ー淡路島・洲本市のとある海辺ー
新実アナ「いいですね、海。淡路島で塩づくりというのはあんまり聞いたことがないんですが…、すごい塩を作っている人がいるそうなんですよ。」
すると、浜辺から木造の建物が見えてきて…
『脱サラファクトリー』末澤輝之代表(38)「脱サラファクトリーの末澤と申します。(Q.ということは脱サラされて?)7年前からこの仕事しています、脱サラして。(Q.元々、淡路島のご出身ですか?)出身は神戸です。生まれ育った土地の近くで塩作りしたいと思っていたらココに行きつきました。」
神戸で、飲食店に勤めていた末澤さん。7年前に”脱サラ”して淡路島に移住し、塩づくりを始めました。末澤さんが作る塩は、関西のミシュラン掲載店でも使われるほどの人気。その仕事は、目の前に広がる播磨灘の海水をポンプでくみ上げるところから始まります。
末澤代表「原材料は海水のみです。」
汲み上げた海水は3日かけてじっくり濾過し、不純物を取り除いていきます。
末澤代表「それからコレ(自前の装置)で、洗濯物を乾かすようにして、水分を飛ばしている。網に海水を通すことで水分が広がって渇きやすくなるんです。」
新実アナ「網戸みたいな蛇腹を通る間に、水が飛んでいる。濃縮されて下に落ちていますが、何週も回すのですか?」
末澤代表「ずっとぐるぐる回っています。」
天日干しにしながら、濃度をおよそ3倍に高めます。この作業だけで、なんと2週間かかるそうです。
末澤代表「海の中には色んな成分がある。苦み、辛み、旨み。それを残そうと思うとこういうやり方なんです。」
新実アナ「純粋な塩だけじゃなくて、”海の恵み”が残った状態なんですね。この装置を作る大工さんとかいるんですか?」
末澤代表「いないです。仲のいい大工さんと一緒にホームセンターに行って材料を買ったりして造りました。(Q.総費用はいくらですか?)全部合わせると、家が1軒余裕で建つぐらい…。(Q.数千万円って?脱サラして?)頑張りました。」
いよいよ、濃縮した海水を薪で煮詰め、塩を抽出していきます。作業を手伝ってみましたが…
新実アナ「アツっ!予想以上に熱い!夏はめちゃくちゃアツいのでは?」
末澤代表「まさに地獄です。今が一番いいシーズンですね。一番いい時に取材に来て頂きました。」
旨みに繋がる海の成分をぎゅっと凝縮するため、薪で微妙な温度調整をしながら、じっくりじっくり。この作業は、なんと40時間かかるそうです。塩の結晶のようなものが出来上がってきました。
新実アナ「塩が作りたい!と思ったのは?」
末澤代表「ずっと飲食店やっていると食材自体に目がいく。食材に目がいくと、人体にも目がいく。人間は食べないと死んでしまう。水と塩がないと絶対ダメだ!ということにいきついてしまい、であれば”最高のモノ”を作って喜んでもらおうというのがスタート。もう塩作りしかない!と。(Q.結構、のめり込む性格ですか?)突き進むタイプですね。」
”自分が納得できる美味しい塩を”との思いで”脱サラ”をして、一念発起。塩づくりに適した場所を探し求めて各地を歩き、人が少なく海が綺麗な洲本市に移住したそうです。さらに、大分県に住む”塩の職人”に教えを受け、試行錯誤の上、塩づくりを始めました。
末澤代表「最初は作ったのはいいんですけど…、全然売れなかったです。(貯金などを)どんどん切り崩して、借金もあったりで…。今もちょっとありますけど、返済しながら。(Q.貯蓄されていたんですね?)お店をやりたかったので貯めていた。」
新実アナ「自分が独立するためのお金を充ていたんですね、すごいな…。」
これだけの工程を経ても、1度にとれる量は30kgほど。手間を惜しまず、海の恵みを凝縮した、こだわりの塩。
新実アナ「(塩を試食してみると)美味しい。味が濃い。しっかり残っています、色んな旨みが。品のあるお塩ですね。」
新実アナ「”脱サラ”のリスクとか考えなかったんですか?」
末澤代表「リスクは考えても仕方がないなと思って…、どう生きるかといういう問題だと思うので。」
新実アナ「会社組織でやっていると、息苦しさもある反面、(組織に)守ってもらっている部分もありますよね。」
末澤代表「自分が100%コレを作っているんだぞ!というのは、出来ないですよね。」
末澤さんが作る塩は、淡路島にある「道の駅」などでも販売しています。手作りならではの濃厚な旨みが口コミで人気を集め、売り上げは、前年比1・2倍のペースで伸びているということです。また、洲本で人気のお寿司屋さん「春吉」も、末澤さんが作る塩に魅了されたお店の一つです。
新実アナ「美味しそう!」
『春吉」店主・鎌田泰治さん「サワラ丼です。」
看板メニュー「サワラあぶり丼」。脂のノリが抜群の淡路島産のサワラに、末澤さんの塩をたっぷりとまぶし炙ることで、塩の旨みがサワラに溶け込みます。相性抜群です。
新実アナ「炙ったところが香ばしくて、まろやかな甘みのあるお塩が効いてますね。」
店主の鎌田さん「塩が抜けたような塩もたくさんあるけど、塩は塩らしく残っていて、荒っぽい感じが好きです。」
新実アナ「プロにしか分からない感覚ですね、どういうことですか?」
末澤代表「まぁ、美味しくなってるということかと、ははは…」
ご主人とは移住後すぐに知り合い、それ以来、末澤さんの塩を使ってくれているそうです。
新実アナ「会社勤めを辞めて塩作りをすることは…どう思われました?」
店主の鎌田さん「やけくそやな~と、普通にやけくそなんだと思った。それで、塩作るんかいな⁉っていう感じでした。だけども、他の所から来てくれて作ってくれたら、地元の人も使えるモノだったら使いたい。」
新実アナ「この心意気は嬉しいですね。」
末澤代表「めちゃくちゃうれしい。頭が上がらないです。」
末澤さん、破天荒な人生かと思いきや…、工場近くに家を借り、4年前に結婚した奥様と暮らしています。
新実アナ「将来の不安とか無かったですか?」
末澤さんの奥様「何とかしてくれそうな性格なので大丈夫かなと思って。」
新実アナ「お金の状況は二の次。いいですねお子さんもいて。」
末澤代表「家族と一緒に過ごせる時間があるのは幸せ。」
結婚以来、奥様にも手伝ってもらい、夫婦二人三脚で塩作りに励む末澤さん。
末澤代表「生きている実感、強烈に実感できるし中身の濃い時間を過ごせる。自分の思う事が出来て、人が喜んでくれているという実感もあるからじゃないですかね。将来的には時間ができれば、自分の納得のいくもの揃えてレストランを開いたりできたらいいかな。」