2006年3月30日(木)
虐待の記憶との闘い -心の傷を癒す『支援』-

虐待の記憶との闘い -心の傷を癒す『支援』-

内容

芸術祭優秀賞受賞作『くらやみにまけないで~虐待の記憶との闘い~』(2005年11月3日)の続編。「虐待の世代間伝達」を防ぐため、「苦悩する親」を誰がどうサポートできるのか。虐待の「連鎖と依存」を克服する当事者の思いに寄り添い、トラウマからの「脱出」を支援するために「虐待先進国アメリカ」における実践例を取材した。

ストーリー

兵庫県下に住む母、京子さん(仮名、33歳)と6歳の男の子。去年夏からの母と子の8ヶ月間を見つめた。一旦、児童相談所から返してもらいながら、アルコール依存に陥り、再び京子さんは子どもを取り上げられた。幼いとき両親と兄から虐待を受け、2度の結婚相手はDV夫で破綻。夜になると酒をあおり、子どもを怒鳴りつける彼女。虐待を受けた過去の心の傷やトラウマを克服できないまま悩む日々。児童相談所は破滅的な母の生活から子どもを救ったが京子さんのトラウマ、後遺症を回復するプログラムは持ち合わせていない。
同じような人生を歩みながら回復したアメリカ、カリフォルニアに住むパティさん(38歳)。幼児期に虐待を受けそしてドラッグ、ギャング、ホームレスを経験。薬物中毒で病院に通う。19歳の未婚で長女を出産。3歳になった長女を、口が切れるまで殴っていた。回復のきっかけは「虐待する親」をサポートする NGOとの出会いだった。多くの支援を受けトラウマを回復し今は、看護士資格も得て、3人の子どもを育て、NGOで親支援のボランティアをするまでになった。
虐待のトラウマからの回復を、自らのホームページで告白するAZUMIさん。『体験を話す事で、今苦しんでいる人に役に立てば』と取材に応じてくれた。兄から性虐待を受け、その兄を自殺で失うという過酷な「トラウマ」。アメリカでカウンセリングをする西尾和美さんの著作に出会い、自分がAC(「アダルトチルドレン」)であることに気付く。精神科医から無理解な発言によって二次被害を受けながら、「EMDR」というトラウマ治療まで辿り着けたのは西尾さんの本と夫と出会いが大きかったという。
「虐待先進国アメリカ」ー特に、10人に1人のこどもが虐待保護を受けるNYハーレム地域では多くの市民NGOが、家庭訪問プログラムを実施している。あるNGOではボランティアワーカーが産前産後5歳まで週1回母親へ訪問を続け、こどもを見守る。トラウマ回復の病院や職業訓練校の紹介。母親の自立までフォローできるのは、優れたプログラムを行うNGOとNY州が契約するシステムが構築されたことによる。補助金と情報も開示され、行政と市民がパートナーシップを持って支援活動を行っている。裁判所が親へのケア命令を出し、回復プログラムにNGOの支援を組み込むアメリカ。児童相談所の職権による「母子分離」という「措置」に終始しがちな日本…。
日本でそうしたシステムを試みている「福岡こども女性クリニック」。精神科医、ワーカーがSOSが出ている家庭を訪問、「密室の親子」をサポートしている。
京子さんはアルコール依存の克服に真剣に向きあい始めた。「生活保護」がおり、アルコール治療、精神科に通う目途をたて、ひき離された子どもと面会を求めた。環境、生活、体調の点でまだ回復が不十分な中、彼女の夢はかなうのだろうか?

ナレーションは前作『くらやみにまけないで~虐待の記憶との闘い~』の工藤夕貴さんが、今回も担当。前作の芸術祭優秀賞受賞によせて『子どもたちはどうなるの?と思いながら、ナレーションをしていましたがエンディングを迎えて、涙がとまらずブースを飛び出したことを思い出します。』とコメントしてくれた。