2004年4月29日(木)

その投手陣の中に、嶋尾康史(しまおやすひと)がいた…。

高校卒業後はドラフト2位で阪神入り。嶋尾は、190センチメートルの長身から投げ下ろす速球を武器に、先発、中継ぎ、押さえと何でもこなせる右の本格派投手となっていった。

ボールはもう握れなくなっていた。
97年、嶋尾は阪神球団を退団する。
嶋尾投手が選んだ第2の人生は役者だった。野球解説の道もあったが、志半ばで野球をやめた自分が『今精一杯頑張っている選手たちを解説する資格があるだろうか』
彼らしい信念に従った行動だったが、芸能界はそんなに甘いものではない。野球エリートとして何不自由ない優雅な生活を送っていた嶋尾は、収入ゼロに等しい生活を余儀なくされる。初めて経験する苦しい生活。

もがきながらも前に進む嶋尾。葛藤しながらも歩を進めてきた嶋尾の努力と信念が少しずつ実を結び始め、徐々に仕事も増えてきた。一世を風靡した人気ドラマ「やまとなでしこ」にも出演。世間にも認められ始めたのだ。
しかし嶋尾の中にいつもどこか野球を引きずっている自分がいた。そんな時、嶋尾に映画の話が舞い込んでくる。
その映画は、阪神タイガースを題材にした「ミスタールーキー」。嶋尾の役は、阪神タイガースの選手だった。野球に関するものをすべて遠ざけてきた嶋尾は…。
嶋尾投手の栄光と挫折、常人には計り知れない葛藤と本当の姿を追っていくドキュメンタリー。