およそ1年前 瀕死の状態で見つかったアカウミガメ。
片方の前足を失いながら神戸で見せた自然の生命力。
海に帰るまでの日々を追いました。
■瀕死のアカウミガメ、壊死していた右前足は切断せざるを得ず
先日、故郷の日本海へと帰っていったウミガメがいます。
実はこのウミガメは2020年8月、島根県の隠岐の島で瀕死のアカウミガメが保護されました。
右前足は壊死していたため切断せざるを得ない状況でした
生きる希望を託して「リブ」と名付けられました。
島の人たちの支えで少しずつ元気を取り戻したリブ。
いずれは海に返すために本格的な治療が必要と、命のバトンを託されたのが、神戸市の須磨海浜水族園です。
須磨海浜水族園では、精密検査も実施。
通常より多くエサを与え治療にあたりました。
しかし、そもそも何故、リブにここまでの治療が必要になったのか・・・
リブの右足に絡まっていたのは、捨てられた網。
また、フンからはプラスチックのゴミなどが見つかりました。
世界全体で海に流れ出ているとされるプラスチックごみは1年間で少なくとも800万トン。
このままだと2050年までに、海の中のプラスチックごみの重さは、すべての魚の重さを超えることになります。
リブが見つかった海岸にも、たくさんのゴミが打ち上げられていました。
■再び泳げるようになるために… 足を失ったリブと水族館スタッフの取り組み
須磨海浜水族園のスタッフがリブを持ち上げ運びます
「せーの」「痛っ」「噛まれた」
栄養状態がよくなった上で、海に返るためには、足を失った状態で泳ぐという大きな課題がありました。
通常、ウミガメは前の両足を使って泳ぎます。
前の足が1本なくなってしまったリブは、左の前足と右の後ろ足を懸命に動かしていました。
【須磨海浜水族園 磯部雄太さん】
「リブ自身が片手が無いことを理解して行動を変化させている。普段ウミガメではあまりみられない行動」
~ことし1月~
自ら独自の泳ぎ方を習得し、深い水槽でも泳げるようになりました。
~ことし7月~
最終関門は、“自然の海”でのリハビリです。
泳ぎや餌を自分でとることができるのかを確認するため、5日間、人口の浅い海に放されました。
雨が降った最終日。
水が濁った上、リブは自由に泳ぎまわり、水族館の職員もなかなか見つかけられませんでしたが…
「いた」「捕まえた」
リブには、しっかりと野生の強さが戻っていました。
【磯部雄太さん】
「めっちゃ元気です」
「海への放流に向けて最終の調整に入っていけたらと思う」「ようやったなと思います。ほんまに」
これで海に帰れます。
■リブはふるさとの日本海へ…
別れが近づく中、須磨水族園は、深刻化する海洋ゴミの問題を知って欲しいとリブを一般客に公開しました。
【水族館の来園者は…】
「足がないね」
「あっ、ほんとだ」
「腕がなくなった経緯も今聞いて初めて知ったので、環境の問題を考えないといけないと思った」
「私達が出すゴミで動物たちが傷つくことを知るきっかけになるので、すごい大事だと思います」
~ことし7月~
保護されてから約1年、リブが隠岐の島に戻ってきました。
【須磨海浜水族園 磯部雄太さん】
「いよいよですね、あとはリブ自身に頑張ってもらって、厳しい自然ですけど、生き残ってもらうしかないかなと思っています」
「リブ 頑張ってー」
リブを乗せた船が沖へと向かいます
海岸から数キロ離れた場所に到着、別れの時です。
リブは必死に海に泳ぎ出ようともがきます。
「頑張って、頑張って」
ついにリブが海へと泳ぎ出しました。
泳ぎ始めてからおよそ20分間。
リブは、何度も何度も海面から顔を出しました。
人間によって命を失いかけ、人間によって救われたリブ。
再び大海原へと帰っていきました。
(報道ランナー2021年8月9日放送)