今、インスタグラムで話題なのが、「手書き」を発信する投稿。
「#手書きツイート」で検索すると、その数68万件以上。
自分の書いた「手書き」の文字をテロップにした、動画や写真も人気です。
街で、10代・20代の若者たちに聞いてみると…
「結構文字書くのも好きだけど、最近書くことないから書いて投稿するっていう」
「自分の色とか個性を出せるのからいいのかなと」
「他の人とは違うようなこと、新しいことをやってみたいというか…」
「感情が伝わってくるというか、そんな感じがします」
「文字だけで感情とかを伝えられるのってすごい。個人個人の表現の仕方とかが出てくるのがすてきだなって思います」
デジタル世代にとっては、手書きの“感情が伝わる”ところが、逆に新しく、個性を感じるそう。
そんな若者たちの間で、今バズっているのが…
【吉原功兼アナウンサー】
「いい雰囲気の文房具屋さんですね、子どもの頃に行ってた文房具屋さんと違う」
■白紙から作る「手作り手帳」で得る自由
大阪・福島区の商店街の一角に店を構える、創業96年の「和気文具」。
週に4日しか営業していないこのお店が、今、手書きの魅力を広めています。
こちらのお店の人気商品が…
【和気文具 スタッフ 今田里美さん】
「私が作った『手作り手帳』です」
【吉原アナ】
「かわいいー!」
【今田さん】
「これは、1年を表す漢字ってありますよね?それの1日バージョン」
【吉原アナ】
「これは振り返ったときに書くもの?」
【今田さん】
「そうです。ライフログみたいな使い方とか、その日にあったことを後で書くっていう」
白紙のノートに1から線を引き、自分好みの項目を自由につくる「手作り手帳」。
健康状態のチェックリストや、仕事の内容、食べたものの記録など、スケジュール帳でもありながら日記帳のようなイメージです。
店員の今田里美さんは、インスタグラムでこの「手作り手帳」の作り方や、手帳の整理術などを発信したところ、今やフォロワーが19万人に届く勢いだそう。
人気が高じて、これまでに3冊の本も出版したんです。
さっそく、吉原アナも手作り手帳に初挑戦しました!
【吉原アナ】
「実際に何もないところから手帳を作るんですか?」
【今田さん】
「そうなんですよ。結構ハードル高いと思うんで…」
何から手を付ければいいか分からない…そんな初心者にぴったりなのが、今田さんが作ったグッズ。
溝に合わせて線を引くと、あっという間にスケジュールの枠線を作ることができるんです!
【吉原アナ】
「楽しい、楽しい。没頭できますよね…かわいい、自分で言うのもなんですけど自己肯定感上がる」
【来店した人】
「デジタルはただ単に文字を打つだけだけど、手書きは自分のスタイルが出せるし、より自分自身を表現できる」
「書いていって、かわいい・きれいってそれだけで気持ちがアップするものだと思うので、そういうところでも(生活の)質が上がると思います」
手作り手帳なら、自分の都合のいい日付・曜日からスタートできます。
自分好みの「TO DOリスト」を盛り込むのもおススメだそうです。
吉原アナの「手作り手帳」も、なかなか上手にできました。
【吉原アナ】
「いろんな予定を書き出して頭の中の整理ができましたし、一つ一つの予定をやることが楽しくなりそうです」
【今田さん】
「なんか書いていると自由さを感じませんでした?」
【吉原アナ】
「自由感じました」
【今田さん】
「飾っているその時その瞬間って自分だけのものというか、うまくいかないことも多いけど、ここだけは自分の思い通りにできる。書くことで生活を楽しむ余裕を感じる」
■企業から依頼殺到 板書のプロ
「突然なんですが、こちらのパソコンにある映像を見て板書していただきたいんです」と、吉原アナが突然ディレクターから見せられたのは、「日本でマスクがいつ外せるか?」を海外の事例を挙げて解説した報道ランナーのVTRです。
【吉原アナ】
「早すぎるよ!書けない…。全然整理されてないし自分で見てもよく分からない」
これがなかなか難しいんです。
でも、板書のスペシャリストの手にかかると…
【吉原アナ】
「なんかストーリー仕立てみたいになってる!鮮やか!漫画みたい!」
手書きならぬ手描きの、新しい「板書」。
その名もグラフィック・ファシリテーション。
山田夏子さんは、950以上の企業などから板書を依頼される「板書のプロ」なんです。
一体どんな技法かというと…
【しごと総合研究所 山田夏子さん】
「人間っていきなり言語化してすっと出てくるのじゃなくて、イメージとかニュアンスをみんなで紡ぎながら最終的にそれを言葉や何かの形にしていくので。声のトーンを聞いて場の雰囲気を見ながら意欲的に話してもらうために、ちょっとポップに変えています」
【吉原アナ】
「よく分かります。正直文字がいっぱい並ぶと見る気なくなるんですよね。能動的に言葉が出そうな板書になっていますよね」
■感情を絵にすることで考えを具体化
山田さんが大事にしているのは、情報だけでなく「感情」や「思い」を積極的に絵にすること。
情報だけの板書より親近感がわき、会議の内容が自分事になっていくんです。
参加しづらいリモートでの会議は “板書のアシスト”がより効果的だそう。
さらに、心のモヤモヤを整理することにもつながるようで…
吉原アナのモヤモヤを、板書してもらうことにしました。
【吉原アナ】
「なんかこう尊敬されるパパになりたいなって思うんですけど、あんまり面倒も見られなくて…」
吉原アナの不満、それはパパとしての役割。
娘の宿題も、虫取りにもつきあってあげられず。挙句の果てに、運動会の席取りでは他のパパに先を越されてしまい…
【吉原アナ】
「僕は7時半に行って『やったー!』て思ってたら、みなさん並んでいて意識が全然違うって思って。他のお父さんと比較して“パパ偏差値”の低さを感じました」
吉原アナが、日頃のモヤモヤを語ること数分。
できあがった板書には、運動会の席取りの話が印象的に描かれています。
【山田さん】
「この話をしているときは結構力強かったんですよ」
【吉原アナ】
「これがね、大きくて…」
【山田さん】
「衝撃的だったんですよね、そこが他のお父さんと比べて、『あーなんだできてなかったんじゃないか』っていうショック感なのか」
【吉原アナ】
「他のお父さんすごいな~って思って」
【山田さん】
「大事なのは、娘さんにとってそれが本当に尊敬できることなのか?」
【吉原アナ】
「確かに…娘からは、『席取り朝5時半に並んで』は言われてないんですよ。僕の中で勝手に『席取りが他のパパたちと比べて遅くなっている』って思っているだけで。そっか、こうやって書くことによってこの人の気持ちに寄り添うことができるんだ」
板書してもらうと、人と比較して、自分の父親像を模索しているのがよく分かりました。
こうやって言葉にならない感情を描いてもらえると、進みたい方向や考えを客観的に見ることができるんです。
山田さんが絵を描くにあたって大事にしているのが顔の表情。
なかでも眉毛を強調すると、より違いが出るそうで、他にも…
【山田さん】
「例えば楽しそうな話はワクワクした囲みに入れるとか、悲しい話は斜線の中に入れるとか。囲みの表情だけでも感情って出るので。コミュニケーションってエネルギーを起こすことなんですよ」
【吉原アナ】
「一番大事なことを忘れてたなというか、やっぱ心だなって。手書きはやっぱり心がないと」
【山田さん】
「情報を端的にシンプルに交換するだけだったら、デジタルでできる。手描きにするっていうのは、人が人の話を、気持ちを開いて感じ取って『ああ悔しかったんですね』とか『うれしかったんですね』って受け取ることが本当のコミュニケーション。本来のコミュニケーションに戻したいなって思って手書きをしているっていうところですね」
【吉原アナ】
「僕も娘に『パパ好き』って言われたいので、その第一歩だと思ってちゃんと娘の話を一生懸命聞いて書こうと思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月22日放送)