14日発表された、今年度から65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は、全国平均では、プラス3.5%値上がりし、中でも大阪市は全国で最も高い、9249円となりました。 大きな地域差もうまれている介護保険料。なぜ、こんなにも差があるのか?取材しました。
■介護保険料の基準額 大阪市が一人9249円 街の人は「世話になってない、高い」の声
14日、厚生労働省が発表した介護保険料の1人・ひと月当たりの基準額。 65歳以上の高齢者が払う保険料の全国平均は6225円で、年々右肩上がりです。
さらに大きな地域差も生まれています。 全国で最も高くなったのは大阪市の9249円で、最も安い東京都の小笠原村の3倍近い額となりました。
大阪市内で65歳以上の人に聞いてみると…
(Q.高くなったと感じるものは?)
【70代】「やっぱり介護保険料。年金生活者を圧迫しますよね」
【80代】「使ってるなら仕方がないかなあと思うけど、私らは(介護サービスの)お世話になってないから、高いかなと思う」
(Q.払う価値は?)
【70代】「ないない。僕らは一切関わっていない。使う時には、もうくたばるやろ」
介護保険制度は、国や都道府県などの公費と、40歳以上の国民が払う介護保険料で成り立っています。 その保険料の額は40歳から64歳までは収入に応じて決まり、65歳以上は国が3年ごとに、地域ごとの基準額を見直しています。
【80代】「なんで大阪が高いんかなって。わけが聞きたい」
介護サービスを受けていない高齢者から聞かれる「なぜこんなに高いのか?」の声。
大阪市の横山市長は、
【大阪市 横山英幸市長】「確か大阪市の単身の高齢者層の割合が40数%で、非常に高い数値になっています。これが1点目。合わせてもう1つが低所得の世帯が多いというところです」
専門家は、大阪市のように介護保険料が高い地域の特徴についてこう分析しています。
【淑徳大学 結城康博教授】「大阪の特徴は低所得者の方が、全国平均に比べると多い。介護保険はみんなの助け合いで成り立っていますから、高所得者に保険料を負担していただくので、おのずと基準額もやっぱり上がってしまう」
■全国で2番目に介護保険料が高いのは大阪府守口市 「人口のわりに施設が多い」
全国で2番目に高い介護保険料となった、大阪府守口市。 デイサービスなどを運営する介護施設で話を聞くと…
【利用者】「楽しいから来てます!(介護保険料は)私は娘に任せているから分からない」
高い保険料の要因の1つが利用者の増加で、守口市では年々、介護施設の数が増えているといいます。
【施設の担当者】「人口のわりに守口市は施設が多いと思います。(介護保険料が)上がることによって、守口市でもともと暮らしていた方が、安心して介護のサービスを受けられるということが、もしかしたらメリットかも」
専門家は保険料が割高かどうかは、サービスの質にもよると言います。
【淑徳大学 結城康博教授】「保険料が高くてもサービスが使いやすい、という選択をする場合もある。保険料は安くてサービスが多少使いにくくても、保険料が安ければいいっていう選択肢もあるわけですから、一概に保険料が高い安いで一喜一憂する必要はないと思う。ただし高齢者は年金がそんなに増えてるわけじゃありませんので、格差がどこまで許されるのかっていうのは、本格的に議論していかないといけない」
■「介護予防」は効果がある? 専門家は「問題の根本的な解決は難しい」
一方でいま、全国的に広がりを見せているのが、介護が必要な人の数をできる限り抑制するための「介護予防」です。
大阪府の寝屋川市では「元気アップ介護予防ポイント」という事業を行っています。 65歳以上の高齢者が、市内の保育所や障害者施設などでサポート活動を行うと、1日で1ポイントが与えられ、年度末に1ポイント200円の交付金がもらえるというのです。
【寝屋川市社会福祉協議会 杉谷嘉紀係長】「多くの方が数回の活動というより、継続して活動いただいているので、それに伴って体も心も元気な状態が継続できる事業と思っています」
介護予防が功を奏して、保険料が下がった事例も。 和歌山県・橋本市では、体操教室の開催など、介護予防の取り組みに力を入れ、その結果、介護サービスを受ける第1号被保険者の認定率が減少しました。 基金を取り崩したことに加え、介護を受ける人が減少し、「保険給付費」を抑制できたことで、今回、保険料を1000円引き下げることができました。
【橋本市介護保険課 小林義弘課長】「結局、基金を取り崩したところで、(保険)給付費が上がっていれば相殺されるので、給付費も上がっていない、横ばい、減少の傾向の中で基金を取り崩した。そこが大きく(保険料が)下落した要因になっている」
成果が出ている自治体もある一方で、専門家は「『介護予防』頼りでは、問題の根本的な解決は難しいだろう」と話します。
【淑徳大学 結城康博教授】「介護予防を一生懸命やっても、やはり85歳とか90歳になった方は、やっぱり介護が必要になってしまうので、引き続き介護保険料は上がるということは間違いないと思います」
2040年度には、65歳以上の保険料が平均で月9000円程度になるとの試算もある介護保険制度。 制度は維持できるのか、土俵際に立たされています。
■介護保険制度の存続は財源に課題あり
長年にわたり母親の介護をしている「newsランナー」の番組コメンテーターの安藤優子さんは、介護保険制度のあり方について次のように話します。
【安藤優子さん】「日本の介護制度はちゃんと整備されている方だと本当に思います。使い方によっては、とても効率的な使い方もできますし、いろんな選択肢もあるし、ケアマネージャーがいて、色んな相談にのってもらえるという、その制度自体の整備は、色んなことを踏まえて、少しずつ整備されてきていると、私自身が実感をしています。
ただ介護費、介護の保険料については、どんどん高齢化していく一方なので、負担増になっていくのはやむを得ないと専門家の方もおっしゃった。その中で『何ができるか』と言えば、私は予防に力を注いでいくっていうことは、これはイタチゴッコになってしまうかもしれませんけれども、でも絶対やらなくてはならないのは介護予防だと私は思います」
「介護予防」とは、介護を受ける方を減らしていこうという取り組みですね。
【安藤優子さん】「少なくとも、その時間を少しでも遅らせることに役に立つ、それから自分も生きがいとして、そこに何か参加することによって、人生の見えてくる景色が変わってくるとか、いろんなプラスの面はあると私は思います」
■国では「利用者負担」についての議論も
今後、この介護保険制度はどうなっていくのでしょうか。 介護保険料だけでなく、さらなる負担増の可能性も出てきています。 現在、厚労省では介護サービスの利用料1割を負担の人の一部を、2割負担にできないかという議論をしています。しかし、反対意見が根強く、これまで3度、この結論が先送りになっている状況です。 財政状況が厳しい介護保険制度を維持していくためには、財源どう確保すればいいのでしょうか。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「財源の負担をどこから増やすかということですが、介護利用者から増やすこともあれば、(現役世代の)介護保険料を上げる、それから公費ですね。税金で負担する分を増やそうという話もあるのですが、やっぱりどの案も、反発の声が強くて、議論がなかなか進んでいないのが現状です。子育て予算も社会保障費の中から取らなければいけないという、分捕り合戦もある中で、議論っていうのが」
【安藤優子さん】「公費は結局、利用者負担よりも順位的には、最後の方にきているじゃないですか。今まで頑張ってこられた方たちの、これからの人生を、最後にきちんとした老後を送っていただくためにも、公費については、ちょっと私、財布のひもを緩めてもいいかなと思っています、実は」
現役世代がこれから減って、高齢者の方々が増えていくという状況の中で、制度を維持する為の議論が急がれます。
(関西テレビ「newsランナー」2024年5月15日放送)