中国の最も重要な会議の一つ「全国人民代表大会(全人代)」が5日に開幕し、今年の経済成長の目標などが発表されました。
専門家は、習近平一強体制が前面に出た大会だったと指摘しています。
今回の全人代「最終日の首相の会見がない」
【記者リポート】「習近平国家主席が会場に姿を現しました。まもなく全人代が開幕します」
全人代には各地方の代表、約3000人が集まり、習近平国家主席などの指導部が出席する中、李強首相が「政府活動報告」を読み上げました。
【中国 李 強首相】「中国式の現代化で強国建設と民族復興の偉業を推進する」
この中で李 強首相は今年の経済成長率の目標について、「5%前後」を掲げた一方、実現は容易ではないとの認識を示しました。
【中国 李 強首相】「今年の成長の主要目標としてGDPは5%前後とする。実現するのは容易ではない」
その上で、長期の特別国債を今後数年に渡って発行すると表明し、今年は日本円で20兆円あまりを発行する考えを示しました。
中国政治に詳しいジャーナリストの近藤大介さんは、今回の全人代には、ある異変が見られたといいます。
【講談社 現代ビジネス 編集次長 近藤大介さん】「非常にこぢんまりした究極のシャンシャン大会で、習近平一強体制がもうはっきりしていますので、議論したりすることが恐らくないんだろうと思うんです。そもそもこういう国会にあたる大会が必要ないのではないかと思うぐらい形骸化していたなと思います」
習近平一強体制で、「安全」を重視するあまり、活気が感じられないと指摘。
さらに…。
【講談社 現代ビジネス 編集次長 近藤大介さん】「これはちょっと衝撃を受けましたね。30数年見てますけれど、最終日の首相の会見がないというのは驚きですね」
全人代で、閉会後に毎年行われてきた首相の記者会見が、今年から行われないことに。 各国のメディアが首相に直接質問する機会がなくなりました。
【講談社 現代ビジネス 編集次長 近藤大介さん】「習近平執行部が恐れたのは外国メディアから、例えば失業率がもっと高いんじゃないかとか、GDPの達成は無理なんじゃないかとか、そういう質問が来るというのは一つあるんですけども。もう一つは、李強首相が余計なことを答えてしまうんではないかと、ここを懸念したと思う」
守りに入ったと指摘される中国。中国経済は停滞から抜け出せるのでしょうか。
■中国の経済低迷による日本への影響は?
5日に開幕した全人代で、李強首相は経済成長目標を5%としつつ、「実現は容易ではない」と発言しています。
景気の刺激策として、特別国債を日本円で20兆円発行するということになりましたが、中国の経済の低迷は深刻なようです。
大阪大学大学院の安田洋祐教授は、今後の中国経済をどのように見ているのでしょうか。
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「以前であれば7%、8%成長が当たり前の中国経済なので、5%と聞くと随分控えめな気がしますが、その5%ですら達成が難しいだろうと専門家は考えているようで、そのあたりが首相の『実現は容易ではない』という言葉からも、あらかじめハードルを下げていることが伺えますよね」
「特別国債に関しても、20兆円と聞くと大きいと思うんですが、中国のGDPって日本の4倍以上、2000兆円以上あるんですよ。なので1%弱に過ぎない。今、足元で中国経済に起きていることとして言われているのは、不動産価格が下がり、物価もデフレに突入していて、あたかも30年前の日本経済。バブル崩壊して、金融危機が来て、長期停滞に陥る道を辿っているんじゃないかということが深刻に懸念されています。そういう状況を考えると、GDPの1%に満たないような特別国債で、一体どうなるのか。個人的には、もう少し大幅なテコ入れが必要な気がします」
中国の経済低迷による日本への影響はどうなるのでしょうか?
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「いい面・悪い面があると思いますが、一ついい面かもしれないのが、足元で日本の株価が4万円超えて好調じゃないですか。その一因として、世界の投資家がアジアに投資する分があるんですけれども、中国経済の先行きが分からないので、中国に投じていたお金が代わりに日本に来ているのではといわれています。それが日本の株高につながっているのかもしれない」
「一方マイナス面は、中国経済がこのまま不況が深刻化してしまうようなことがあると、習近平国家主席だったりとか共産党本部は、経済の低迷から目をそらすために、外交・政治面で、あまり嬉しくないことを始めるかもしれない。台湾との関係もそうですし、反日運動が高まったり。そういった影響が及ぶ危険性は当然あります」
経済面、安全保障の面でも、今後の中国の動きに注視していく必要があります。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月5日放送)