちは初めまして、金田です」
【新実キャスター】
「金田さん。失礼ですが…塾生さんですか?」
【金田優さん】
「(笑)塾頭で」
【新実キャスター】
「塾頭!かしら!お若いですね?おいくつですか?」
【金田優さん】
「33ですね」
【新実キャスター】
「33でこの塾のトップでいらっしゃる?」
【金田優さん】「はい」
宮大工界の若き革命家、金田優(かなた・すぐる)さん。
自身も宮大工として活躍する一方、4年前宮大工養成塾を開設!
これまでに7人の宮大工を育ててきました。
そもそも宮大工とは、神社仏閣などの伝統建築を手がける大工さんのことなんですが…
【新実キャスター】
「やっぱり全体としては、職人さんの数っていうのは減っているんですか?」
【金田優さん】
「ずっと減ってきています」
【新実キャスター】
「ずっと下がってる?」
【金田優さん】
「まあ大体兼業で。住宅しながらとかやっている人も入れたら、
大体1000人くらいじゃないかなっていうぐらいですかね」
【新実キャスター】
「兼業の方入れて1000人ぐらいっていうイメージなんですか」
【金田優さん】
「専門で神社仏閣のみやっている人だったら、300人ぐらいかなっていうそんな感じですね」
宮大工に必要なのは神社仏閣だけにしか使われないような特殊な知識や技術。
例えば、緩やかに曲がったこんな屋根。普通の家では見かけませんよね?
【金田優さん】
「これぐらいの板なんですよ。板をこう…型をとって型通りに作り出すんですよ」
【新実キャスター】
「あ、曲げているんじゃないんですね?この形で削り出しているんですか?」
【金田優さん】
「そうなんです」
そしてこちらは“組木(くみき)”!
釘を使わずに木と木を繋げる、宮大工には必須の伝統技法です。
【新実キャスター】
「ビクともしないんですよ。すごいよな~」
まさに伝統に培われてきた匠の技!
習得するには、師匠について10年以上修行に励むのが一般的だというんですが、
なんとこちらでは3年で一人前に育てるんだそう。
その秘密は…
【金田優さん】
「全寮制でね、共に生活するっていうのが基本的なコンセプトで」
【新実キャスター】
「そうなんだ」
【金田優さん】
「生活しながら教えていくんですよね」
全寮制で技術や知識、さらには社会人としての心得まで、みっちり叩き込むんだそうです!
ちなみに起床は朝の5時。それでも2人の塾生さんがここで学んでいます。
【新実キャスター】
「厳しいですか?」
【谷村拓哉さん(34)】
「厳しいのは厳しいです」
【新実キャスター】
「宮大工になぜ興味を持たれたんですか?」
【谷村さん】
「もともとうちの実家も工務店で、最終的には実家に戻るような形で、その中で神社とかお寺を、
お寺とかあと蔵とかもうちの周りは多いんで、そんなのを建築するために
ここで修行をしてから実家に戻ろうという形で…」
【新実キャスター】
「最終的に実家に戻ってその神社、お寺も扱えるような大工さんになりたいと?」
【谷村さん】
「そうです」
【新実キャスター】
「そういうことなんですか」
もう一人は寮の部屋にいるというんですが…
【新実キャスター】
「いいんですか?めちゃめちゃ生活スペースですよ…よろしいですか?」
【声】「はい」
【金田優さん】
「ビシュラ?」
【新実キャスター】
「女性の声?おはようございます。海外の方?」
なんと宮大工の修行にトルコから来たというビシュラさん!
ロケ前日に入塾したばかりなんだそうです。
【新実キャスター】「寝るところと荷物置くとこだけでもう個人のスペースは…。ビックリした。え、なんであの宮大工の勉強をしようと思われたんですか?」
【ビシュラ・アジャさん(26)】
「私は建築科でした。そして…(英語)トルコではコンクリートの建物が多く
木を使うことがありません。木を上手に活用する日本の技術を学びたいんです」
【新実キャスター】
「(英語)もしここで学ぶなら毎朝早起きですよ。
そして毎日たくさん学ぶことがありますが大丈夫ですか?」
【ビシュラさん】
「I will try hard…ガンバリマース!」
【新実キャスター】
「海外の方に来て頂いてっていうのは金田さんとしてはどういう目的があるんですか?」
【金田優さん】
「まずはなんというんですかね、この固い保守的なところをゆるくしたい。
別に日本人である必要はないと思うんですよね、学ぶのがね。で、海外の人が学んで
広げていってもらったらいいでしょうし。海外の人って海を越えてやって来て、
なんとしてでもっていう気持ちがあるので、日本人がそれを見て、
じゃあ僕も勉強しなければいけないという相乗効果があります」
【新実キャスター】
「…谷村さんのことですね、それ。刺激になっていますか?」
【谷村さん】
「刺激になっています」
保守的な意識を変え、一人でも多くの人に魅力を伝えたい。
金田さんは体験イベントなども積極的に行っています。さらに!
女性アイドル「宮大工チャンネル!」
なんとアイドルをイメージキャラクターとして、宮大工の世界を体験する動画を作り
ユーチューブで配信しているんです。
【金田優さん】
「全く素人ですよね。素人が学ぶ、彼女たちが学んだことを
アウトプットしてもらうっていうのでアイドルを…」
【新実キャスター】
「宮大工界のインフルエンサーに?」
【金田優さん】
「そうですね、インフルエンサーですね」
【新実キャスター】
「なってもらおうと…。面白いこと考えますね!固定観念とかないんですか?金田さんの中には」
【金田優さん】
「まああるんですけど、あっちゃいかんなと、なるべく柔らか~く」
実は金田さん自身は伝統的な徒弟制度の中で育った宮大工。
しかし修行を経験した中で業界が抱えるある問題に気づきました。
【金田優さん】
「地方は過疎化とか、もうボロボロの神社仏閣が多くてですね、まぁほとんど人がいてないんですよね。経済的にも縮小しているし、そしたらこれを、建物を維持することができない」
業界が抱えていた人材とお金の問題。
これを一挙に解決しようと、金田さんが思いついたのが…
【金田優さん】
「宮大工になりたい子を集めてきて、宮大工になりたい子からお金をいただいて、
それでその資金を使って神社仏閣を再生すると。その代わり神社仏閣の方には、
若手宮大工が一緒にしますよっていうことが前提条件なんです。
この子たちは先に自分に投資しているんですよ。そのお金を神社仏閣に使うんだから
彼らにチャンスを与えてくださいねと、そういう一応スタンス」
【新実キャスター】
「へ~実践で学べるものっていうのは多いですか?」
【谷村さん】
「ああもう全然違います。緊張感も全然違いますから」
【新実キャスター】
「は~。お客さんも巻き込んで、みんなで若い力育てて、伝統産業守っていきましょうよっていう
プロジェクトにしちゃったわけですね?」
【金田優さん】
「そうです」
【新実キャスター】
「天才ですね?本当に」
こうして生まれた宮大工養成所!
しかし、金田さんが見据えるのはさらにその先です。
【金田優さん】
「独立してもらって、その独立した子は塾の仕組みもわかっている、体験しているじゃないですか。
経営的なノウハウもあるし。これをいろんなところでこう…」
【新実キャスター】
「全部を金田さんの傘下においた方が収益的には上がるような気がするんですけど、
それはもう別れちゃって、のれん分けでいいんですか?」
【金田優さん】
「大体は独立してライバルなんですよ。けどこれはね、業界的にホントよくないんですよ。
ひがみあって大体潰していくだけなんですよね。ビジネスのパートナーとして、独立しますね。
営業しました、(仕事が)なかなか取れません。じゃあうち忙しいですと。じゃあうちの仕事
してもいいよとやってもらう。これひとつね。」
【金田優さん】
「もう一つは営業しました。チャレンジして(仕事が)取れるようになってきました。
どんどん忙しくなってきてね。で、私たちはそんな忙しくなくなってきた。じゃあ仕事ね、
さしてもらえませんかっていう形で」
【新実キャスター】
「助け合えるっていうことですか?お客さんいないところに、いるところの人が譲り、
逆に譲られっていう」
【金田優さん】
「そうです」
【新実キャスター】
「そんなところまで描いているんですね」
【金田優さん】
「我々の技術はもう1400年でほぼ完成しているんですよ。っていうか
完成し尽くしているんですよね。これからの宮大工ね、平成令和の宮大工っていうのは
仕組みを作って普及させるっていうことが、我々のね、特に僕のね、役目なんじゃないかなと
思っているんですけど」
【新実キャスター】
「壮大なネットワークが張り巡らされるっていうのが目標な訳ですね」
【金田優さん】
「そうですそうです」
【新実キャスター】
「日本中、いや日本だけじゃないですね」
【金田優さん】
「世界です。グローバルに」
【新実キャスター】
「グローバルに!」
世界を見据える若き宮大工。夢に向かって走り続けています。
【新実キャスター】
「独身ですか?」
【金田優さん】
「いや結婚してます」
【新実キャスター】
「奥さんいるんですか?」
【金田優さん】
「はい。もう帰っていないですね。なんか行事の時は帰ってます。娘の誕生日とか…
七五三とか…それは帰ってます。ちゃんと」
【新実キャスター】
「住みこんでいるんですか、一緒に?大丈夫?」
【金田優さん】
「まぁまぁ最近は大丈夫です」
【新実キャスター】
「最近は…昔はどうやったんですか」
【金田優さん】
「もうね、長くやるっていうのはやっぱいいですよね。諦められるんですよ」
【新実キャスター】
「ご自身の働き方改革もちょっとばかし考えた方がいいかもしれないですね(笑)」