2011年8月6日(土)午前 10:50~11:45

生き直し ~ある出所者の700日~

語り

小島 聖

企画意図

罪を犯した者が服役する刑務所。そこでは過ちを繰り返させないために、さまざまな矯正処遇が施されています。しかし、日本では出所したにも関わらず、5年以内に再び刑務所に戻ってきてしまうケースが実に4割を超えます。なぜ再び犯罪に手を染めてしまうのか。それは服役後に就職先がなく、社会復帰を果たせないということが最大の原因だと言われています。そうした厳しい状況の中で、どうすれば順調に更生の道を歩むことができるのか?
関西テレビでは、ある男性の服役中から出所後の姿を、2009年7月から取材しました。

番組内容

4年前、日本初の官民協働の刑務所として開設された山口県の美祢社会復帰促進センター。ここで服役していた佐藤雄介さん(仮名・30)は、2007年8月にホームセンターでテレビを盗み、逮捕されました。当時、別の窃盗事件で執行猶予中の身だったことから、懲役2年10ヵ月の実刑判決を受け、刑務所に入りました。
更生を誓いながらも、出所後どのように生計を立てていけばいいかと不安を感じていた佐藤さん。そんな時、大阪のお好み焼き「千房」が、刑務所の中で受刑者の就職面接を行い、出所後に採用しようと募集をかけてきたのです。全国展開している企業として初めての試みでした。
佐藤さんは、これを自分の「生き直し」のチャンスだと感じ、面接に臨みました。両親がいないこと、過去に犯した過ち、今の思い…1時間半に及んだ面接は、自分の半生を見つめ直す作業でもありました。そして千房の中井政嗣社長は、「過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる。チャンスを与えてあげよう」と採用を決めてくれたのです。店長候補としての採用でした。

働き口だけでなく、住む家や当面の生活費を与えてもらった佐藤さん。
6か月の刑期を残し、おととし12月、仮釈放されました。出所の翌日から店頭に立ち、多くの従業員に支えられながら、生まれて初めて働くことの喜びを感じることができた佐藤さんは、半年後、無事、刑期満了の日を迎えました。犯した罪は一生消えませんが、真面目に働き社会に貢献することが、被害者に対する償いになると考えています。
そしてことし1月、佐藤さんが働く店に、少年院から仮退院した少年(当時19)が新たに入ってきました。働く佐藤さんの姿を通して、この取り組みの意義を確信した中井社長が、今度は少年院へと、採用の輪を広げたのです。
出所後に学んだ、社会でまっとうに生きていくための心構えを、同じく不遇な家庭環境に育ち、犯罪に走った少年にどのように伝えていくのか。犯罪者が再び道を踏み外さないために、社会はどうあるべきなのか。この取り組みを見つめることで考えたいと思います。

スタッフ

撮影:田中秀尚(関西テレビ報道映像部)
撮影助手:満木寿夫(エキスプレス)
編集:中山純一(NEW)
MA:中川和哉
効果:中嶋泰成(テレコープ)
ディレクター:中桐景子(関西テレビ報道番組部)
プロデューサー:土井聡夫(関西テレビ報道番組部)