空気が乾燥するこの時期に、気を付けなければならないこと、それは…『火』。
住宅から吹きあがる炎…。11月13日、長崎県五島市で住宅など2棟が全焼する火災が発生。山形市でも住宅1棟が全焼するなど、住宅地での火災が相次いでいます。
さらに11月11日には東京・世田谷区の住宅で火事があり、この家に住む元プロ野球選手の村田兆治さんが亡くなるという衝撃のニュースも。
この季節の火災について、大阪市消防局は…。
大阪市消防局予防課 伊藤学担当係長:
「冬場は空気が乾燥しますので、火事が起こればすごく拡大することになります。皆さん暖房器具を出されることが多いのですが、慣れていなくて操作方法を誤って火災になることもあります」
火災の危険は私たちの身近なところに潜んでいるそうで…。
大阪市消防局予防課 伊藤学担当係長:
「コロナ禍で、皆さんおうちで自炊される方が増えていますので、天ぷら油の火災や、ガストーチバーナーの誤った使用方法による火災も増えています」
熱し続けた天ぷら油からどのように火が出るのか。実験してもらうと…。
(リポート)
「温度が300度を超えたところで、かなり煙が立ってきました」
温度が上がるにつれて激しくなる煙。ついに…。
(リポート)
「390度を超えたところで火がつきました」
大きく燃え上がる炎。しかし、ここで慌てて水をかけてしまうと…鍋の中で水が一気に蒸発し、油をはじき飛ばして爆発を起こすのです。こうした時には落ちついた行動が必要だといいます。
天ぷら油から火が出た時は、水分をきった濡れタオルや鍋のフタで炎を覆い、コンロのスイッチを切るのが正しい消火方法だということです。
思わぬ油断が大きな火災につながりやすいこの季節。もし自分の家が火事になり、周りの家に燃え移ったら重い責任を問われることも…。知っておくべき火事にまつわる法律について、菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「まず、ひどい“うっかり”は大きな責任になるということです。どういうことかというと、うっかりというのは落ち度、つまり過失で、『刑事罰』として失火罪の責任を問われる可能性があります。
もう1つは民事の『賠償』というお金がかかる責任です。例えば自分の家から火が出て近隣に燃え広がってしまいましたという場合には、それを弁償しなければならないと思いますが、実は日本は木造家屋が多くてあっという間に延焼してしまうということで、失火責任法という法律によって、本当は延焼部分について賠償しなければいけないんですが、過失なら『損害賠償の責任はなし』となっています。
ただ、この落ち度が大変なうっかり、重大な過失ならば賠償責任はありますよとなっています。普通の過失か、重大な過失かが問題となります」
――重大な過失の例としては、天ぷら鍋から目を離す、寝たばこ、火をつけたままストーブに給油などがあるそうですが、その判断基準についてはいかがでしょう?
菊地弁護士:
「その3つの例は、裁判例の中でもちょくちょく出てくる重大な過失なんですが、基本はあくまでケースバイケース、少しの注意で火事が防げたかどうかという基準で、事案ごとに判断するということになっています。重過失となると延焼部分に責任が発生しますので、その部分にも補償がきくような火災保険の特約をつけておくとか、そんな事もご検討いただければと思います」
――火災自体を予防するため、法律ではどのようなことが定められているのでしょうか?
菊地弁護士:
「火災を防ぐため、2006年から全ての住宅で『火災警報器』の設置・維持が義務となっています。どこにつけるかについては各自治体の条例などで定められていますが、実は課題もあります。
義務と言っても『つけないと罰則がある』というわけではないんですね。またつけた・つけないの報告義務があるわけでもないので、まだまだ周知徹底がなされていないのが現状です。しかしいったん火災となると、人命あるいは財産、多くの物が失われる可能性がありますので、是非皆さんも火災警報器の設置や点検をしてください」
火災警報器は効果があり、住宅火災の100件あたりの死亡者数の比較では、設置されていない所では11人なのに対し、設置されていた所では5.3人とほぼ半減となっています(出典:消防庁より)。
築20年くらい経っているようなマンションや戸建ての場合、つけていないケースもあるかもしれません。また、つけている方も年2回を目安に点検、10年を目安に交換をしてくださいと消防局などは呼びかけています。皆さんも1度チェックしてみてください。
(関西テレビ11月16日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)