外国人観光客が増え、違法民泊などのトラブルが問題となっている中、
この春、台湾出身の男性が京都で民宿を始めました。
そこには一体どういう思いがあったのか?
日本人も学ぶべき、熱い思いを取材しました。
【新実キャスター】
「という事で、場所は本能寺跡のすぐ近く、こちらだそうですよ。素敵な古民家ですよね。」
【新実キャスター】
「よろしくお願い致します」
【林さん】
「私、リンと申します。台湾から参りました」
【新実キャスター】
「台湾の方でいらっしゃるんですか」
【林さん】
「狭い所なんですけど…」
【新実キャスター】
「自宅に招かれるときにおっしゃられるやつです、それ(笑)失礼します」
【林さん】
「築120年くらいの歴史がある」
【新実キャスター】
「120年ですか…」
町家を改装した古民家民宿。
柱などは約120年前のままだそうです。
ご主人は、台湾出身の林 光中(りん・こうちゅう)さん(50歳)。
同じく台湾出身の奥様は、現役の客室乗務員で、
休みの日に林さんのお手伝いをしているそうです。
台湾出身の林さんがなぜ日本で民宿を始めたのか。
経歴も気になりますが、ここで私、この宿一番の魅力をハッケンしました。
【新実キャスター】
「庭すごい!ちょっといいですか?」
【林さん】
「こちらから見ると、石の庭なんですが、そちら(左側)から見るとまた違う眺めになるんです」
【新実キャスター】
「どういうことですか?」
【林さん】
「ちょっとご案内致します。実はここ浴室なんですが、お風呂に入りながら日本の四季の花を楽しんで頂けるっていう、そういう造りになっております」
【新実キャスター】
「これは素晴らしいですね」
【林さん】
「紅葉、桜、あじさい、日本の四季を楽しんでいただければという」
【新実キャスター】
「常に何かのお花が」
【林さん】
「何かの花が咲くような」
台湾出身の林さんだからこそ気付いた、
日本の四季の魅力を最大限に活かしたお庭になっていました。
1日1組限定、純和風の空間に林さんが思う日本の魅力が詰め込まれています。
さらに…
【林さん】
「ここはテレビを置かないようにしている。なぜかというと、家族の会話の時間を増やしてあげたいなぁと思っているんですけれども。でも家内は違う意見で、ゲストはせっかく日本に来て頂いているんですから、日本のテレビ、色んな情報を見させた方がいいんじゃないかなっていう」
【新実キャスター】
「奥さん、おっしゃる通りだと思います」
【林さん】
「8チャンネルしか見させないように…!?」
【新実キャスター】
「そんなテレビないですけど(笑)」
時間を気にせず過ごしてもらいたいと、
時計も無くし、家族の会話を大切にする空間に。
そこにあるのは林さんのおもてなしの心です。
【新実キャスター】
「最初に日本に来られた経緯は?」
【林さん】
「東北にある東北福祉大学、そこに奨学金を頂いて、野球部に入ったんですけれども」
【新実キャスター】
「野球で来られたんですね!?」
【林さん】
「野球で入りました」
【新実キャスター】
「すごい選手だったんですね。じゃあ」
実は林さん、もともと台湾代表にも選ばれた野球選手。
およそ25年前、日本の野球を学びたいと来日しました。
しかし、怪我でプレーすることができなくなってしまったんです。
そんな時…
【林さん】
「ちょうど郭李もその時に大阪にいたんです。日本に来る前に代表チームで一緒にプレーしていました」
【新実キャスター】
「同世代でいらっしゃるんですか?」
【林さん】
「同じ年です。阪神の通訳が欠けていたので…」
【新実キャスター】
「阪神で通訳されていたんですか」
【林さん】
「そうです」
1990年代、阪神タイガースのブルペンを支えた、郭李さん。
林さんは球団関係者にスカウトされ、
通訳として阪神タイガースで働くことになったんです。
当時の貴重な映像がこちら!郭李さんの隣に若かりし頃の林さんが!
※当時の映像
【豊田アナ】
「昨日は初めての日本での勝利、おめでとうございました」
【林さん】
「(中国語)初めての日本での勝利、おめでとうございます」
【郭李さん】
「ありがとうございます」
阪神で通訳を勤めながら怪我を治し、台湾に戻ってプロ野球選手として活躍。
引退してからは、再び日本で球団スタッフとして長年働いたそうです。
しかし、そんな林さんがなぜ京都で民宿を営む事になったのでしょうか?
【林さん】
「阪神の時はちょこちょこ(京都に遊びに来ていた)。休みのある時に。京都の場合は、緑(新緑)でも、赤(紅葉)でも他の国より色の種類が倍あるんです。例えばカナダのメープル。すごく赤く見えるじゃないですか。でも京都の場合は同じ赤なんですけど、色の差がある」
【新実キャスター】
「グラデーションというか」
【林さん】
「はい、それを見た時の感動って言うのは京都にしかない。京都の雅を体験して頂くっていうか」
京都の雅に惹かれ、その美しさを広めたいという想いから、
空き家だった古民家を改装し民宿を始めた林さん。
しかし、外国人が民宿を始めるという事で、
最初はやはり、色眼鏡で見られていたそうで…
【新実キャスター】
「イメージでなんとなく嫌やわって最初は皆さん…?」
【林さん】
「逆に私も家の近くに見知らぬ外国人が来たら同じような気持ちになりますので、それだったらちゃんとした挨拶もして、ここの中に溶け込んでいけば、安心して頂けるっていう」
当時の様子を近所の方に伺うと…
【ご近所の男性】
「近所にそんなん出来るのは困るなって思っていたんですけど。例えば桜の木が前にあるんですけど、秋には一杯(葉が)落ちる。そこを綺麗に掃除したり、いろいろ町内に溶け込む為にやと思うけど、誠実で真面目な人やなってっていう。この方なら。もちろん話して見たら分かりますしね、人ってね。」
【新実キャスター】
「そうですよね」
地域の住民たちの不安を解消するため、
民宿の運営ルールは協定書としてまとめられています。
【ご近所の男性】
「一番問題にしたのは火事ですね。警報音を、鳴り響く音を出してもらうと。それから赤のランプも表につけて頂いて。この前一回試してみたんです。実際に周りの方集まって頂いて」
【新実キャスター】
「でもやっぱりそこまでやって頂くと良い関係にはなるわけですか?」
【ご近所の男性】
「そうですね」
他にも、緊急時のため林さんの携帯番号をみんなに知らせておくなど、
地域と真摯に向き合う林さんの姿勢が安心感につながっているのです。
そんな林さんの原点は、球団スタッフ時代に出会った、
闘将・星野仙一さんの姿勢にあると言います。
【新実キャスター】
「一番最初にしっかりと関わった日本人の1人でもありますよね。そういう意味で星野さんから受けた影響とか?」
【林さん】
「あらゆる可能性を想定して最高の仕事をする。いろんな努力を絶対惜しまない。そういうのもあって日本ではヘタなこと出来ないというようなことも」
【新実キャスター】
「星野さんの顔に泥は塗れない」
【林さん】
「そうですね」
【新実キャスター】
「スゴイですね」
撮影当日、台湾からのお友だちが泊まりに来ていました。
実は、現在宿泊できるのは林さんのお友だち限定。
本格オープンに向け意見を聞いているそうです。
【お客さん】
「幸せな感じ。一日このままここにいるのも全然OK。懸け橋としてもっと台湾人に日本の文化を紹介して。期待しています」
【新実キャスター】
「そうですよね」
人柄はもちろんなんですが、
林さんはプロ野球界で培った気配りや対応力を活かし、
“最高の仕事”を目指しています。
【林さん】
「安らぎも与えながら、日本のエネルギーのパワーを体験して頂いて」
【新実キャスター】
「今ここでやっているやり方がすごく教訓になるというか」
【林さん】
「京都があって翔縁居(しょうえんきょ)があると考えていますので、皆さんとの調和を一番大切にして、この場所を大切にしながら」
【新実キャスター】
「変わらずやって頂けたら日本平和になると思います」