ザ・ドキュメント

2015年9月19日(土)深夜1:35~2:30
(※9月20日(日)午前1:35~2:30のことです。)

内容

厚労省の試算によると、10年後の2025年、全国の認知症患者数は700万人を超える。65歳以上の5人に1人が認知症になる計算だ。かつて人は認知症の進行とともに記憶を失い、話すことができなくなった高齢者は感情を無くすと考えられていた。
最新の研究では症状が進んでも感情は死の間際まで残ることがわかってきている。しかし多くの介護施設職員の待遇は十分ではなく人手不足は深刻で、感情が置き去りにされる事も多い。
一方で、そんな介護の現場で「バリデーション」に取り組む事例が増えている。バリデーションとは認知症の治療法ではなく、認知症患者とのコミュニケーション法だ。

認知症患者にとって、自分の大切な人の事、そして自分自身の事も忘れてしまうことへの恐れや苦しみ、悲しみは計り知れない。一方で、認知症患者を支える家族や介護施設の職員も、親しいはずの人と満足に意思を共有できず心も体も疲弊していく。

関西福祉科学大学の都村尚子教授は日本に9人いる認定バリデーションティーチャーの一人だ。都村さんが認知症患者に正面から話しかけると、打てば響くような反応が返ってくる。例えば、いつも怒っていて施設の職員と意思疎通が難しかった人が、自らの生い立ちを語り始める。それは奇跡のようにも見える。都村さんは、認知症患者との意思疎通を図る手法“バリデーション”を取り入れている。

バリデーションの特徴は、認知症の人が起こす行動、たとえば騒ぐことや徘徊するといったようなすべての行動を“意味があるもの”と捉えることにある。なぜ騒ぐのか、なぜ徘徊するのかを患者の歩んできた人生に関連づけたり、共に行動したりして、相手の感情に共感しながら接する。
共感は患者との新たな人間関係を築き、患者が尊厳を保った人生を全うすることにつながる。患者だけでなく、介護する側の家族や施設職員に安らぎが戻り、ともに生きるための大きな力ともなる。

バリデーションは教えることのできる「技術」だ。都村さんは全国を回って様々な人に伝える活動を続けている。学生たちがバリデーションを学び、歳の離れた認知症患者とのコミュニケーションをとろうと努力し、人と接することへの魅力を見出していく場に、私たちは遭遇した。
都村さんが教えた介護施設では、職員や家族たちが少しずつ変化し、患者との関係を築き直していく姿をカメラに収めた。

SNSなど顔を合わせないコミュニケーションが増え続けるなか、真正面から向き合って目を見つめ、時には体にも触れることで相手のこころを感じようとするコミュニケーション法“バリデーション”。言葉だけでは通じ合えない相手とのつながりを探していく介護の現場から、現代社会のコミュニケーションの在り様を考える。

ディレクター:関西テレビ報道センター 真鍋俊永
プロデューサー:関西テレビ報道センター 兼井孝之

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