「地すべり」対策の超巨大プロジェクト 工事中に発見された“幻のトンネル” ここに来れば芸人は“すべり”対策ばっちり? 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年11月15日
1枚の写真から街を再発見!兵動大樹の今昔さんぽ
【兵動さん】
「大阪の柏原に来ています。柏原駅はJRと近鉄が乗り入れている。ぎりぎり大阪府で、ちょっと先に行けば奈良になるという所です」
■“つぶれかかった2本のトンネル”が写る古い写真
【兵動さん】
「今日の写真は…古そうやな。1932年の写真!そりゃ古いわ。すごいね」
これは1932年(昭和7年)に大阪府柏原市内で撮影された写真です。どこの風景なのでしょうか?
【兵動さん】
「トンネルが2つある。入れるような状態じゃないですね。つぶれている?昭和7年のトンネルなんて分かるのかなあ」
聞き込みを始めるとすぐ、街の人の口から「亀の瀬」「地すべり」というキーワードが出てきました。世界的にも有名なんだとか。
【街の人】
「(写真を見て)地すべりの所。亀の瀬。この間行ったやんな」
「行った、行った。婚活のなんか(イベントが)あって。たまたま見学コースにそれが入ってたんです」
【兵動さん】
「ええ人おった?」
【街の人】
「いや、なかなか…。(亀の瀬で)今度プロジェクションマッピングやるとか。トンネルかどこかで」
柏原駅から車で20分ほどの山の中にあるという「亀の瀬」。“地すべり”や“プロジェクションマッピング”とヒントがいろいろ出てきました。
■地元の人は写真を見て「地すべり」だと言う
【兵動さん】
「亀の瀬に行っても誰に聞いたらいいのか分からんし、道中で聞きながら行こか。歴史ありそうな酒屋さんやな。ちょっとよろしいですか。歴史ありそうな建物だな思って。何年ぐらいやってるお店なんですか?」
【酒のすぎもと店主 杉本清造さん】
「創業は江戸末期ぐらいかな。もとは造り酒屋ですけどね。造り酒屋は昭和46年ぐらいにやめたんです。(棚に置いてあるお酒は?)『錦虎(にしきとら)』いいまして、うちで昔から作っている銘柄です。今は『千代酒造』で作ってもらってるんです。酒の味、見はります?」
【兵動さん】
「そりゃ断る理由がないですね」
【杉本さんの奥さん】
「うちの息子が兵動さんの大ファンなんです。DVD全巻持ってるんです」
【兵動さん】
「オレのDVD全部あるやんか!うれしいな、11巻まで買ってくれてる。サイン書いとこ」
【兵動さん】
「そんで『錦虎』試飲させていただいて。香りがすごく上品。(じっくり味わって)あ~うまい。口入れたらものすごいまろやかで、グッと奥に入れたら一瞬だけ辛みが立つんやけど、飲み込むときはまろやかで飲みやすい」
さあ、エンジンがかかってきたところで、写真について聞いてみます。
【杉本清造さん】
「『亀の瀬』といいましてね、地すべりが起こってる地域なんですよ。有名です。王寺町(奈良県)と柏原市の境のとこなんですけど。資料館かなんかあった」
写真に迫るヒントを得て、いよいよ大和川の上流にある「亀の瀬」へ行きました。
■「地すべり資料室」で詳しく聞きます
【兵動さん】
「『亀の瀬 地すべり資料室』。入れてもらおう。番組でちょっと回らせてもらっている兵動です。『地すべり』って、どういうことなんですか?」
【大和川河川事務所 亀の瀬出張所 平松健所長】
「“すべる”というのは、主には地面が横に動く現象ですね。世界的に有名な点は、動く範囲です。東西、南北ともに約1キロ。広い範囲が全体として、大和川の流れをせき止めるように動く」
平松さんによると、「地すべり」とは硬い岩盤の上に積もった土が、境界に雨水が入り込むことで横にゆっくりと動く現象です。速い時には1日に50センチ程度も動くそうです。1931年(昭和6年)に起きた大きな地すべりでは、大和川がせき止められ、上流の奈良県側で水害が発生したそうです。
シミュレーションによると、大きな地すべりが起きて、大和川が高さ15メートルの土砂で塞がれた場合、奈良県側の広い範囲で街が水に漬かるとみられています。さらにたまった水がせき止めたダムのような土砂を押し流すと、大阪府側で被害が発生すると想定されています。
【兵動さん】
「これは対策しないとダメですね」
【平松さん】
「そうです。ここ(亀の瀬)で地面の動くのを止めてしまうしかない」
そこで“地面を止める”一大プロジェクトが行われたのです。地すべりしやすい地層を支えるため、まず直径3.5メートル・長さ40~70メートルの鉄筋コンクリート製のくいを、約100本打ち込んだそうです。
さらにもう少し大和川寄りの所に直径6.5メートルの柱を、地面の中に縦に100メートル、42本ずらっと並べて、全体で地すべりに抵抗しているということ。地すべりが最後に起きたのは昭和42年で、その後は対策されているので、大きくは動いていないといいます。
そんなビッグプロジェクトが進む中で、2008年、この写真のトンネルが見つかったそうです。
【平松さん】
「地面の中の水を抜き取る『排水トンネル』を作る工事がありまして、穴を掘っていたんです。そうすると、(写真の)トンネルの奥の方でそのまま残ってる所があって、そこにぶつかった」
かつて亀の瀬には、明治時代に作られた「旧大阪鉄道」のトンネルがありました。しかし、昭和6年の大きな地すべりによって崩壊し、人々の記憶からも次第に消えていきました。その一部が2008年、77年たって排水トンネルの工事中に偶然発見されたのです。
■トンネルに足を踏み入れた兵動さん「震えますね」
写真は地すべりで崩壊した鉄道の「亀の瀬トンネル」だと分かりました。一度は土に埋まってしまったものの、2008年に偶然発見された幻のトンネルを見せてもらうことになりました。
【兵動さん】
「なんか震えますね。明治のトンネル。めちゃくちゃきれいにレンガ積んでますよね」
【平松さん】
「上だけが黒い。当時走っていた蒸気機関車の煙突から、まともにすすが天井に当たっていた」
【兵動さん】
「ここで最近はプロジェクションマッピングやってるんですか?」
【平松さん】
「見たいですか?市役所の担当の方にお話ししてきます」
プロジェクションマッピングの担当者を呼んでもらい待っていると…
【柏原市 冨宅正浩市長】
「ようこそ柏原市へ!柏原市長の冨宅(ふけ)でございます。兵動さんが来てくれているというので、飛んできました」
【兵動さん】
「わざわざ市長が来てくれたの!」
ということで市長も一押しのプロジェクションマッピングがスタートしました。
【兵動さん】
「すごい臨場感。すごい回ってる。(蒸気機関車の映像が流れて)走っていたんやこれ。市長、すごかった。思っていた以上に」
【冨宅市長】
「柏原の象徴であり、日本の象徴でもあると僕は思っています。予約が殺到していますけど、無料ですし、ぜひみなさんに来ていただきたいと思います」
【兵動さん】
「この(トンネルの)中に入って見られるというのが、すごい経験になると思いますね」
最後に写真の撮影場所へ案内してもらいました。
【平松さん】
「このあたりにトンネルが2つあった形ですかね」
【兵動さん】
「ここですね。はいチーズ。地すべりしないように、私たちが分からないところで、ものすごい工事をやってくれていたんですね」
■「“すべらない”所です」「芸人は全員来なあきませんね」
【平松さん】
「すべらない所ですので、皆さんご興味を持って来ていただければと思います」
【兵動さん】
「“すべらない”ので芸人は全員来なあきませんね」
(関西テレビ「報道ランナー」 2023年2月17日放送)