【京都発】ホテルの競争が激化 『温泉掘削』に活路を見いだす事業者 温泉で差別化を…関西ホテル界の巨人「ホテルニューアワジ」も参戦 2024年05月10日
観光地がにぎわう中、「京都」の中心部で、ひそかに「あるブーム」が起きています。
続々と増える京都観光の新たな“目玉”を取材しました。
■京都市の中心部で温泉掘削ラッシュ
京都は年間およそ4400万人が訪れる日本有数の観光地ですが、ここで今ひそかに注目されているのが…。
【記者リポート】「気持ちいい!実はこの温泉、京都のど真ん中にあるんです」
京都観光の新しい目玉。それは「温泉」です。
【観光客】「京都で温泉?あんまり…」
「スーパー銭湯しか思い浮かばない」
【観光客】「市内であると思わなかった」
「京都で風呂っていうイメージがなかったですね」
あまり認知されていない京都の温泉。外国人客も、京都には温泉を求めていないようです。
【オランダからの観光客】「来週から東京に行くので、その時に温泉で有名な日光に行こうと思っています」
【スイスからの観光客】「京都ではないんですけど、富士山のところで(温泉に)入って、とてもきれいでした」
■京都の中心部で温泉付きホテルが増加
これまでも京都市には、自然豊かな山あいを中心に温泉施設がありましたが、最近増えているのは中心部。この4年間で4カ所の温泉付きホテルが誕生しました。
観光客を温泉客として取り込もうと、掘削ラッシュが起きているのです。
京都市の中心、四条河原町にある「空庭テラス京都」。地下およそ1100メートルからくみ上げた温泉を、内風呂や大浴場で京都の街を一望しながら楽しめます。
ここでは2018年に温泉掘削に着手。しかし、オープンは2023年と、5年の月日がかかりました。
【空庭テラス京都 高見澤仁和 副総支配人】「800メートル掘って、900メートル掘って出ないとなった時にくじけそうな時があった」
「(湧いた時は)もうお祭り状態でした。『出た!』とみんな喜んだ」
数億円の費用がかかったという温泉の掘削。なぜそこまで力を入れたのでしょうか。
【空庭テラス京都 高見澤仁和 副総支配人】「あまり京都は温泉っていうイメージがなくて、神社仏閣が観光メインだったんですが、そこに温泉っていうプラスアルファが加わることで楽しんでいただけるのではないかなと。温泉ってキラーワードだと思っています」
■入湯税の全国ランキング 2022年度は全国16位に
京都ではインバウンド客が増える一方で、宿泊施設の競争が激化。各施設が温泉により、差別化を図ろうとしているのです。
さらに技術の進化で比較的、低予算・短期で温泉が掘削できるようになったことも追い風になっています。
こうした動きは、思わぬ効果も・・・。京都市は2011年から温泉施設の宿泊客に1人1泊150円を課す、「入湯税」を導入。
当初、入湯税収入の全国ランキングは圏外でしたが、2021年度に21位に。翌年度は1億5900万円の収入と全国16位になり、2023年度はトップ10入りが期待されています。
「まだまだ伸びしろがある」と話すのが、京都市の温泉をPRする協議会の岩井一路会長です。
【京都市温泉活性化協議会 岩井一路会長】「温泉目的で来られている方がどれくらいの割合があるのかということを考えると、まだまだ認知度は低いといえると思います。(京都の観光客のうち)2割から3割が宿泊していただいているわけですが、宿泊人口を増やしていくためにも、京都に温泉目的で来ていただけるような流れを作りたいのが、われわれの大きな目標」
岩井さんは京都で温泉のイメージを浸透させようと、自身が社長を務めるホテルである取り組みをしています。
【京都市温泉活性化協議会 岩井一路会長】「京都温泉の源泉がくみ上げられて、このお湯を3トン車に移し替えて、各地に運ばせていただいている」
これは、温泉を他のホテルでも利用してもらう「運び湯」。温泉に入ることができる施設を増やし、認知度を上げようという狙いです。
■関西ホテル業界の巨人「ホテルニューアワジ」も参戦
「京都×温泉」。この動きに参戦したのが、CMでおなじみの「ホテルニューアワジ」が手がける『坂のホテル京都』。
【ホテルニューアワジグループ 木下紘二副社長】「あちらが温泉掘削の場所になります。今は870メートルくらいまで掘れてまして、これから1000メートルまで最後の追い上げです」
もともと温泉はありませんでしたが、2023年から掘削を開始しました。今年の秋までに温泉を掘り当てる見込みで、グループ内の他の2カ所の京都のホテルにも提供します。
【ホテルニューアワジグループ 木下紘二副社長】「京都は観光地を巡るという旅行スタイルなので、おそらく脚や体がお疲れだと思うんですね。長くもっとたくさんの観光地を巡れるような、そのための温泉だと思います。京都に温泉というのは絶対に必要なアイテムの一つではないかな」
注目される新たな京都の観光資源。
【京都市温泉活性化協議会 岩井一路会長】「京都市内の底(地下)には琵琶湖と同じだけ(量)の水源があるといわれている。『京料理』という京都の食文化、舞妓さん芸妓さんがいる花街のおもてなしの文化、京都の温泉『京温泉』という定義で活動できれば」
文化の街・京都で温泉への熱が高まっています。
(関西テレビ「newsランナー」4月29日放送)