用もないけど“つながっている” 「常時接続」がZ世代の当たり前 位置情報の共有で待ち合わせ 「放課後のたまり場」もSNSの中に つながる息苦しさを感じない理由は… 2022年11月10日
位置情報のリアルタイム共有や、音声通話のエンドレス接続など、Z世代では「つながり続ける」ことが当たり前になっているそうです。
「つながり」の今を取材しました。
■“気配の察知”で無駄を省く Z世代の知恵
今、若い世代がこぞって使っているアプリがあります。
位置情報共有アプリの「zenly(ゼンリー)」。今どこにいるのか、友人や恋人と位置情報をリアルタイムで共有することができるアプリです。
zenlyはどのように利用されているのか、若者たちに聞きました。
【20代】
「連絡取れないときに、『今仕事行ってる』とかパッと見たときに分かるので。『今家にいたら連絡しよう』とか」
「大学とかにおったら一緒にご飯食べようとか」
【10代】
「集合が楽です、待ち合わせの合流が」
「友達との待ち合わせとかでよく使いますね」
多くの人がzenlyの活用法として挙げたのが、「待ち合わせ」。そこで、高校生の来夢(らいむ)さんに、普段通りの待ち合わせを見せてもらいました。
――Q:梅田のどこに集合?
【来夢さん】
「まだ決まってなくて…zenly見ながら決めようかなって」
普段から、集合場所は細かく決めないという来夢さん。
【来夢さん】
「もう家を出て、たぶん電車乗ってますね」
友人が予定通り向かっていることを確認してから、自分も電車へ乗り込みます。
【来夢さん】
「もう近くにいますね、だいぶ」
梅田に着いても連絡はせず、位置情報だけを見て友人のところへ向かいます。
【来夢さん】
「おった!おはよ~」
無事、集合できました。でも、どうして最初から集合場所を決めておかないのでしょうか?
【来夢さんの友人】
「(相手が)遅れちゃったときとかにずっと同じ場所で待つのもしんどいので、ちょろちょろ変えて移動してるときに、『今ここで待っとくね』って感じ」
「連絡を入れなくていいってところで便利さがある」
わざわざ聞かなくても、相手の状況を察することができる。これが、zenlyが若者に受け入れられている理由の1つといえそうです。
「位置情報共有アプリ」の流行の背景には、対人関係にも“効率”を求めるZ世代の特徴が表れていると専門家は指摘します。
【博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 森永真弓 上席研究員】
「『これからちょっとお茶しに行くんだけど一緒に行かない?』『ごめん、無理』っていうやり取りが、タイムパフォーマンスが悪いわけです。コミュニケーションストレスを減らしたい、断られたくないんですよ。で、次は相手に断りたくない…ってなると、お互いに位置情報とかSNSの履歴確認で気配を察知し合っていれば、『無駄なときに話しかけてごめんね』とか言い合うことを減らせるっていう。割と『知恵』に近いです」
人気のzenlyですが、「近い将来サービスを終了する」と発表していて、ネット上には惜しむ声があふれているそうです。
■ルームシェア感覚の「常時接続」
美容師の小島健太郎さん(24)は、仕事を終えて家に帰ると、地元の友人とLINEでグループ通話をするのが日課だといいます。
【健太郎さんの友人】
「ケンちゃん正月帰ってこれるってこと?」
【健太郎さん】
「31日に帰れると思うで」
一見、家の固定電話やガラケーを使って友人と連絡を取り合った、一昔前の光景と変わらないように見えますが、テレビを見るときも、通販サイトを眺めるときも、マンガを読むときも…健太郎さんが会話に参加しない時間が続きます。
【健太郎さんの友人】
「ケンちゃん電波悪くない?」
【健太郎さん】
「ごめん、マンガ読んどるから」
【健太郎さんの友人】
「僕もマンガ読んどる」
さらには、入浴中もドライヤーで髪を乾かしている間も、グループ通話はつないだままでした。健太郎さんの友人も、自分のペースで好きなことをしているので、無言の時間が気にならないそうです。
しかし、長時間にわたって通話をつなぎ続けることに、意味はあるのでしょうか?
【健太郎さん】
「まあないですけど…でも、別に理由なく友達と集まるじゃないですか。それに近い感じかな。ルームシェアしてる家に帰ったみたいな感じです」
特に用事もないのに、誰かとつながり続ける。SNSへの「常時接続」が、若い人たちの間では当たり前になっているのです。
街で話を聞いてみても…
【10代】
「毎日家に帰ったらつないで、次の日の朝迎えて、学校行って帰ってきたらつないで…」
「勉強しながらつないだりとか。しゃべりながら一緒に勉強してる」
「暗記科目の問題出し合ったりとか」
【20代】
「寝るときに一緒に電話つなげて寝たりとか。お泊り会を遠隔でやってるみたいな感じ」
【40代】
「(娘を)朝起こしに行ったら相手の声が聞こえてるとか、寝てるのに。相手のいびきが聞こえてるとか…」
【10代】
「相手の物音とかでも安心感を感じる。一緒に過ごしてる感じがする」
――Q:つながれなくなったら?
「生きれないです」
■ボイスチェンジや音声読み上げも 広がる機能
そんな「つながり続けたい若者」をターゲットに、“オンラインたまり場”といったサービスも登場しています。
ボイスチャットアプリの「パラレル」では、承認し合った人たちでつくるトークルームで通話ができます。 スマホでゲームや動画を共有しながら会話できるのが特徴で、利用者の7割はZ世代です。
オンラインゲームが趣味という大学生の「りーちゃん」さん。週に3日はオンライン上の友人と通話しながらゲームを楽しんでいて、最近ではリアルな友人や彼氏ともパラレルを使っているそうです。
【りーちゃんさん】
「みんな横にいる感じで、通話で楽しんでゲームしてます」
【りーちゃんさんの友人】
『その場にいる感じでわいわい楽しくできるんで』
スマホから流れる、りーちゃんさんの友人の声。少し違和感があるような…
【りーちゃんさん】
「オンラインゲームで出会った友達で、自分の声を出したくないって方もいて、ボイスチェンジしてみんなで通話しています」
他にもパラレルには、伝えたいことを文章で入力すると、音声で読み上げてくれる機能などもあります。
【りーちゃんさん】
「お風呂とかトイレ、電車だったり、自分は読み上げ機能を使って、相手は話して電話をしてます」
――Q:そこまでやるんですか?
「切っちゃったら話に途中から入れなくて、『全部聞けへんかった』って…」
息苦しさを感じそうですが…若い世代はなぜ、「つながり続ける生活」に抵抗がないのでしょうか。
【博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 森永真弓 上席研究員】
「物心ついた頃から(インターネットに)触れている若い人たちと、いちいち『インターネットにアクセスする』っていうボタンを押さないと接続できなかった世代には、感覚の違いがやっぱり大いにありますね。学校終わってコンビニ行って、コンビニの前でジュースとかパンとか食べながら座り込んでしゃべってる高校生たちがいます。ネットでやった方がお互い楽ですよね。自分たちが集まってしゃべるための会話の場として、一番ふさわしい場をネットだと思っただけの話ですね」
■安全のために
若い世代に人気の、位置情報共有や常時接続のためのアプリ。安全に利用するための注意点を、専門家に聞きました。
SNSや情報リテラシー教育に詳しい成蹊大学の高橋暁子客員教授は、位置情報共有アプリについて「ストーカー被害につながることもあるので信頼できる人以外に自分の位置を公開しないように」と警鐘を鳴らします。
また、音声通話アプリは「(文面だけのやり取りより)親近感を持ちやすく、個人情報を伝えてしまうリスクが高い。知らない人と話すリスクをきちんと分かっておいてほしい」ということです。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月10日放送)