教会の外に飛び出しても感じる「孤独」 旧統一教会脱会後も続く呪縛 現役の宗教2世が語る現実 支援者は「社会と信者を断絶させない」と指摘 2022年12月26日
【鈴木みらいさん(仮名)】
「脱会してなかったら礼拝にも行かないとといけないし、献金も捧げないといけないし。脱会してよかった」
鈴木みらいさん(仮名)。7年前に脱会した、旧統一教会の2世です。
信仰に熱心な両親の元に生まれ、中学・高校と教会関連の学校に通い、2世信者の仲間とともに教義を信じて過ごしていましたが…
【鈴木みらいさん(仮名)】
「2012年に文鮮明が亡くなられて、そのときは信じ切っていたので霊界が変わると思った。メシアが霊界に行くから、霊界で亡くなった人が全員統一を信じて。その影響が現実世界に来て、統一教会の風当たりが緩くなるかなと思ったけどそんなこと全くなかった。そこが一番大きいターニングポイント」
脱会を決意したものの、葛藤がありました。
【鈴木みらいさん(仮名)】
「家族が壊れてしまうので、それを超えてまで脱会するのは本当に難しくて。 例えば子供が産まれても孫に合わせることが出来ないとか、そういう関係でい続けなければいけない」
これまで家族とは教会の行事以外出かけたことはなく、 青春時代を共に過ごした友人も2世ばかり。
教会の外に飛び出したものの「孤独」を感じる時も多く、 さらに、しみ込んだ教えは日常生活のあらゆる場面で影を落とします。
【鈴木みらいさん(仮名)】
「例えば、ちょっと大きい病気にかかって、しばらく身内が入院したってなると自分からサタンの世界に身を投げたことが、教会をやめたことが悪かったのかなと考えてしまう」
脱会後も続く「教会の呪縛」。ただ平穏に暮らしたいというささやかな願いさえ、脱会した2世信者には難しいのが現状です。
脱会後に出会った夫にも「悲しませたくない」と、こうした苦しみを打ち明けられないといいます。
鈴木さんのような2世は決して珍しくありません。 そんな信者を長年支え続けてきた人が滋賀県にいます。
瓜生崇さん。現在は寺の住職をしながら、様々な団体の信者の脱会支援活動を 17年間続けています。 瓜生さんが訴え続けるのは、「社会と信者を断絶させない」ということです。
【瓜生崇さん】
「僕はカルトとまでは言えないですけど、結構問題のある教団にずっといまして。そこやめたんですよね。辞めた時、自分は教団の中ではリーダー的な立場だったんですよ。そうなると教団の闇の面が見えてくる」
純粋に信仰を深めていたものの、瓜生さんは立場が上がったことで、 教義とはかけ離れた実態を目の当たりにし、さらに教団に苦しめられている人と出会ったことで脱会へとつながりました。
【瓜生崇さん】
「あのとき対話してくれた人たちがいたから、自分は抜けられたという思いがすごくあります」
経験を元に行う支援活動は反響を呼び、 住職である瓜生さんには、全国各地の寺院関係から講演の依頼が殺到しています。
【瓜生崇さん】
「中にいる人たちが外に相談できない、対話ができない、それが一番まずい状況なんです。自分は本当に正しいのだろうかという気持ちを僕らが持てるかどうかなんです。 我々は正しいけど、あんなカルトに入ってる人たちは間違っている。我々はまともだけどあんなカルトに入っている人はまともじゃない。こういう立ち位置に立つといくらでも彼らを攻撃してしまうことができる」
宗教へのバッシングを強める社会の風潮は、信者を孤独に追い込む危険があると瓜生さんは指摘します。
【瓜生崇さん】
「あいつらは邪悪な教団だから潰せ、みたいに世論はなりがちでしょう。それは絶対だめで、中にいる人たちの気持ちとかどうやって考えてそんなところに入ったのかとか。そういうものに寄り添って対話していくってめちゃめちゃ大事なんですよ。それがなくなったら、カルトってどこまでも暴走していくし、どんどんカルトになっていくんですよね」
現在の批判的な風潮について現役の信者はどう受け止めているのか。 韓国に住み、旧統一教会系の大学に通う現役2世信者、佐藤エミリさん(仮名)が 私たちの取材に答えてくれました。
【佐藤エミリさん(仮名)】
「悪いところは悪いところで正すのは大事だと思うんですけど、偏見とかであまり言わないで欲しい。宗教関係なしに人として1人1人をみてほしい」
現役信者ですが、教義には疑問を持っているといいます。
【佐藤エミリさん(仮名)】
「最初は純粋に教会とか大好きで行っていたけれど、大きくなるにつれて教えとかに、これは違うなとか教会に行ってる人にいやだなと思うことが多くなってきた」
彼女の目に他の信者はどう映っているのでしょうか。
【佐藤エミリさん(仮名)】
「同じ2世の人とかで あんまりたたかれているのを見たくないっていうので、情報とかを見ないようにしている人もいたり教会のほうでもあまり見ないでくださいって言われたりとかあったので、大学に宗教専門のが学科があって そこの人たちは特に結束力が強まってると思う」
2世信者というだけで批判の対象になり、 社会から孤立させられていると感じる場面も…
–:Qなぜ取材を受けてくれたのですか?
【佐藤エミリさん(仮名)】
「就活をしているときに(日本で)内定取り消しにあう人がすごく多くて。大学の名前調べたらわかっちゃうと思うんですけど 2世だとしても普通に生きたい人もいるのに基本な人権とか宗教の自由とかが侵害されているように感じて取材を受けました」
–:Q内定取り消しは事件以降?
【佐藤エミリさん(仮名)】
「そうですね。(一般企業に)入れないから教会系の2世の人が起業した会社に入る人が増えていて 」
–:Q(佐藤さんは)卒業後日本に戻ってくる?
【佐藤エミリさん(仮名)】
「(2世ということによる)就職難もあるんで海外しかないかな」
宗教に関係なく、1人の人間として見てほしいと切に願う彼女。
世間からの偏見を認めつつも、脱会までは考えていないというそのわけは…
【佐藤エミリさん(仮名)】
「家族と友達ですかね。私は教会の大学に行っているので友達は2世が多いですし。家族は自分のことを一生懸命病気になってまで育ててくれたので、家族を大事にしていきたい」
取材した谷口記者の解説です。
–Q:脱会したからと言って、苦しみが終わるわけではない現実をどのように考えますか?
【谷口文乃記者】
「今回取材した、元2世信者の鈴木さんは、脱会したことで家族や友人と疎遠になっています。日常生活の中で教団の教えを思い出すことがあり、心苦しくなることがあるといいます。脱会後に出会った夫には悲しませてしまうと思い、相談できない孤立感を抱えています」
–Q:取材した現役2世信者の佐藤さんも、教義には一部疑問に感じているけれど、抜ける選択はしていないのですね?
【谷口文乃記者】
「実際に会うと、明るくてどこにでもいる女子大学生の印象でした。高校生ぐらいの時から教団の教えに疑問を感じ始めていたということです。例えば、肌を見せない、男女を分ける、自由のない服装のルールなど違和感を覚えていたのですが、抜けるという選択肢をすると友人関係や家族とのつながりが切れてしまうことで、なかなか(脱会する)選択ができないと話していました」
–Q今後大事になることは何でしょうか?
【谷口文乃記者】
「必要なのは『否定ではなく対話』だと思いました。長年支援をしている瓜生さんも問題がある団体にいた方でした。外の人と話すことで団体の問題点や苦しんでいる人がいることに気づいたと話していました。『助けてあげる』という上から目線ではなく、宗教に頼らないと生きていけない方もいるんだと分かった上で、例えば友人などから『2世なんだよね』と言われたときに受け入れて、そのままの関係でい続ける。サポートを求められたときには手を差し伸べて挙げられる関係を気づいていかなければならないのかなと思いました」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月26日放送)